第12話 色々なことはあっさりと進んでいく。
「けっこう、あっさりと受け止めるんだな」
「まあ、あたしは過去と未来を行き来してるから。何があっても、おかしくないし」
「わたしの正体は打ち明けました。それで、今の話はわかってくれましたか?」
浅井の質問に、綾乃は口を開く。
「わかるも何も、とりあえずは、あたしが何十回もやってる同じ時を繰り返す行動はやめてほしいって言いたいんでしょ?」
「はい」
「嫌だって言ったら?」
「それでしたら、力づくでもやめてもらいます」
浅井は淡々とした調子で答えた。
「力づくね……」
「何と言うかさ、俺からはどう言えばいいのか、難しいんだよな……」
「それって、充がやめるように言うと、あたかも、付き合うことは諦めろって思われるのが後ろめたく思うってこと?」
「いや、まあ、それはそうだけどさ……」
「はいはい。とりあえず、充があたしと気まずくなりたくないことだけはわかったから。でも、この問題はあたしだけの問題じゃないんでしょ?」
「はい。宇宙全体の問題です」
「こう宇宙人に言われると、何だか責任重大よね」
綾乃の声には、どこか仕方ないといったような感情が含まれているようだった。
「そういえば、名前を聞いてなかったけど?」
「この惑星では、浅井麗奈という名前にしています」
「『この惑星では』ね……」
綾乃は言ってから、しばらく黙り込むと、自分へ言い聞かせるかのようにうなずいた。
「わかった」
「今の返事は、もう、同じ時を繰り返さないという意味ですか?」
「うん。ということだから、充」
「お、おう」
「とりあえず、お互いに失恋した仲間ってことよね?」
「告白を正式に受けてないけどな」
「じゃあ、今ここで」
「は?」
「というわけで、あたしと付き合って、充」
綾乃は正面を合わせる形で、俺の方へ頭を下げる。
で、相手の俺は、どう返事しようか迷うわけでもなく。
「悪い」
「やっぱ、ダメか……」
顔を上げた綾乃は、残念そうな表情をしていた。
「というより、期待していたんですね」
「ちょっとはね。もしかしたら、充が考え直してくれるかもって」
「あのな……。俺は俺で、佐々倉さんにフラれて、けっこうショックを受けてるんだからさ……」
俺は言いつつ、自然とため息をついた。
ひとまず、宇宙消滅の危機は避けられたということだろうか。
俺と綾乃の失恋を引き換えに。
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