第27話
さて、どうするべきか。
余りにも捻れた状況である。
と言うのも、この俺に婚約者が判明して。
意味不明だが、山崎は俺に迫り来るし。
更には俺に思いっきりに告白した桜が激昂しているし。
何なの?俺って女難が酷いの?
俺、不幸な感じがするよ?
「.....って言うか!!!!!」
男子トイレで。
俺は頭を盛大に掻いた。
髪の毛がグシャグシャになるが、そんな事は知った事では無い。
マジで何やってんだ当時の俺はァ!!!!!
若気の至りとは言え、酷い!
それに全く記憶にねぇってのが酷い!
婚約指輪だと!?
周り的には半殺しだよ!
絶対にヤバイ!
あかん。
「.....これはいかん。状況を.....何とかしないと.....社会的に俺がヤバイ事になる.....」
青ざめながら頭を抱える、俺。
そしてハァ。
と盛大にため息を吐いた。
そして天井を静かに仰いで。
でも、と呟く。
「.....状況はこんなんでもボッチで冴えない俺にこんなに人が寄って来てくれるのは.....母さんのお陰なんだろうな。きっと」
何だろう。
そう考えたらちょっとだけ力が出て来た。
母さんがきっと、寂しくない様にって。
俺に人を近づけさせてくれているんだろうな。
有難くて、感謝したい所だ。
しかし。
「.....だが、ややこしいことに変わりは無いな。どうにかしないと.....」
その様に思い。
俺はうーむ。
と首を捻って悩んだ。
すると。
キーンコーンカーンコーン
「.....ヤベェ!チャイムが.....」
チャイムが鳴った。
俺は焦ろうとする、のだが。
全くと言える程にケツが上がらない。
何だか複雑に感じて。
だが、このままでは何も変わらない。
俺はその様に思い。
意を決して、立ち上がって、個室を出た。
そして目の前を見て。
俺は見開いた。
「.....うわぁ!!!!!!!!!?」
「.....カイちゃん。チャイム.....鳴ったよ?」
そこに柔和に微笑む、清楚な眼鏡少女が立っていた。
早坂じゃないか!
ってか、ここは男子トイレの中なんですけど!
このアホは何をやっているのだ!!!!!
「.....あの、早坂さん?ここ男子トイレってか、チャイム鳴ったぞ!?」
「.....あ.....」
まさか気付いてなかったのか。
少しだけ慌てる素振りを見せる、早坂。
俺は頭を抱えてため息を吐く。
もういいや、取り敢えず戻らないといけない。
俺はその様に思い、早坂の手を握る。
「.....取り敢えず、もど.....!?」
と思ったが。
俺はその人影に青ざめて、大慌てで。
早坂を個室に押し入れた。
俺も同時に、その個室に入る。
そして個室の鍵を掛けた。
何があったのか。
それは。
ガチャッ
「.....生徒は.....居ないか.....」
野太い声を発するのは。
体育教師で、柔道家の山下宗五郎(54)。
柔道、剣道もやっている鬼教師と呼ばれ。
色恋に厳しい、そいつが。
どうやら、生徒がサボってないか学校内を見回っている様だった。
そんな鬼教師を恐れてうっかり、早坂と共に個室に閉じこもってしまい。
ってか、何てこったい。
早坂が居る事がマズいと思っての行動が。
更に酷い方面へ向かってしまった。
バレたら俺が多分、山下にぶっ殺されるぞコレ。
柔道技でも食らって。
「.....大胆だね。カイちゃん。そんなカイちゃんも嫌いじゃないけど」
呑気か!
その様に思いながら。
俺は真っ赤っかになる。
早坂の息が、胸が。
俺の胸に当たっている。
いかん、これ。
それに、滅茶苦茶に良い香りがする。
女の子に許された、特有の甘い香りだ。
恐らく、シャンプーにもボディソープにも拘りが有ると思わ.....って。
一体、俺は何を考えてんだ!
いかん。
落ち着け、落ち着くんだ、カイ。
煩悩を静めろ。
これはイカンぞ。
「.....違うからな。早坂。そんな意味じゃないからな。この場所に居るのは」
「.....良いんだよ。私、準備は出来ているから」
コイツは何を言っている。
その様に話してから、早坂は上着を、服を脱ごうとする。
眼鏡の美少女はその様に.....オイ!
何か誤解している!
俺は早坂の服を脱ぐ行為を赤面で無理やり止める。
そして口元に指を立てて。
首を大慌てで振った。
「.....早坂。今はヤバイ状況下にあるんだ。俺が!」
「.....うん。そうだね。ヤバイね。男の子ってこういうのが興奮するの?」
違うよー。
俺は涙目でその様に思いながら。
違うと首を振って、余所見しながら狭い個室の中で。
ドタバタと抵抗する。
表も裏も地獄かよ。
マジでどうする。
「.....む?何故、この場所だけ個室が閉まっているのだ」
山下はその様に声を挙げやがった。
ヤバイ!
絶対にヤバイ!
山下の野郎がこの個室に勘づきやがった。
俺は青ざめる。
そして口を抑えて、早坂の口も抑えて。
人差し指を口元に立てる。
心臓がバクバクだ。
ヤバイ。
「.....開かんな。ふむ.....」
絶対にあかん!
ヤバイヤバイヤバイ!!!!!
鍵に手を掛けやがった!
絶対にマズい!
ガチャッ
(ちょ、まっー!?)
ガチャッと。
その様な音がした。
戸が思いっきりに開く音だ。
俺は振り向いて、悲鳴に近い声を挙げようとする。
だが、俺達の個室の扉は空いてなかった。
どういう事だ?
「すいません!山下先生。お電話です!」
「うむ?.....そうか」
この声は別の男の教師。
お陰で、鍵を触るのを止めた様である。
まさかの展開に、俺は冷や汗を流して心から安堵の息を吐いて。
そして早坂を見た。
早坂は俺の手を赤くなりながら見ていた。
取り敢えずは安心だ。
いや、良かった。
マジで。
「.....カイちゃん?」
「.....取り敢えず、嵐は去った.....」
赤くなっている俺達は。
ガチャッと扉が開く音を確認して。
見つめてくる早坂に答えて。
俺はやれやれという感じで盛大にため息を吐いた。
マジで人として死ぬかと思ったぞ。
二度とこの様な思いはゴメンである。
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