第39話 事故
説教を受けてから。
桜と共に飯を食べて。
そして、フワフワした様な午後の授業を受けてから。
俺は桜とひなたと共に帰宅した。
山崎は部活が有るという事で。
合流しなかった。
そして、家で。
「兄貴!そっち並べたよ!」
「おう!」
由紀子さんと桜と親父と共に。
合同で忙しく動く。
和菓子を並べたり、作ったり、掃除したり、接客したり。
それらを繰り返すぐらい忙しかった。
参りそうになるが、それでも踏ん張る。
待っていてくれる人が居る限りは。
そう、思いながら。
☆
「終わった.....」
「.....そうだね.....」
忙しく動いて、夕方。
着替え室で俺は肩を回す。
桜は項垂れて、真っ白になりそうだ。
本当に死に物狂いだな。
でも、これだけ人気だと嬉しいよな。
忙しくて死にそうになったけど。
「.....桜。大丈夫か?」
「.....死にそうだけど、大丈夫.....でも腰が痛い.....」
流石にそうなるわな。
俺も肩が痛くて。
そして眠気も有るな。
取り敢えず、風呂入って、飯食って、歯を磨いて、寝るか。
勉強は明日で。
じゃ無いとヤバい。
「.....」
なんか。
ふと、皆んなから告白された事を思い出した。
こんな俺を愛してくれる、みんなの事を。
これまでは不幸だと思っていたけど。
そんな事は無かったんだなって。
「.....兄貴?何考えているのかなぁ?」
「.....何を考えているか?そうだな。まぁ、お前から告白された事を考えていたよ」
「ちょ、え?!??.....あ。もしかして付き合う気になった?」
驚きの表情を浮かべた桜。
だが、次にニヤッとして、俺を突いてきてから。
その様に話した。
俺は優しく桜の額にデコピンした。
そして、笑みを浮かべる。
この幸せが何時迄も続くと良いな。
その様に、思いながら。
俺は桜を和かに見た。
「どうしたの?兄貴」
「.....いんや。どうもしてないよ。大丈夫」
そして、俺は立ち上がって、着替えよう。
その様に思い、ロッカーを開けた。
次の瞬間。
ピコン
「ラ○ン.....」
文章が入った。
ラ○ンだ。
画面を見ると、どうやら山崎からの様で。
山崎か、と俺はその文章を読んだ。
そして、真剣な顔になり、一気に青ざめる。
その様子を、桜が見てきた。
「.....」
「.....兄貴?」
「.....すまん。桜。用事が出来た。今から外出して来る」
あまりの事に。
衝撃を受毛てしまった。
俺はジャージを片手に走る。
そして扉に手をかける。
すると、桜が直ぐに俺の手を掴んできた。
その顔は心配げな顔をしている。
「どうしたの!?ねぇ!?」
その言葉に。
俺は目の前を見たまま。
小さく言葉を発した。
と言うか、小さくしか言葉が出なかった。
震えていて、だ。
「.....山崎が.....信号無視の車に跳ねられた.....と山崎の母親からだ.....」
「.....え」
俺はそれだけ小さく呟いて。
扉を蹴り破って、全てをぶち破る勢いで走った。
ヤバい。
マジで不安しかない。
何だろう。
あ、そうか。
『母さんはな.....死んだんだ』
『負けないからね!飯島カイくん!』
親父や。
山崎の。
その言葉が。
その光景が。
その全てが。
大きく頭を過ぎった。
目の前を見る。
フローリングの床、少し汚れた襖。
そういうのが見えてくる。
「.....」
最悪の展開に持っていく俺はクズだ。
だけど、昔の事があって。
どうしてもそうしかならない。
駄目だ山崎。
死ぬな。
今日、告白されたばかりなんだ。
俺を好きと言ってくれた女の子なんだ!
やめてくれよ神様。
フラフラ走る、俺は。
目の前が暗くなっていくのが分かった。
「あー、ヤバい」
駄目だ。
またショックで記憶失うかも知れない。
すまん、桜、親父、由紀子さん。
ショックで。
結構ヤバいかも。
「カイ!!!!!」
青ざめて、周りが見えなくなりながら。
全力疾走する俺の手を。
天使の手が掴んだ。
そして、握りしめる。
俺はその痛みに。
見開いて、視界が一気に開けた。
そして、背後を多少青ざめながら、見る。
そこには。
複雑な顔付きをしながらも和かな。
そういう顔をして?
と言わんばかりの、天使が。
居た。
「.....兄貴、落ち着いてとは言わない。だけど、一旦、深呼吸して。大丈夫だから.....!」
「.....!」
そうだ。
俺はもう、1人じゃない。
桜や、ひなた、栞。
みんなが居る。
そうだ。
その事を。
忘れて居た。
「..........桜。.....頼む。付いて来てくれ.....」
「当たり前だよ。カイの為なら!!!!!」
周りが見えなくなりそうな時。
俺の手を。
そっと、天使が握ってくれた。
もう。
1人じゃないと。
分かった。
俺達は駆け出して。
玄関を開けて、直ぐに走った。
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