さすらい猫は、天使を看取った
さすらい猫の、物語。
今日で終わると思ったが、
さすらい猫は、この街で、
素敵な人に出会ったときに、
さすらい猫の、物語。
ようやく、終わると思ったが、
さすらい猫の、物語。
再び漕ぎ出す、不死の旅。
なぜ、死ねないのさ、不死の旅。
さすらい猫は、泣いてない。
さすらい猫は、歩くだけ。
あの日出会ったあの人が、
どうしてそんなに良いのかと、
尋ねたくらい、性格が良く、
それでほんとに、裏がなければ、
まるで天使のようだねと、
真正面から、言ったんだ。
そんな訳ある、はずないさ。
あたしの心は、うすら汚れて、
自分を誇れず、他人を妬んで、
あまりにみっともなさ過ぎて、
いっしょけんめい、綺麗に成ろうと、
恥ずかしいので、正しくあろうと、
なんとか、こらえて、いるだけなんだよ。
天使で、ある訳、ないじゃない。
天使に成ろうとさえ出来ない。
人の正しさ、逸れないことに、
アップアップのめいっぱい。
なんとか、1日1日を、
塗り潰している、だけだもの。
そんな彼女の、ほんとの心は、
確かに、天使に見えないかもね。
でもその天使に、見えない天使の、
言葉のほんとは、心に響き、
さすらい猫の、器用な心の、
鍵さえこじ開け、ブスリと突き刺す。
あー、やっられたぁ!
そんな目に、
遭わされ猫は、天使に惚れて、
その人のため、さすらいをやめ、
その人のことを、主人と仰いだ。
そして、さすらい出して初めて、
ほんとの幸せ、その身を覆った。
むろん猫は、死ぬまでその人に仕え、
その人に認められ、その人のために生き、
その人に看取られて、死にたかったんだ。
けれど、因果が、許さない。
猫は、死ぬことだけ、出来ない。
さすらい猫は、理想と逆に、
その人を看取り、だが、泣かない。
泣かないことで、その人を誇った。
その人の人生は、最期まで天使で、
あるいは、天使よりも、尊くて、
さすらい猫の心は死んだが、
その人の名誉の為に、
泣くことだけは、ダメだと思った。
さすらい猫の、物語。
今日で終わると思ったが、
さすらい猫は、この街で、
素敵な人に出会ったときに、
さすらい猫の、物語。
ようやく、終わると思ったが、
さすらい猫の、物語。
再び漕ぎ出す、不死の旅。
なぜ、死ねないのさ、不死の旅。
さすらい猫は、泣いてない。
さすらい猫は、歩くだけ。
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