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「えっと・・・」

 そこでふと気付く、この目元、知っている。片方の眉だけ上がった、ちょっと意地悪な顔をした時の目、これは

「もしかして」

 脳裏に浮かぶのは一人の少女。可能性があるとした彼女しかいない。幼少期、家の隣の児童養護施設を併設した教会にいた彼女なら。

「真理亜、ちゃん・・・?」

 彼女は小さなころから美人だったから。

 昔の記憶を引っ張り出して目の前の彼女に照らし合わせみる。

彼女は思わせぶりに目を細めた。

「せぇかぁい。やっと思い出したのね」

 それから「くくく」と口元に手をやって笑う。

 やっぱりそうかよ!

よく見れば昔と変わっていないじゃないか。えくぼも眉根を寄せて笑う表情も。ちょっと引き笑いするところも。

「えー、なんで。めっちゃ久し振りじゃん」

「えー、とは何よ。もっと喜ばないわけ?」

 いや、喜ぶも何も真理亜とは二十年以上前ぶりなわけで。それ以前になんで俺の店に来たのか知りたい。

「シスターが教えてくれたのよ」

「あー、なるほど」

 それならありえなくない。シスターには店の事を話してあったし。

「私もこっちに引っ越して来たし、ちょっと覗いてやろうと思ったわけ」

「へぇ、そりゃありがと」

「なによ、態度悪いわねえ。常連になってもいいって思ったのに」

「何だよそれ」

「あー、昔はもっと可愛げがあって可愛い子だったのに」

「もう三十路だって」

「おっさんね」

「じゃぁ真理亜ちゃんはおばさんだろ」

「私はお姉さんよ」

「そう言うとこ全然変わってない」

「そうちゃんもね」

 ぷっと吹き出して二人して笑う。久し振りのはずなのに全然そんな風に感じなかった。懐かしくて、楽しくて、美人にはなっているけど真理亜は昔と変わっていなかった。

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