第38話 告白後

人間とは不思議なものだ。

いや、哲学を述べている訳じゃ無い。

ポーッとして。

それからボーッとして。

それで頭の中に保体の授業の内容が全く入って来ないから。

そんな下らない事を考えているだけ。

何が不思議なのか?

俺の目の前の開かれた保体の教科書の女と男が手を繋ぐ絵。

その2人の絵を見てから、俺は外を見る。

簡単に言えば、そんなに俺は魅力が有るのか。

と考えてしまうのだ。

まぁ、そんな事を考える羽目になったのは完全に原因が有るのだが。


『負けないよ!飯島カイくん!』


山崎に唐突に告白されて。

俺は山崎の顔が平然と見れなくなった。

教室にプリントの山を持って来る疲れが有りながらも。

完全に集中力が折れた。

その為、外を眺め見ているのだ。

鳥は良いね。

自由気ままで。

あ、いや。

鳥じゃねーか。

あれはスズメか。

えーっと、なんだっけ?

英語でイヤンクックじゃ無くてアレだ。

おおそうだ!クックロビン.....


ゴンッ


「アイテッ!?」


まさかの突然の後頭部の痛みに。

悲鳴を上げてしまった。

その悲鳴に教室が一斉に俺に視線を打つける。

ちょっと待て、なんだ!?

俺の頭に力強く何か打つかったぞ!


「.....消しゴム?」


拾うと、そんな物が。

周りを見渡すと、山崎と視線が合った。

そんな山崎は怒って此方を見ている様に見えた。

消しゴムを見ろという感じでも有る。

何やねんマジで。


「どうした?飯島」


「.....瀧川先生。何でも無いっす」


「.....そうか?」


保体の先生が俺を面倒臭そうに見ながら。

声を掛けて来た。

俺は直ぐに答える。

そして、授業を再開した瀧川を見てから腰掛けて。

消しゴムのスリーブを開ける。

そこに、紙が入っていた。

オレンジ色のメモ用紙。

何だこれ?


(授業に集中!)


それだけ、書かれていた。

背後を見ると、鼻息でも荒く出しているかの様な感じで。

踏ん反り返って、山崎は居た。

無茶苦茶だな。


「.....集中ね.....」


できる訳ねぇだろ。

美少女から告白された挙句。

キスまでされて。

馬鹿じゃねーのか本当に全く。


「.....出来るか、アホ。お前の可愛らしいキスが影響されている.....っと」


俺はそれをオレンジ色のメモ用紙の裏に書き記して。

そして瀧川が横を見た隙に投擲した。

それをナイスキャッチと言わんばかりに受け取る、山崎。

そして、開ける。

で、猛烈に赤面した。

俺を涙目で睨んでくる。

ハッハッハ!ザマァ!

俺はその様にニヤニヤして思いつつ。

真正面を向いた。

と、その瞬間。

授業が終わった。



「カイ!!!!!加減しなさいよ!!!!!」


「お前が悪いわアホ!!!!!消しゴムを打つけてくんなよ!!!!!」


夫婦漫才ですか?

というぐらいな感じで。

それから俺の胸ぐらをひっ捕らえて、詰め寄ってくる山崎。

って言うか、カイになったのかよ!

俺の呼び名!

グラグラ揺らされる、俺の頭。

すると、ひなたが目を丸くしてやって来た。


「.....山崎さん?あの.....呼び名、カイになってる.....」


「え?あ、うん。イメチェン?って言うかね。ね?カイ」


「え?あ.....ああ」


話を合わせてという目付きをされてもですね。

顔が赤くなるのが止まらない。

これを見た、山崎。

バカッ、隠しなさい!その表情。

とヒソヒソ言ってきた。

無理あるだろ。

そんな中、俺の様子や山崎の様子を。

いち早くひなたが何かおかしいと。

その様に感じ取った様で。

すると、ガラッと教室が開いてから。

桜がやって来た。


「兄貴。お弁当だよ」


まるで話を読み取った様に来るね!

すると、ひなたが勢い良く桜の下に駆け寄り。

オホホと口元に手を当てて。

#のマークを浮かべてヒソヒソ話した。


「桜さん。お話が有ります。ちょっと良いですか?」


「え?あ、え?」


目をパチクリする、桜。

これに対して、山崎が大慌てになる。

俺以外ですら怪しいと思うぐらいに、だ。


「あのさ!?ひなた!違うよ!?何も無いよ!?」


「いや、その動揺は怪しいです。桜さんには伝えないと」


目をグルグル回す、山崎。

オホホと言う、ひなた。

何だこれ。

女のバトルが始まっとる。


「桜さん。えっとですね、山崎さんとカイちゃんが.....」


「無いってば!!!!!」


仲が良いなぁ。

とクラスメイト話す。

違うけどな。

これ完全に俺を巡ってバトルしてるよ。

俺もしょうが無く、立ち上がる。

そして桜を見ると。


「.....ひなたさん.....山崎先輩.....慌てる.....喧嘩.....あ、成る程。えっと.....兄貴。話が有るんだけど.....?」


対峙する、2人の様子を確認してから。

手を叩いて。

それで、全てを悟った様な、大魔神が。

その場所に立っていた。


「.....あの、桜さん?その、お手柔らかに.....」


「状況によっては無理」


バッサリ切るね。

いかん。

逃げんとヤバい気がする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る