フォースポリス

「食料とお水はこれだけ、多分、生活出来て半年は大丈夫だと思いますが、救助や救援がいつ来るか……」

六郎は、社屋にある備蓄倉庫や防災倉庫からありったけの非常食や水を持ってきた。

史子や和枝たちも防災バッグや社員食堂からかき集めてきた。

「お薬は救急箱だけだわ」

恵理が救護室や事務室にある救急箱を持ってきた。

「念の為、道具や万が一に戦うための武器になりそうなものを持って来ました」

「武器?六郎くん、それは」

六郎が出した武器と言うのは、仕事で使う。

鎌、スコップ、鍬、ハサミ、オイルや棒、鎖などである。後は、長い竹の先を削って作った…

「竹槍、これが限度です…」

まるで、江戸時代の百姓一揆や打ちこわし、うわなり打ちみたいな装備しかないので、はっきり言って心細い。

「警察や自衛隊みたいに鉄砲や爆弾でもあればいいけど、私たちみたいな民間企業で戦闘するや護身術なんて想定外だもん…」

誰も武器なんて扱ったことがない。日本には銃刀法や決闘罪など争いを取り締る法律がたくさんあるので、何かと戦うなんて…まずないことだ。

「私、大学時代にフェンシングしていたけど、八年もブランクがあるわ」

恵理が長い棒を見て言う。

文子はテニスとマラソン、和枝は水泳と水球、美和は合気道を中学と高校としていたが、もう十年前の事だ。

何より、この会社が…いや、五人は今どんな場所なやいるのかがまったくわからない。まず、人間がいるのか、いても、妖精やエルフ、ドワーフみたいな漫画やゲームに出てくるファンタジーな世界の住人かもしれない。

それとも、怪獣だの巨人族、ロボットやら超高性能AIみたいな物語に登場するような敵役みたいなのがうじゃうじゃいる世界かもしれない。

「とりあえず、助けが来たり、どこかと連絡が取れるまでは医務室や救護室、休憩室、会議室を当面の仮居住区にしましょう」

和枝の提案で、みんなで必要最小限の荷物や貴重品を集めた。単独で動かないように、五人は居住区を決めて、新たに進捗があるまでそこで当面生活することにした。

幸いなことに、会社にあるソーラー発電機や真水の浄水器は機能していたので、洗面台やトイレは動いていた。空調システムも使えて、社員食堂の冷蔵庫や冷凍庫もなんとか機能していたので、食料や飲み物は大丈夫だった。

しかし、インターネットや電波、ラジオ、衛星放送と何一つ受診出来なかった。

まるで、この会社だけ現代の日本ではなく、別世界に来てしまったかのように…

「お姉様方が、ここに来た時間は午前八時四十五分ちょうど、入口に入ろうとした時に遊歩道の近くで悲鳴みたいな風の音を聞いて、気が付いたらここだったと」

「六郎くんは、ここの東門の守衛室横のトイレに入っていた時は、何かおかしなことはなかったの?」

「一瞬ですが、何か身体が震えました。寒気とは違う何かピクッとくる感覚が…時間は、八時四十分でした」

「五分しか違わないのに…その間に、私たち以外の全員消えてしまうなんて…」

メインシステムやメインサーバーも完全に使えないことはなかったが、やはり、人間は自分たちだけしか生態反応がなかった。

この世界は何なのか?なぜ、自分たちはこの世界に誘われたのか?




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