第二話 不可視の翼 ⑥
「ふうん。あの暴れん坊たちを解き放った訳ね。思い切ったことをするわ」
占い師の女は感心した声を出した。
「別に
「その心は?」
ずいと身を乗り出して質問する。顔近いって、と、肩を押し止めながら大宰相はこう答えた。
「東部の
日々寄せられる報告は少しずつであるが、反攻の
(理想を言えば、
その指揮を執れるのは、荒くれどもからの信頼をも勝ち得た者のみ。その観点から言えば、
時を同じくして、月の国東部国境付近にて。
「敵は必ず
この地は単なる交易の中継地であり、守りに適した都市とは言えない。しかし多方からの商路が合流する場所である、という特質を利用することで、敵軍の各個撃破を容易に行えるであろうと踏んだ訳である。
「何としてでも亡霊にはお帰り願わなくては、民が安心して眠れぬのだ」
果たして将の予想通り、そこはすぐさま軍馬が押し寄せ、
「弓兵、放て!」
号令に従い、矢の雨が
「歩兵、前へ!」
軽装の歩兵が前線に躍り出る。その後ろに重装の古参兵を配置し、縦に厚い戦列にて敵の突撃を受け止める作戦である。騎兵は
正面の軍勢は多くて五千程と見える。
対するこちらの兵力は倍の一万。しかも血に飢えた荒くれの連中である。更に言えば
そしてついに両軍は衝突する。
(何かおかしい……)
歴戦の
丁度その時であった。
「急報!
「何、それは誠か」
「はい、既にこちらへも追撃が――」
その言葉を遮るように、伝令の喉が射抜かれる。遥か後方には、その矢を射た者が姿を見せていた。
「再び我が物にしよう。覚悟せよ、月の
右脚を引き
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