第三話 月下の魔道 ②
黒い煙が辺り一面を覆う。物々しき戦の匂いに支配されたこの地は、月の国北岸、黒海に臨む
唸りを上げて海風が、
その時を
「三射目、
幼さの残る掛け声に、
「装填、良し!」
その報告の後、今度は発射を命じる掛け声が上がる。男の一人が火縄に火を付けた。それを合図に、その場の全員が近くの
「三発しか保ちませんでしたか……」
赤髪の少年が報告を聴き、
その熱心な様に心打たれ、肩を優しく叩く者がいた。
「しかし、あれは並の投石機や
華美なる兵装の男――
「喜ぶには早すぎます。しかし、
「最初出会ったときは、ただの迷子だと思っていたが……まさかこれ程の切れ者であったとはな。して、現時点での問題は」
質問を受けると、それまで図面に釘付けとなっていた少年の目が嬉しそうに輝く。紙から視線を外し、将を見つめる。そして赤髪の小さな技師は、こう
「耐久性、射程距離、命中精度、連射速度、移設の困難さなど。改善点はまだ沢山あります。しかしそれらが解消されれば、
「よもや、神の国の、
「そのまさかです。
「おお、
将は自身の口の端が吊り上がるのを感じた。
「そのおかげで、こうして腰を
「これはこれは。我も、弱気でいてはならぬな。期待しているぞ、西の技師殿」
そう言ってもう一度、少年の肩を叩く。熱意を込めて、すこし強めに。
将の目には、初めて会った頃の頼り無げな彼と、自信と才気に溢れる彼が重なり映っている。しかし、その二つの影は一つに
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