第11話 死んだ方がマシというのは極端だ。
「もう、何十回も同じことをしてるのに、うまくいかないんだよね。って、充の前で言うのもおかしいけど」
「まあ、俺の前でそう言われるとさ……」
「で、フラれたんだ。委員長さんに」
「まあな」
俺の答えに、綾乃はにやけた顔つきになる。
「だとしたら、あたしの気持ちがよーくわかったでしょ?」
「あのな……。だいたい、俺はまだ、綾乃の告白を正式に受けてないからな」
「でも、告白したら、フるんでしょ? あたしのこと」
綾乃の質問に、俺はただ、黙り込むしかなかった。
「まあ、それはさておいて」
綾乃は浅井の方へ視線を変える。
「あんたは本当に誰?」
「彼のクラスメイトです」
「そんな当たり前の質問をしてるわけじゃなくて」
「何を知りたいのですか?」
「あんたの正体」
綾乃の顔つきは真剣そうだった。
「これは言わないと、今後のことに支障がありそうです」
「今後のこと?」
「簡単に言いますと、このままでは、この惑星どころか、宇宙が消滅してしまいます」
「えーと、この惑星って、地球のこと?」
「そうです」
こくりとうなずく浅井。
どう反応すればいいかわからないのか、とりあえず、俺の方へ顔をやる綾乃。
「充」
「何だ?」
「今のって、本当?」
「冗談だったら、俺らは何で、綾乃が何十回も同じ時を繰り返してることを知ってるんだ?」
「まさか、本当の本当?」
「ああ、どうやら、本当らしい」
俺は髪を掻きつつ、面倒な感じで口にする。
一方で綾乃は、おもむろに上空を見上げた。既に日は沈みかけるところで、後数十分もすれば、薄暗くなりそうな雰囲気だ。
「そっか……。地球、滅びちゃうんだ」
「それを防ぐためには、これ以上、あなたに、過去と未来を行き来しないようにしてもらわないといけません」
「それって、もしかして、あたしの行動がそういう危機を招いてるってわけ?」
「残念ながらです」
「急に大きい話になったね」
「まあ、俺もはじめ聞いて、驚いたけどさ」
「で、あたしの行動を止めようと思って、過去に戻ってきたっていうわけね」
「そんなところだ」
俺の声に、綾乃は両腕を組む。
「充はわかってるんだよね? あたしが過去と未来を行き来して、同じ時を何十回も繰り返してる理由」
「当たり前だろ。っていうか、それをわかっていた上で色々と話してたつもりだが」
「それなら、何で、充はあたしの告白を断るわけ?」
「上辺だけ受けて、綾乃は満足するか?」
俺の問いかけに、綾乃は首を横に振る。
「それだったら、死んだ方がマシ」
「随分と極端だな」
「というより、死なないと、あたしは同じ時を繰り返すことができないから。それも知ってるんでしょ?」
「はい」
「えっ? そうだったのか?」
「言いませんでしたか?」
「いや、はっきりとは聞いていない。同じ時を何十回も繰り返すっていうことと、死ぬことは必ず関係あると思っていなかったからな」
「だったら、あたしはどうやって、過去に戻ったと思っていたわけ?」
「それは何だ、何かの衝撃でとかさ。それが前は自殺したタイミングで、それ以外は頭を打ったりとか、そういうものかと思っていた」
俺が口にすると、「まあ、そう考えることもあるかもね」と綾乃は言う。
「ひとまず、話はわかりましたか?」
「話っていうのは、宇宙消滅の危機のこと?」
「そうです」
答える浅井に対して、綾乃はじっと目を向ける。
「その前に、あんたの正体を教えてほしいんだけど」
「宇宙人です」
「なるほどね」
綾乃は驚かずに、納得したかのような表情を浮かべた。
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