第一話 刃と琴弾き ⑦
夜だというのに妙に明るく、しかし人影はいなかった。燃える痛みに背中を押されるように、彼は森へ足を運んだ。
「見せかけの森」と、人々は呼ぶ。
もともと砂漠だった土地一帯に、木を植えた人がいたのだ。良かれと思って植えた善意が、見る見るうちに大きく育ち、やがて天に届こうかと言う頃、もはやその足元には光は届かなくなっていた。暗く静かな、死んだ世界である。そうした場所にはまず、心を
それでも彼らは、最後の最後まで生に
それにしても、今日は一段と果実が多い。普段ならば探すのに暫しの時間を要するのに、常に視界に彼らがいるのだ。彼はふと悪い予感がした。何かとても良くないことが、この平穏な生活を
光のもとに近づいていくと、そこには五人の男たちがいた。まるでこの世に自分たちしかいないとでも思っているかのように、浅ましくも大声で笑っている。そのほとんど怒声に近い笑い声に交じって、若い女の悲痛な叫びが辺りに響いていた。
わざわざ、殺しているのだ。放っておいても
少し早い両脚の調子に、男たちが気づくためには、一人の命が犠牲にならなければならなかった。
「口を閉じろ」
彼は残った四人に命じる。声の主に男どもは振り向く。そこに
「死に損ないが、俺たちに
めいめいが
「盾は無く、
短剣に刺さったままだった死体を蹴り飛ばし、男どもの驚いた隙をつき一人に
しばらくして、森は再び静かになった。
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