第2話 仮称アニマルガール
「……あなた、本当にピューマなの?」
「そうよ」
自称ピューマの美少女の面倒を見ることになった私は休憩室の一角で自称ピューマの美少女と待機する。
さっきから気になっていたんだけど、頭のネコ耳が若干動いている。
脳波に反応してピコピコ動く玩具は見たことあるけど、それと比べて動きがすごく自然。
「それ、触っても良い?」
「ちょっとだけなら」
許可が降りたのでネコ耳に触れると血の通った温もりを感じるんですけどぉ!!
え?本物?
でも、この耳以外に人の耳がががががががが
混乱の極みに達しようとしていると、若干げっそりとした先輩が現れた。
どうやら騒動が一段落したらしい。
「イツキくん、その子を連れて動物研究所の方へ行ってくれるかな?」
「動物研究所って……名前は動物だけを研究してるっぽいけど、関係者以外立入禁止のあの怪しい動物研究所の事ですか!?」
「そもそも、僕らも関係者なんだけど」
「えー、この前行ったら追い返されましたよ」
「この前って、まさか初日の事じゃないだろうね」
「あ、そうです」
「色々手続きが済んでなかっただろうに……って、こんなしてる場合じゃないか。ところで、ピューマくん……で良いのかな?」
先輩が私との話を切り上げて自称ピューマの美少女と向き合う。
おう、先輩!
その子の話を信じるんですかい?
「僕の事、どう思ってるかな?」
「……あまり、良く覚えていないわね」
先輩がガックシの肩を落としたところで私達はバスに乗せられて動物研究所の方へ連れていかれた。
ジャパリパークの中枢にあるトップシークレット!
日々あの中でどんな研究が行われているか妄想するだけだったけど、遂にその神秘のベールを引き剥がす時が来たのだ!
「飼育員のイツキさんですね。第三会議室でお待ち下さい」
「あ、はい。分かりました」
第三会議室の中へ放り込まれた私の目に入ったのは、動物のコスプレをした美少女達だった。
正気を失った企画部の暴走でも始まったのかな?
美少女達の視線が新たな来訪者である私と自称ピューマに降り注ぐ。
「……一つ、言っておこうかな?」
「何を?」
「大人しく席に着けぃ!!」
テーブルの上に乗ったり、床に寝転がったりと行儀が悪すぎる!
動物園かここは!動物園だった!
とにもかくにもお行儀が悪いので、自称ピューマの力を借りながら美少女達を何とか大人しく座らせることに成功した。
あー疲れたー
そして、タイミングを見計らったかのように全員が大人しく席に着いたところで若い研究員の女性が大きなキャスター付きのモニターを押しながら入ってきた。
タイミングを見計らったかのようにじゃなくて、たぶんタイミングを見てたと思う。
テキパキと機材を設置した女性は私だけを見て説明を開始する。
うーん、この女性知り合いではないけど、何処かで見掛けてるような気がする。
……思い出した!
良く飼育施設を見学してる人だ。
それにしても中々のクールビューティ、きっと出来る女性なんだろうなぁ。
「色々と聞きたいことがあると思いますが、口で説明するよりもこちらの映像を見た方が分かりやすいと思いますので、こちらをご覧ください」
映像に映し出されたのは寝てるダチョウ。
それだけなら何の変哲もない睡眠動画なのだが、何処からともなく飛来してきた虹色の物体がダチョウに直撃してみるみるダチョウの姿が変わっていく。
ダチョウの姿が美少女になり、美少女は何かあったのかと周囲を見渡した後、ダチョウの時と同じ体制でそのまま睡眠続行した。
「……」
右を見る。
映像に映っていた美少女がモニターを見ている。
良くできたCGですね。
すごいなー尊敬しちゃうなー
「え゛?」
あ、変な声出た。
「映像から判断する限り、結晶化したサンドスターによって引き起こされた現象であることは明白ですが、詳しい原因は分かっておりません。これからヒト化した動物、仮称アニマルガール達の調査を行います。そこであなたには彼女達の飼育員になってもらいます」
「私が?」
「はい」
「……」
「……」
「フェアアアアアアアアア!?」
「ヒッ!」
この人マジで言ってるの?
「新人のぺーぺーも良いところの私に動物だか人だか分からない存在任せちゃって良いんですか!?」
「て、適任だと思います。そ、それに研究所の方でもで、出来る限りのバックアップをし、しますので」
「さっきまでのクールビューティは何処に!?」
「な、何のことですか?」
迫れば迫る程にどもって説明していたときのクールビューティが剥がれ落ちる。
もしかしたら、人見知りなのかもしれない。
短い説明だったけど、要は何も分からないからこれから調べるって話だったよね。
どうも私に任せようと思った理由はこのアニマルガール(仮)達をちゃんと席に着かせていたのをドアの隙間から見ていたかららしい。
それにアニマルガールの姿も姿なので、男性に任せる訳にもいかないと言うのも大きいっぽい。
……私が居ても居なくても動物の飼育に支障がないからじゃないと思いたい。
ともかく、年も近いし全力で支援してくれるらしいので、お互い若手で苦労してるであろうこの女性研究員と仲良くしておこう。
「これからよろしくお願いします。私は動物飼育員のイツキです。あなたは?」
「カコです。け、研究所の副所長をやらせてもらっています。一応」
い、意外と大物だった。
私は振り替えってアニマルガール達を見る。
「私はこれからあなた達の飼育員になるイツキ。よろしく!」
こうして私とアニマルガール達の日常がスタートしたのだった。
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