第3話 プロフィール

 まずは私が世話をすることになるアニマルガール達を確認して置こう。


 まずはピューマ。

 この子は元々私が世話していたピューマからアニマルガールになった。

 基本的に大人しいがご飯の時や私が背を向けた時は目の色が変わる。

 どうやら、私に無性に飛び付きたくなるらしい。

 怪我はしてないが極力やめてほしい。


 ダチョウ

 アニマルガールになる様子が映像に残っていた子だ。

 大人しいと言うよりはマイペース。

 道端の石を拾い食いした時はかなり驚いたが、草食性の鳥類の中では石を飲み込んで食べ物を磨り潰すのに利用する種類が多いらしい。

 今は歯があるのだから歯を使いなさい。


 グリズリー

 少々違った意味で問題児。

 どうやら動物だった時に怪我をして人に助けられて以来、人に対して恩義を感じているらしい。

 ボディーガードをしてくれるのはありがたいけど、この平和なジャパリパークで何の危険から守ろうとしてるの?


 インパラ

 落ち着きがない。

 目を離すとすぐ消えるし、文字通りの意味で道端の草を食う。

 ダチョウもそうだけど、人が驚くような行為はやめてほしい。


 カワラバト

 飼育リストに載っていない密入園ガール。

 図体が人並みになって人に対する警戒心を失ったのか不審者としてあっさり捕まった。

 ぼーっとしていることが多い。


「と、言うわけで健康診断をやりまーす」


 何の脈絡もない私の発言にアニマルガール達はポカーンとした表情を浮かべる。


「しいくいんさん、けんこーしんだんって何?」


 全員健康診断が何なのか分かってないのか、ピューマが代表して私に聞いてくる。


「病気に掛かってないか調べることだよ。みんなここに来る時もしたんだけど覚えてない?体重計に乗ったり予防接種したり」


 私の話を聞いたアニマルガール達は集まって何やら話し合いを始めた。


「……グリズリー、覚えてる?」

「いや、全く。ダチョウは?」

「私も覚えていませんね。インパラさんは?」

「そんなのあったっけ?カワラバトはどう?」

「ほぇ?」


 おっかしーなー

 みんな動物の頃の記憶はある筈なのに、健康診断に関する事がすっぱりと抜け落ちている。

 何でぇ?


 そんな事を思っていると付き添いのカコ博士が遠慮がちに健康診断に関する記憶が無い事についてとある仮説を私に小声で言う。


(ま、麻酔のせいだと思います)


 なるほど、健康診断中は爆睡してるのと変わらないから覚えていないのか。


 アニマルガール達の中には捕食者非捕食者入り雑じってるけど、1日で結構仲良くなった。


 まぁ、同じ部屋に一晩詰め込めば仲良くなるか。

 ついでに私も詰め込まれたけど……


「とりあえず、健康診断をやるから私に付いてきてね。インパラはこっち」

「何であたしだけ掴まれてるの?」

「目を離すと居なくなるからだよ!」


 とにもかくにもアニマルガール達の初健康診断が始まった。

 いやー言葉が通じるのは色々楽だね。


 今回の健康診断は彼女達の健康を見るものではなく、サンドスターが動物に与えた変化を見るのが主な目的になっているらしい。


 で、待ってる間に私とカコさんの二人きりの時間が長くなるわけだ。

 何を話せば良いんだろう?


 ちらりとカコさんの方を見る。


 この若さで研究所の副所長になるとは……

 もしかしたら、カコさんは見た目通りの年齢じゃないかもしれない。

 副所長と言うからには低く見積もって30代かな?

 一体何をすれば20代前半の若さを保ったままでいられるのだろうか?


 と、そんな事を考えているとカコさんの方から話し掛けて来た。


「い、イツキさんは18歳、ですよね」

「あ、はい18歳です」

「私も18歳です。同い年」


 ファッ!?


「ウッソ!30代だと思ってた」

「!?」


 私の言葉が巨大な槍となって突き刺さり、あまりの衝撃にカコさんの手からタブレットが滑り落ちて床に落下する。


「そそそそんなにふけ、老けて……み、見えますか?」


 あかん!

 声が滅茶苦茶震えて目の端に涙を溜めて今にも崩れ落ちそうだ!


「ゴゴゴメン!老けてるって意味じゃないの、です!副所長だからてっきり見た目通りの年齢じゃなくて、年上だと思ったの!深読みし過ぎました!こんな若い子が年上な訳ないよね!」


 タメだけど私よりは年上に見えるとは口が裂けても今は言えない。


「カコさんはどうしてジャパリパークに?」

「だ、大学でジャパリパーク計画に誘われて来ました。こ、ここは良いところです。動物、たくさんいるから」

「へー大学ですかー……ん?あれ?」


 今が18だとすると、大学一年目。

 そうなると大学に通ってから半年すら経っていないのにスカウトが来たことになる。


「あ、アメリカの大学に通ってました」


 飛び級でしたか。


「しーくいんさん!」

「ぐほっ!」


 そして、私は飛び付かれる。


「ピューマ、昨日から背中に飛び付くのはやめぃと言ってるでしょうが!」

「やだ」


 クッソ満面の笑みで拒絶しやがりましたよこのデカイネコは!

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