第三話 月下の魔道 ③
後ろ手で扉を閉めた途端に、彼は天井を向いて口を開く。
「調べはついたか」
「技術者」
抑揚のない、性別不明の声が答える。
「利するところは」
「不明」
「……ああ、そう答えるだろうと思った」
将は納得した様子である。話が終わったことを察してか、天井裏の気配は消えた。将は椅子に深々と腰を預け、しばしの
(彼もまた、力を振るいたいのだろう。自身の出自が定める立場のためではなく、ましてや財貨や名誉のためでもなく、ただ己を腐らせぬために……)
ここにいるのは、月軍本隊から分断された千程の軍勢である。
彼らが今こうしてこの
戦術が
(あれは、まるで
そして、その恐慌の中で道を照らし出したのは他でもない、赤髪の少年だった。
彼は、異国の技師である。歴戦の将である
たった一門、たった一撃で、戦局を大きく左右しかねないもの。これは紛れもなく、劣勢にある月の国にとって喉から手が出るほど欲しいものである。しかしながら、兵器開発は国防の要であり、身元の明らかでない者を携わらせるべきではない領分の事柄だ。
第一、この苦境を打破できる存在が都合よく現れることなど、大変疑わしい。かと言ってこの好機をみすみす見逃す程の余裕は、この国にはない。
「
将は誰も見ぬ部屋で赤き
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