第40話 衝撃の真実
俺達は総合病院にタクシーで着いた。
乗り込み、約10分。
つまり、歩きだと約20分。
それぐらいの、あの商店街を超えた先の方。
この街の隅っこに有る。
1階の受付で情報を更に入手してから。
山崎の病室を目指して。
エレベーター内に2人で乗って居た。
「2014号室.....」
ダメだ。
手が思いっきりに震える。
まるで、初めてジェットコースターの様なモノに乗って。
そして怖くて怯える、子供の様に。
すると。
そんな手を、桜がゆっくりと握った。
か細くて。
それでいて、女の子らしい手だ。
それは強く、強く。
握った。
と言うか、握ってくれた。
「.....カイ。大丈夫?」
「.....ああ。お前が居るから。もう大丈夫だ.....」
桜のお陰で落ち着きはじめている。
恐怖が。
仮にも消えつつある。
俺は冷や汗をかくが、それを桜がハンカチで拭いてくれる。
まるで、手術の助手の様に。
思っていると。
ピコン、ガー
「着いたね.....」
「.....ああ」
着いた。
山崎。
頼むからICUとかに居るなよ。
マジで頼むよ。
あれからあまり心配は無いと、山崎の母親らしき人から連絡はあったけど。
どうしても山崎の顔を見ないといけない。
最悪の事態だけは。
頼むから。
止めてくれ。
思っていると、桜がカウンターから身を乗り出して。
ナースセンターでナースに聞いていた。
「すいません!山崎ゆうさんの病室って何処ですか?」
「あ、えっと.....彼方になりますよ」
「有難う御座います!」
これは。
この返事だと。
恐らく、病室には入室禁止にはなってない。
つまりは。
命には関わらないだろう。
良かった。
その様に思いながら。
聞いてくれた桜に感謝しつつ。
廊下を急ぎ足で歩く。
途中で患者とすれ違った様な気がするが。
挨拶されたのかな?
あまり気が付かなかった。
駄目だな。
まだ暗いな。
(2014号室 山崎ゆう)
「此処か.....」
「.....そうだね。カイ」
俺は病室をノックしようとする。
が、一瞬、手が震えて。
駄目だった。
そんな手に、桜が手を添えてくれて。
「.....うん。大丈夫だよ。カイ」
「.....そうだ.....な」
俺は震えながらも。
その、山崎の病室を桜と共にノックした。
すると、返事が来た。
「はい」
「.....この声は?」
ゆっくりと横に扉を開ける。
そこに居たのは。
横になっている、左足に包帯が巻かれ。
病室着で左足を釣っている山崎に。
他に3人居た。
Tシャツにズボン。
着の身着のままで飛び出して来たと見られる、ちょっと年を取った女性と。
そして、綺麗な制服を着ているひなた、栞。
着替えている様に見える。
その様子と雰囲気は。
深刻な顔付きをしながらも。
怒りを持っている様に見えた。
つまり、あまり雰囲気は良くは無い。
山崎は骨折したのか?
「.....?」
「.....ひなたさんに.....栞さん.....?」
「.....カイちゃん.....」
そんな、ひなたは。
俺達が現れた事に驚きの目をするが。
直ぐに、あ、と納得した様に。
俺を和かに見た。
怒り顔だった栞は、山崎の横に居る。
ちょっと年を取っている様な、山崎似の少し色黒の。
由紀子さんに負けずのとても綺麗で、絵にでもなりそうな。
頭を此方に下げている女性を見つめて、俺を見てきた。
相変わらずの静かな感じを醸し出し。
頭を下げる。
すると、奥の山崎が横たわったままで此方を見て。
声を発した。
「.....有難う。カイ。来てくれて」
「.....山崎。状態は?」
冷や汗を流しながら。
俺は右手が震えるのを左手で止めつつ。
眉を顰めて山崎にそう、聞く。
すると、山崎は苦笑気味で反応した。
天井を見ながら言葉を発する。
「.....なんかね、渡ってた時に。銀色?だっけ。車に跳ねられちゃった。左足骨折みたいな感じ。救急車に運ばれて.....警察の人とかに迷惑を掛けちゃってる。さっきも警察の人が来たんだけど.....」
「.....そ.....そうなのか.....」
俺は息を吐き出す。
いや、心底安心した。
という訳では無い。
仮にも安心した。
頭とかぶつけてたらマジでどうしようかと。
後遺症でも残ったら?
マジでどうしようかと。
山崎の競技人生に影響が出る可能性が有るのに。
何だろうか。
激しい怒りが湧き上がってくる。
一体、誰なんだ。
山崎をひき逃げなんて馬鹿すぎる真似をしやがった奴は。
クソッタレ。
絶対に、絶対に許さない。
気付いてなかった。
テレビで良くある様な事は。
絶対に言わせてなるか。
俺は握り拳を作って。
意を決した様に、思って居ると。
ひなたが俺の手を静かに握ってきた。
「.....カイちゃん。桜さん。ちょっと話が有るんだけど、良い?」
「.....どうした?」
「.....?」
栞に向いて。
頷く、ひなた。
栞もこくんと頷いて返した。
それを確認した、ひなた、は。
真剣な顔付きで俺を見据えてきた。
こっちだよ、とその手を導く。
俺は連れられて。
そして、桜の手も握って。
一緒に病室を出た。
☆
「あのね、色々な人からちょっと聞いたんだけど.....運転手の顔が.....車体がその、もう明らかに跳ねとばすつもりで走っていたって.....」
「.....どういう事だ?」
跳ね飛ばす勢い?
どういう事だ。
それってれっきとした殺人じゃないか!
ブレーキ痕も無しかよ。
俺が俯いて、怒りを露わにしていると。
桜が愕然としながら聞いた。
「.....どういう事ですか?」
「栞も私も当初は.....そんな巫山戯た奴が居るんだ。許せないって思ってたんだけど.....更に山崎さんから聞いたらね.....警察の人は目撃者がこんな感じで話していたって。その.....よく分からなかったけど、男性が運転席に、もう1人が助手席に、乗っていて。そして銀色のセダンに乗っていたって.....」
「.....銀色のセダンだと.....」
俺は顎に手を添える。
そして、考えた。
その、銀色のセダンは。
確かひなた、と栞と偶然に会った、ファミレスに止まっていた。
ん?ちょっと待て。
偶然か?
「.....一応、番号もメモられていてね、番号が.....あ、〇〇ー21でね.....その車の所持者はこの街や.....いや、日本では一つしか無くて.....言い出しづらいんだけど、カイちゃんと桜さんがこの前、会った私達の元親.....なの」
「.....な.....」
思い出す。
その言葉を。
まるで、地獄に突き落とされた、悪魔の断末魔の様な言葉を。
ファミレスから出て行く時に聞いた声。
『覚えていろ!!!!!絶対に許さない!!!!!』
「.....アイツら.....」
俺はゾッとする。
なんてこった。
それから、眉を顰める。
すると、ひなた、が勢い良く頭を下げた。
涙声で、謝ってくる。
「.....ごめんなさい!私達の.....親が.....!!!!!」
「.....ひなたさん.....」
桜が慰める。
信じられない真似を。
逆ギレじゃ無いか。
完全に。
「.....携帯は全く繋がらないし.....もうどうしたら.....良いのか.....!」
「.....」
桜は俺の顔を不安げに見てくる。
そんな俺は。
真剣な顔付きで且つ。
怒っていた。
娘をこんな目に遭わせて。
更に俺の仲間にも。
絶対に許せない。
「.....絶対に許せないだろ。こんなの.....」
そう、俺は拳を握って。
呟いた。
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