第二話 不可視の翼 ①
燃え盛る炎が一つ、二人分の足音を勇気づける。
それがなくてはきっと、もう
「入口に置いてくればよかったのではないか」
「これを手放すわけには参りませんので……」
足取りの
眼前には何も見えてこない。どれ程時間が経ったのかも分からない。時に狭く、時に険しく。
暗きを好む
突然、足音が一つ消えた。不審に思った彼が再び後ろを見やると、足を止めた女がなにやら神妙な表情をしている。
「祈りの声が、聞こえます」
何も見えない先を見据えて、女は呟くように言った。
「祈り、だと。見せたいものとは、神への信心だったのか」
「そうではありません。しかし……」
続く言葉は見当たらないようだった。その暗闇に彼も耳を
「しかし、目的の場所はもうすぐそこのようです」
女は全てを悟ったように、
見せたいものがある。
琴弾きは多くは語らなかったが、それが彼に必要なものだと断言した。
今すぐに戦を止めなくてもよいのかと、彼は女に問うた。この国はいま、戦の炎に飲まれつつある。それは琴弾きが彼に伝えたことだった。その悪しき熱は、
「光さす、青き刃の長かりせば……」
「……刃切れが悪い、と言いたい訳か」
彼は肩を落として自嘲した。腰に
今のままでは何も護れない。民の命は
勿論そうは言っても、その誘いの手を引くことに迷いが無かった訳ではない。しかし幸いにして、彼には何も無かったのだ。他には何も。空を
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