第32話

俺達は既に話していた、親父と由紀子さんにまたそれぞれ許可などの意味で話して。

そのまま自宅を出た。

今日の天気は晴天である。

空を見ると、青々としている。

まさにデート日和であった。

因みに、デートプランは俺が男なので俺が全て考えてある。

簡単に言えば、俺達は今日、この街を飛び出し。

隣の海が綺麗な街に行って。

そしてデート(仮)をする事にしている。

俺達は駅まで歩き。

そして3駅向こうな為、快速電車に乗る。

乗ってから1分ぐらいで電車が動き出した。

俺達は周りを見る。


「.....」


「.....」


何だか人が少なかった。

そんな、快速電車の中で。

俺達は4人席?の一つの長椅子に並んで腰掛けた。

隣の窓際に座っている桜は。

窓の外を見ながら、鼻唄を歌う。


「フンフン♩」


と。

とても楽しみにしている様な、リズムの有る、鼻歌。

歌声が可愛かった。

俺はその桜を少しだけチラ見して。

そして真正面を見る。

手を前で交差して。

考えた。


「.....」


現状。

桜は本気で俺の事を好いている。

それは本当に有難い事だ。

だけど、俺は。

桜とは2つの理由で付き合う事が出来ない。

でも、それでも桜は。

待っていると答えてくれた。

俺は全てを考える。


『.....し.....しおりちゃん.....』


親父から聞いて。

更に、段々と思い出した、俺の幼い時の記憶。

俺が導いた、かつての罪を、だ。

栞の性格をぶち壊し。

そして、記憶喪失にした。

更に、ひなたも。

記憶喪失にしてしまった。

それらが全て。

俺が悪いのかも知れないと。

考えてしまうのだ。

こんな俺は。

女性を一生の伴侶として。

大切に出来るのか。

怖いと感じる。


「.....大切な人がまた居なくなってしまいそうで.....か.....」


「え?」


しまった。

つい、口に出てしまった。

横で窓の外を見ていた、桜が反応してくる。

俺は驚きながら、手を振る。


「.....あ、ああ。何でも無いよ。桜」


「.....そう?」


見開いている、桜を他所に。

気を紛らわせる為に、周りを見る。

それで俺はびっくりした。

かなり人が多くなっている。

前の車両や、後ろの車両から人がやってきた様で。

俺はその光景に目を奪われる。

すると、人影が。


「ここ隣良いですか.....」


「.....え?あ、どうぞ」


横を見ると、嗄れて。

それでも幸せそうな感じの。

帽子を被った、老夫婦が申し訳無さそうに話し掛けてきた。

優しそうな感じであるな。

その、老夫婦はこれから旅行にでも出掛けるのか。

リュックサック、旅行鞄を持っている。

重たそうにしており、って。

おっと、大変だ。


「あの、良かったら、荷物を上の棚に上げるの、手伝いますよ」


「.....おお。すいませんな」


長い白い眉毛の老夫がその様に話す。

重たい荷物を棚に上げて。

老夫婦が腰掛けるのを桜と共に手伝い。

真正面に老夫婦。

その対面に桜と俺。

その様な、4人で座る様な構造になった。

俺達は腰掛けた、老夫婦を穏やかに見つめる。

老夫婦も笑みを浮かべていた。


「.....失礼ながら、お兄さん、其方は.....恋人さんですかな?」


片目の視線を俺に向けて。

桜に向けて、俺に杖に手を置きながら話してきた。

桜が俺をみつめる。

そんな桜を俺は見て。

その老夫の言葉に首を振る。


「.....いえ、彼女は.....今は妹です」


俺は控えめにしながらも。

その様に答えた。

これに対して、老夫の横に居た、老妻が見開く。

そして、驚きながら口を開く。


「.....今はって事は.....ああ、成る程.....」


「.....?」


その老妻の反応に。

俺はクエスチョンマークを浮かべた。

老妻はやけに納得している。

そして、老夫を見て、微笑む。

何だろう。

俺はその様に思って。

老夫婦を見据える。

すると、老夫婦はお互いに見つめ合い、頷いた。

そして意を決した様に。

俺達に言ってきた。


「.....私は昔、この方の義妹でした。でも、私から告白して付き合って、婚約しました」


「.....!」


「.....!!!」


まさかの言葉に。

俺達は見開き、驚愕した。

顔を見合わせて、老夫婦を見る。

老妻は懐かしむ様に俺達の足付近を見て。

そしてポツリ、ポツリと語り出す。


「.....私達の.....両親は私達の婚約に大反対だったけど.....その反対を押し切って私はこの方を選びました。昔からとても好きでした。だから婚約したんです。.....今では.....これで良かったと思います。一生涯の伴侶が出来て」


「.....そうなん.....ですね.....」


この告白に桜は。

俺を赤くなりながら、見てきた。

それに対して、俺は頬をポリポリ掻く。

その様子を幸せそうに見てくる、老夫妻。

すると、アナウンスが。


(えー、次は〇〇駅、〇〇駅〜です〜)


目的の場所に到着する。

その様なアナウンスだった。

桜が俺を見てくる。


「.....兄貴、次.....」


「.....そうだな」


本当にあっという間だった。

俺達は自らの事を話してくれた、老夫婦に頭を下げる。

あまり話せず、一方的に聞く様な感じになってしまった様な気がしたりして。

頭を下げずにはいられなかった。

お礼も勿論だが。


「「有難うございます」」


俺達はその様に、感謝の言葉を話して。

老夫婦を見た。

手を振っている。

そして、老妻が懐かしむ様に言葉を出した。


「.....お兄さん。きっとその恋には.....両親の反対も大きくあるかも知れないわ。だけどね.....人生は一度きり。時には自分の思いを伝えるのも大切にして。そして、後悔をしない様にね」


「.....そう思います」


俺が口角を上げて話すと。

横に居た、首をあまり動かさなかった、老夫が笑みを浮かべて。

そして静かに桜に視線を向けた。

桜はその事に首を捻る。

それから、老父は。


「.....悩む事は有るじゃろうて。頑張る事じゃ。お嬢さん」


「.....あ.....有難う御座います!!!!!」


俺達は荷物を持って。

そして、手を振られながら。

俺達は駅に降り立った。

桜が俺を見上げて。

そして前を見て話した。


「.....何だか不思議な人達だったね」


「身近に感じた。有る意味.....俺の婆ちゃんと爺ちゃんに感じたな」


悩みの全てが吹っ飛んだ訳では無い。

だけど、それでも。

悩みがスッと。

消える様な感覚だ。


「兄貴。私、頑張るね。負けないよ」


駆け出した桜は。

向日葵の様な、満面の笑みを浮かべ。

その様に言った。

俺はその様子に驚きながら。

笑みを浮かべた。


「.....そうだな」


そして俺は。

桜を追う様にして。

改札に向かった。

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