第36話

桜の父親の祐介さんの墓参りに向かってから。

日が経った。

3月14日、水曜日。

今日はホワイトデー。

まぁ、そんなものはどうでも良いとして。

簡単に言えば、6時間授業が50分間で6セット。

つまり、長くある。

通常は午後3時40分に終わるものが、午後4時ぐらいに終わる。

まぁ、なんと言うかその。

とにかくクッソ眠たいなぁ。

長いと尚更眠い。

くそう。


「.....ふああ.....」


「カイちゃん」


俺は机に頬杖をついて。

窓から外を見つつ考えて居ると。

急に背後の方からひなたに声を掛けられた。

俺はそんな、ひなたの方を向く。

きっちり着込んだ制服に。

にこやかな表情。

ひなたは今日は季節に合わせてだろうか。

雪だるまのカチューシャで留めた、ポニテになっていた。

多分、俺の好みにでも合わせているつもりだろうな。

うーむ、これは確かに可愛い。

見惚れると言えるな。

まぁ、今は見惚れている場合じゃ無いけど。

すると、ひなたが何かを取り出した。


「はい、これ。あげるね」


「.....あ?これ.....は?」


ハート型のトマトの赤さのボックス。

丁度、手のひらサイズだ。

なんだコレ?

俺はクエスチョンマークを浮かべる。

手のひらサイズのその箱の、ピンク色の紐を解いてゆっくりと開けてみると。

そこには、LOVEと書かれた、チョコが入って、って。

ん?何だ?チョコじゃねーか。


「.....チョコレート?え?ちょっと待て。.....バレンタインデーじゃ無くね?今日」


「うん。男の子からお返しを貰うホワイトデーだよ。だけどね、2月14日は会えなかったから.....今日が良いかなって.....ね?」


「.....そ、そうか.....」


赤くなりながらもじもじする、ひなたに。

俺は赤面で考える。

この前の事で傷付いてないのだろうか。

ひなた、は、と。

考えてしまう。

俺は複雑な思いで、はにかむ、ひなたを見つめる。

その時だった。


「ちょっと待ったー!!!!!」


「.....何だよ。山崎」


元気が良いな。

まるで太陽が有る様に感じれる。

相変わらずの胸元開け。

そして日焼けしてない鎖骨が見える。

何故か、前髪の横を少しだけ結わえて、2つのリボン。

そして、制服を見事に着崩している様な女の子。

山崎ゆう、だった。

一体何事。


「飯島くんよ。あのさ、友達から聞いたんだけどさぁ.....?ひなた、と飯島と桜ちゃん?何でもファミレスで全員で居たって話なんだけどぉ?どういう事かな?飯島くん?」


「.....なぁ!?」


友達が居たのかよ!

謀ったなお前ら!

俺が焦って居ると。

何で私だけ仲間外れなのかなぁ?

その様な、細目で見てくる。

いやいや。


「.....お前が居る必要は無かったからだけどな?」


「飯島ひっどい!!!!!」


ならどうしろと?

俺は苦笑いを浮かべる。

そんな俺達の様子に。

ぬらっとして。

ひなたがゆっくりと話した。


「.....あの、山崎さん。貴方は何が言いたいんですか?」


「.....ひなた。仲間外れにされてるのが気に食わないのよ?そう言ってる」


何でや。

バチバチと睨み合うな。

俺を巡って争っている様に見えるんだけど。

勘弁してくれ。

教室で起こすな。

ほら!スクールカーストの上の奴らが!

ヒソヒソ話してるから!

胃が痛い!


「ハァ.....」


って言うか、山崎って本当に俺の事が好きなの?

実際の所、俺に構い過ぎだと思うのよ。

幾ら何でもね。

でも、それだったら俺を好きになる根拠が見つからない。

やはり違うか。

うーむ?


「.....って言うか、とにかく!イチャイチャ禁止!私の目にも余るし皆んなの目にも余るからね!」


「うん、でも何で?貴方に止められる根拠は無いよ?」


「だから喧嘩すんな.....」


俺は額に手を添えて思いっきり息を吐いて首を振る。

頭が痛くなってくるし、注目度MAXになるから。

マジで勘弁してくれ。

俺はボッチが好きなんだっつーの!

ため息を吐きながら。

その様に思った。

すると。


キーンコーンカーンコーン


「.....っと。チャイム鳴ったか」


チャイムに。

俺は教科書が出てない机を見て、焦る。

すると、山崎とひなたが俺を見て、挨拶を。

そして睨み合った。

オイ。


「.....じゃあ、私、椅子に座るね。カイちゃん」


「.....うん、私もね」


挨拶もそこそこに。

保体の先生が入って来た。

気怠そうに無精髭のその先生は教科書を見てから。

そして俺達を真っ直ぐに眠気まなこで見てくる。

やる気あんのかコイツ。


「.....はーい。それじゃ、授業を開始しまーす.....って。あるぇ!?」


何だその変な叫び声は。

教室が爆笑してんぞ。

俺も笑う。

どうやら忘れ物でもした様で。

すると、その先生が山崎を頭を掻きながら見た。


「.....山崎。済まないけど、プリントを取って来てくれない?誰かと協力して」


「.....え?え?.....あ、はい。分かりました.....じゃあ.....」


山崎は。

俺を見てきた。

その事にクエスチョンマークを浮かべる、俺。

俺自身に指差すと、山崎は。

怪しい笑みを浮かべて、ニッコリした。


「じゃあ、飯島くんと一緒に」


「何で俺だ!?」


「嫌なの?」


不愉快そうに眉を潜める、山崎。

嫌じゃ無いけど!

そんなに睨むなよ。

俺はその様に思いながら。

また面倒な事になった。

と、その様に思う。

教室中がざわざわしているし、ひなたは眉を潜めて居るし。

面倒臭いなぁ。

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