第42話 自首

何が起こっているのか全く理解が出来なかった。

俺達は直ぐに早退して、自宅まで駆け出す。

鞄が邪魔だが、仕方が無い。

山崎や、ひなた、が付いて来ると言ったがそんな迷惑は掛けられないと断った。

とにかく、家に帰らなければ。

思っていると直ぐに家が見えてきた。

その家の前に、警察車両が止まっている。

どうやら、実況見分でもやっている様であった。


「.....親父!!!!!」


「お義父さん.....!」


そして、玄関から入る。

何時もの1階の向かうと。

惨状が明らかになった。

滅茶苦茶にされた店内、お菓子、お菓子の材料。

何かの液体が撒かれて。

スプレー書きをされていた。


「.....カイくん.....桜.....」


由紀子さんが残念そうな顔をしている。

警察に話をしている、親父の側に居たのだが声を掛けてきた。

俺から離れた桜は周りを見ながら、涙を流している。


「.....ごめんなさいね。ショックでつい送っちゃったわ.....送らなければ良かったわね.....」


「.....何があったんですか?由紀子さん」


「.....朝、降りて.....こんな感じになってたの。玄関とこの場所は離れているから気付くのが遅れたわ.....」


なんてこった。

クソッタレ。

確認すれば良かった。

だからと言えど、どうしようもなかったかも知れないが。


「.....酷いよぉ.....せっかく兄貴とお義父さんとお母さんで作った特別な空間が.....」


泣き噦る、桜。

俺はそんな桜の頭を撫でた。

そして、抱きしめる。

そうしていると、警察官が寄ってきた。

何か、書類を書きながら。


「.....すいません。えっと、ご家族の方ですか?」


「.....はい」


俺は桜を抱きしめながら、複雑な顔付きで答える。

すると、警察官は書類に目を通して。

そしてこちらを向いて来た。


「お話をお伺いしても宜しいですか?」


「.....はい。お願いします」


何でもする。

俺はこの様な惨状をやった奴を絶対に許さない。

その様に思い、警察官に向いた。


「.....大丈夫?カイくん」


由紀子さんが聞く。

大丈夫って言うのは、多分、俺の今の精神の事だろう。

怒りしか無い。


「.....大丈夫ですよ。由紀子さん」


「.....そう.....」


その様に、話していると。

警察官が無線を手に取った。

そして、見開く。


「.....すいませんが、少々お待ち頂けますか」


「.....はい?」


慌てて、警察官は去って行く。

俺達は警察官を見送って。

そして店内を眺めた。


「.....腹いせにも程が有るだろ.....」


俺は、その様に。

呟いた。



暫く思い耽っていると、サイレンが鳴ってない、警察車両がやって来て。

そして、家の前に何台か止まった。

大事件の様に。

何だ?

思っていると、外から別の警察官が誰かを連れ添って来た。

手錠が掛けられている、女性。

その顔に。

俺と桜と親父は唖然とする。

何故なら。


「.....」


山本夫妻の妻だったから、だ。

つまり、日本中で指名手配されている夫の妻。

どういう事だ!?

思っていると、警察官達は。

その女性を誘導していた。

そして、先程の警察官が俺達に向いて。

話し掛けてくる。


「つい先程、交番に自首して来たんですが.....どうも、この女性がこの事件について何らかの事を知っている様ですので、連れて来ました」


「はい。.....えっと、飯塚さん。この女性に見覚えは有りますか?」


聞かれた親父は唖然としつつも、珍しく感情を露わにした。

怒りの感じでは無いが、感情が混じった様な。

そんな感じで、だ。


「.....あんた.....」


すると、女性は。

涙目で、頭を下げた。


「.....御免なさい!!!!!」


山本妻はその様に深々と頭を下げて。

そして謝った。

それから、口に両手を当てて。

体をワナワナ震わせた。


「.....夫は.....人を轢いて殺人未遂もやって.....私を駒の様に扱って.....もう人じゃ無いです.....あの人は.....!!!!!」


「.....どういう事だ.....」


俺は聞く。

すると、顔を上げて、号泣しながら。

言葉を吐き出す様に。

言った。


「.....あの人は変わった.....もうあの人の側には居られないと.....出て来て、自首しました.....このお店を滅茶苦茶にしたのも.....全部夫と私です.....御免なさい.....本当に御免なさい.....!!!!!」


「.....」


山本妻はそれだけ話して。

警察官に引き連れられて、実況見分に付き合わされていた。

すると、警察官と話していた、先程の警察官が書類を持ってやって来る。

そして真剣な顔付きで言葉を発した。


「.....えっとですね。一応、容疑で我々が山本一成の行方を追っています。ですが、まだ捕まってない状況ですので.....この近辺を暫く、見回り強化をしますので。念の為ですが.....何か起きては遅いですので、飯塚さん、貴方もお気を付け下さい」


「.....そうですね.....」


俺は桜を抱きしめて。

そして、目の前の山本妻を見つめて。

事が進むのを見ていた。

まさか自首するとは思って無かったから。

少しでも事が進めば良いのだが。

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