透明な小説 -9

 実はこの透明な小説という本に振られた数字番号やアルファベットには全然意味がなくて、純虚数体や複素数体といった概念も当分のところ極めて無関係といっても過言ではない。コンピューターが読むことができる小説は限られていて、読んだとしてもそれと同じような内容の批評を、つまりは現象学的批評を展開するだけにとどまるのだが、相互の連関を辿って一つの論理を構成するには至らない点が無数にある。シンギュラリティ概念の再構成にも関わるのだが、宇宙的存在と宇宙人的存在、あるいは村とその頽廃の区別をつけることは、生の感覚のないコンピューターにはまだもって難題なのである。しかしながら、生の感覚そのものを再現することは可能だ。その実感を再現し再構成することによぅて、初めて作品は純然たる作品へと昇華するのである。

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