第34話

俺達は海を離れ、足を拭いて汚れを取ってから。

近場のファミレスにやって来た。

結局、どんだけご飯を食べる店が有っても。

近所にはファミレスしか無く。

挙句には外食は大概、そのファミレスにしか行ってないせいもあり。

お互いに落ち着くのはファミレス。

という、デートでは絶対的に有りえない展開になってしまい。

俺は苦笑していたが、桜が望むのであれば、と。

そのままファミレスに来た。

あまり客が居らず。

そのまま席を確保してから、手を上に伸びをする、桜。

腋が見え、俺はそれに赤面してから。

顔を逸らす。


「んー!やっぱり外食と言えばファミレスだよ。兄貴。.....落ち着くー!」


「.....お前な。俺は散々デートのコースの食事場所とか考えたのにな」


「うーん?良くない?一回ぐらい私が決めても.....ね?」


うーむ、そういうもんか?

デートって。

まぁ、楽で良いけどさ。

でも本当にこれで良いのか?

なんて思ってしまうのは俺だけか?

何だろう。

ちょっと不安になるな。

本当に楽しめているのだろうか桜は?

と。

その様に考えていると。

頬杖をして、桜がはにかんできた。


「.....兄貴。やっぱり兄貴は最高だと思う」


「.....あ?.....いきなり何だよ」


「優しいし、最高の兄貴だと思うんだ、ね?」


何を言ってんだ。

超小っ恥ずかしい事を。

って言うか。

俺は優しく無いよ。

多分、自己保持の為に。

やっているだけだ。

昔の事を考えて。

その様に自嘲する笑みを浮かべながら、思っていると。

桜が横の奥の席を見ていた。

ん?


「桜?」


「.....ね、兄貴、あれって.....」


桜はその見て欲しいと言うような方角に。

か細い指を差した。

俺もその指を追う様に横を見る。

そこには。


「.....栞じゃ無いか.....それに、ひなたも居る.....?え?」


俺は眉を顰めた。

栞、ひなた共にそれぞれの高校の制服を着ている。

その栞の横には。

少々老けたように見える、それで居ながらもグラマーなスーツの美人の女の人が。

代わって、ひなたの横には初老と思われる男性が居る。

いや、ジェントルマンと呼ぶべきか?

あまりに清楚なスーツを着込んでいて、胸にはスカーフが入っている状態。

この海の近くに有るファミレスに似合わなすぎる。

何だこの珍妙な光景は?

俺はとにかく首を傾けるしか無かった。

って言うか。

誰だアイツら。

何で栞とひなた、と一緒に腰掛けて居る。

更に言えば。

栞とひなた、の表情は。

複雑な表情を浮かべて居た。

どういうこったよ?


「.....どうしたんだろう?」


「.....分からん。って言うか、姿がファミレスにあまりに合わないな。何だ?」


その様に桜と共に思っていると。

真正面から女性の店員さんがやって来た。

ポニテ姿で、それが似合っている女性店員は。

所謂、メイド服を少しイジった様な制服を着ている。

和かに俺達に聞いてくる。


「ご注文は?」


うさぎですか?

まぁ、何つってな。

それは冗談だが。

注文か。

しまったな。

ひなた、と栞を見過ぎて。

考えるのを忘れていた。

そんな中でも、桜は既に考えていた様だが。

直ぐに答えを言う準備をしていた。

相変わらず俺はファミレスは苦手だな。

何にするか。

考えていると、桜が注文した。


「チョコレートパフェをお願いします」


「はい」


その様に。

いやいや、昼食時なのに。

そして桜はパフェばっかりだな。

その様に思い、笑みを浮かべつつ。

俺は考え込む。

何を注文するかな。

グラタンも美味そうだ。

よし。

まぁ良いや。

グラタンとドリンクバーにしよう。


「グラタンとドリンクバーを下さい」


「畏まりました。お待ち下さい」


その様に伝票に書き記し。

ポニテ店員さんは頭を下げて去って行った。

俺達は直ぐに横を気が付かれない様に確認する。

相変わらず、複雑な表情を浮かべる、栞とひなた。

そんな中で、美人の女性の人と、外人の様なジェントルマンな男性は。

申し訳無さそうに話しかけている。

頭を下げる勢いだ。

その声は、偶然にも店内に客があまり居らず、調理も奥の方でやっているせいで。

風に乗る様に。

俺達に聞こえてきた。


「.....いい?私達は家族になれるわ。.....もう一度ね。私達は反省しているわ」


「.....そうだ。家族になる必要が有る」


だが。

本気で申し訳無さそうなこの言葉に。

一切の否定的な意見が出た。

その言葉を発したのは。

栞だった。

その目に睨みの光を持っている。


「嫌です。私はひなた、は。貴方達とは家族になりたく無いです」


「私もその言葉に賛同します」


初老男性は。

この言葉に、青筋を立てている様に見える。

それから、全く同じ様な言葉を繰り返していた。

だが、その事に遂に呆れたのか。

ひなた、がバァンとテーブルを叩いた。

俺達も驚愕する。

そして、ひなたは叫び声の様な声を上げた。


「何が家族ですか!人が重んじる宗教を悪用して、お金儲けしていた悪徳商業していたのが失敗して、私達に重石を乗せようとしている!その事を知っているんですよ!!!!!私も栞も!!!!!そもそもに家族を売っぱらったのもあんた達でしょうが!?」


激昂して、性格が崩壊している。

怖いが、それでも全く動じない、初老男性と。

スーツの女性。


「ちょっと待つんだ。ひなた」


初老男性は少しだけ鼻息を出して。

呆れた様に話す。

だが、その指摘に栞が助長する様に。

水を飲んで、話した。


「何も違いません。.....ひなた、に聞かれて調べましたからね。私達は知っています。それを受け取り人や消費者や自らの会社の.....いや、会社と呼べるのかも分かりませんが。.....会社役員に押し付けようとしたクズ行為も知っています。私達が偶然にもカイ君のせいで記憶を失ったからといって舐めてもらっては困ります」


「.....栞!!!!!」


スーツの女性が怒った。

逆恨みのように、だ。

上手くいかなかったからだろう。

それでも栞は全く動揺せず、睨みを効かせる。

ひなた、もだ。

強いな。

姉妹揃って。

その様に思いながら観察している、俺達。

すると、その時だった。


ガー、バァン!


「!?」


「.....!?」


突然、タイミング良く?なのか。

ファミレスの自動ドアが開、いや。

無理やり開かれた。

また初老の様な男が入って来た。

客にしてはあまりに異質な存在である。

口周りに灰色のヒゲが生えた、渋いイケメン。

シャツにジーパンという、簡易な服装だが。

かなり迫力が有って。

その男は眉を顰めまくっていた。

誰だ?と思っていると。

店員の案内も無視してから。

奥の席に唐突に歩いて行き、初老男性の胸ぐらを持ち上げる様に掴んだ。

まさかだった。

これに対して、ひなた、が。

周りの客が。

慌てる。


「ちょ、ちょっと、お義父さん!」


「.....止めるな。ひなた、もう我慢が出来ん。コイツという.....奴は何も変わってないでは無いか!!!!!」


お義父さん。

その男はそう言われた。

ひなた、の現在の父親か!

そんな男は胸ぐらを掴んだまま、本気で殴り掛かろうとしている。

俺達はその光景に慌てる。

無論だが、店員も慌てていた。

掴まれた初老男性はその男の胸ぐらの手に手を置きながら。

睨みを効かせる。

そして、掴まれた初老男性はひなたに思いっきりに掴みかかろうとする。


「謀ったな!!!!!ひなたァ!!!!!」


「貴様!!!!!何をやっているんだ!」


ファミレスの店内であろうが、関係無く暴走する2人。

遂に男が押し倒した。

水が溢れたり。

拳が飛ぶ。

掴み合いになる、二人。

ちょ、いかん。

これは幾ら何でも止めなくては!


「兄貴!マズイ!」


「マジでぶっ殺そうとしてやがる。止めないと!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る