第29話
少し、昔話をする事になる。
親父が和菓子を創作するのも。
商売すらもまだやって無かった頃。
小学生の頃のある日、突然、親父は脱サラをした。
何を考えたか和菓子職人になるって言ったのだ。
その意味が全く分からず、俺は母さんと共に猛反対をした。
だが、親父はあっという間に会社を辞め。
生活費などで段々と貧乏になって行き、1階建てのボロ家に俺達は住む事になった。
そんな俺は親父が働いて無いという誤解でクラスにて俺はイジメに遭い。
友人にも裏切られ。
当時小学4年の俺からは人が離れていった。
当然ながら俺は親父を恨んだ。
何故、安定した仕事を放っぽり出してしまったのか。
本当に意味が分からなかったからである。
そして、その事を、母親に聞いても。
母さんは何時も同じ様に。
『大丈夫、お父さんには考えがあるのよ』
その様にしか話さなくて。
俺には嫌気がさして。
そして、イジメられている人生を送り。
俺の精神は、身体は不安定だった。
そんな中。
丁度、そのボロ家の隣。
同い年の子供とかなり宗教派の捻くれたそこそこの金持ちがある日。
住み着いた。
それから俺の運命の歯車は動く。
四神に拘る様な人達だった。
当時の俺には意味が分からなかったが。
そんな、小学校4年生ぐらいのクソガキの俺。
そして山本性になる、美少女小学生と。
やがて友人関係になっていく。
☆
ある日、親父が聞いた事によると。
姉妹はそれぞれを、
日向は永久的に貴方を照らしてくれる。
ひなた。
栞は半永久的に貴方の側に居てくれる。
栞。
その様な意味の名付けだと。
まだ仲が良かった時に自慢げに話す山本夫妻から聞いたそうだ。
ビジネスの意味で巨大な宗教の長をやっている山本夫妻のその名付けに。
そうなんだな。
と、思いながら逆に。
あまりそんな事を自慢するのだったら良い印象は無い気がするのだが。
その様に思いながらも。
俺達は隣同士の関係で意気投合したらしい。
食べ物をよく分けてくれたりしたそうだ。
そんな中で。
小学生同士という事で、姉妹の2人と楽しく遊んでいた。
それは女と男だったが、俺達は結構仲良く。
その、遊んでいるその仲の良さは俺の両親や、山本夫妻が認めるほどであり。
はっきり言うなら、俺はそこそこお金持ちのその山本家の次世代。
それを担うんじゃ無いかと言われていたそうだ。
だがある日の事。
遊んでいると、姉妹の1人の。
栞が川で溺れた。
それまでは相当な元気っ子だったらしい栞だったが。
意識混濁で運ばれた。
「.....し.....しおりちゃん.....」
俺はびしょ濡れで。
その様に、青ざめた。
必死に助けた。
そして、栞を心配して。
救急車で運ばれる、栞をどうする事も出来ずに、ただ見ていた。
それから数日して。
俺は母さんを亡くし。
更に不幸は立て続けに起こり。
母さんの事を少しでも軽く出来たらと。
一緒に登っていた登山で。
砂まみれで放置せざるを得なかった、太ももからのウイルス感染を。
ひなた、が引き起こし、脳にウイルスが周り。
記憶を失った。
当然俺は不幸が続き。
イジメも有り、頭がおかしくなり。
そして記憶を失った。
そんな中で。
立て続けに起こる、この不幸に。
山本家はその捻くれで。
俺を一方的に責めてきた。
何も悪く無い俺を。
『お前の息子が悪いのでは無いか』
などと、一方的に。
何故なら、全ての事件が。
(俺)と(共)に起こってしまっているせいもあったからだ。
全てを怪しんできた。
勿論、この事については親父は猛反発した。
「そこまで言うのであれば縁を切ります。ウチは何も関係無い」
「おお!そうか!こっちも寄るなと言いたかったからな!」
当時の親父と山本夫妻は。
裁判でも起こすのでは無いかと言うぐらいに仲が悪くなり。
俺達は嫌がらせを受けたりした。
ゴミが投げ込まれるとか。
その様な、陰湿な嫌がらせを、だ。
これについて親父は夜逃げの様な形で。
家を捨てて、俺を守る為に。
必死に、今の家に逃げた。
息子に非は無い、巫山戯るなと。
山本家と完全に決別を表明した瞬間だった。
☆
そして、行方をくらませてから。
5年以上。
今の俺の栞の再会に至り。
親父は考え直す様になったという。
☆
親父は餡子を見ながら、眉を顰める。
そんな親父の言葉に。
俺は衝撃を受けていた。
「.....馬鹿な奴らだった。本当に嫌いだった。そして、嫌気が指した。.....だがそうであっても。俺にも責任はある。何故なら、あの様な分からず屋と関係性をもったのは.....俺だからだ」
「.....」
俺はその親父の言葉に。
ただひたすらに衝撃を受けるしか無かった。
その中で。
疑問も湧いた。
何故、ひなた、だけが記憶を持っているのか、と。
何故、名前が変わっているのだ、と。
何故、ひなた、も栞も、俺に接触して来たのだ、と。
まだ謎が多く有ったが。
質問攻めにしても親父は答えられない。
その様に思い、黙った。
ただ一言だけ。
俺は静かに呟く。
「.....何なんだ一体.....この状況.....」
「.....」
親父は口を覆う様な仕草をして髭を触る。
俺は握っている拳を開いた。
そして俯いて考える。
唯一、これは今直ぐに聞きたい。
「.....あの.....それでいて、何で親父は栞をこの家に招いたんだ?知っているだろ。成長した栞の姿ぐらい」
「.....何故だろうな。分からん.....だが、一言、言えるのは.....そうだな.....もう良いんじゃ無いかと思ってな」
親父はその様に一言、話した。
そして静かに立ち上がって。
餡の仕込み作業に戻ろうとした。
その背中を見て。
俺は複雑な顔付きになってから。
真剣な顔付きになり。
握り拳を作った。
「.....親父、ごめんな。最後に一つ良いか」
「.....何だ」
「.....親父は.....俺を.....とっても大切に思っているんだな」
そこだけは俺は笑みを浮かべて。
そして階段を登って行く。
何時も固いから。
親父が俺を大切に思っている。
その様な言葉を出すとは思わなかったのだ。
俺は少しだけ和かに話す。
「.....当たり前だ。お前は俺にとっての最後の宝物だ」
その様な、敢えて、俺に聞こえる様に大きくした様な声が。
背後から聞こえて来た。
俺は少しだけ笑んで。
そして窓の光を浴びながら。
歩いた。
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