第16話

それぞれ、様々な事を書き記した紙を。

側にあった、ティッシュの空き箱に入れた。

そしてよく振って。

山崎と桜達の前に差し出した。


「.....これで文句は無い筈だ」


「「ぶー」」


山崎と桜の額に、横向きの8のマークでも出そうな感じであった。

それもまた可愛らしいっちゃ可愛いのだが。

これも平等にする為だからな。

俺ばっかり指名されてはかなわん。

恥ずかしくて死んでしまう。

思っていると、桜が不満な感じで。

爪楊枝クジを差し出した。


「.....まぁ、仕方が無いです.....クジを引いて下さい」


山崎も多少、不満げな感じで。

クジを引いた。

そのクジの当たり。

それは俺だった。

つまり、俺が王様である。

俺はため息を盛大に吐いた。

全員は俺を見ながら、一応やりますか。

的な感じで頷いた。


「「「王様だーれだ!」」」


と言い放つ。

俺は頭を掻きながら、ティッシュの空き箱を見た。

そしてまた、息を吐く。


「.....」


俺は訝しげな目をして。

ティッシュの空き箱に手を突っ込んで、紙を取った。

そして、開く。

恐らく、桜以外の誰かだと思う。

俺の文字でも無い。

なんやこれ。


(お姫様抱っこを指名する)


誰だよこれ書いた奴。

俺は眉を顰める。

そして周りを見渡す。

栞がクククと笑っていた。

お前かよ。

かなり楽しんでるな。


「お姫様抱っこね.....」


小さく、呟いた俺。

うーむ。

そう言えば、番号を決めても良かったかもな。

例えば、俺が1番で。

桜が2番とかみたいな感じで。

後で考えるか?

しかしお姫様抱っこか。


「.....じゃあ、桜で」


「.....?」


桜は驚いて、目をパチクリした。

俺は頷く。

そして、桜の元へ向かう。

桜は胸に手を当てて、俺を見てくる。


「.....さっきのお礼も兼ねて、桜。お前をお姫様抱っこしてやる」


「.....え、嘘。え、え!?へあ!?」


俺は桜の足、背中に手を置いて。

そして抱え上げて、お姫様抱っこした。

まさかの展開に、桜は。

ボッと赤面した。

混乱しているのか、目をぐるぐる回転させていた。

いやいや、そんな反応されるとめちゃ小っ恥ずかしいんだけど。

俺だって恥ずかしながらやってんだから。

っていうか。


「.....重い.....!!!!!」


「ちょ!は、はぁ!?兄貴!今なんて言った!?女の子に重いって言った!?」


桜がメチャメチャに怒った。

違うよ。

俺自身の運動不足で重いんだよ。

無駄に身体が否定している。

俺は汗をかきながら、桜を見た。


「.....桜。違うからな。俺の運動不足だ」


「.....へー!!!!!ふーん!!!!!へー!!!!!兄貴の馬鹿!!!!!」


降ろすと、プンスカ怒って。

そっぽを向いて、真っ赤になる、桜。

いや、そんなに怒るなよ。

俺はその様に思いながらため息を吐いた。

そんな桜の代わりにクジを集めて。

俺の手から全員が再び引く。


「「「王様だーれだ!」」」


「.....あ、私ですね」


当たったのは栞だった。

本当にランダムだな。

俺はその様に思う。

栞は、ほぼ真顔のまま。

小箱から紙を引く。

そして、広げ、閉じた。

栞は納得した様に、頷く。


「.....?」


「.....」


栞は立ち上がる。

そして、俺の横に、ソファに腰掛けた。

俺を見上げる様な格好だ。

そんな栞に俺は聞く。


「.....どうした?栞」


「.....王様の命令ですね。私の頭を撫でて下さい」


「.....マジで?」


俺は驚愕する。

え、仮にも美少女の頭を撫でるの?

ってか、さっきから俺ばかりに集中してね!?

クジを変えてもこれかよ!

俺は額に手を添える。

すると、栞が話してきた。


「.....ちょっと恥ずかしいので、早く、です」


山崎と桜が。

羨ましそうに見てくる。

俺はそっと、栞の頭に手を置く。

すると、お日様の香りが、ふわっと俺の鼻腔をくすぐった。

コイツどんなシャンプー使ってんだ!?


「ん.....うん.....」


「..........」


俺のされるがままになっている、栞は。

恥ずかしいのか変な声を上げる。

そして、赤面した。

赤面で栞の気持ち良さそうな顔を見つめる、俺。

これについて、山崎と。

桜が衝撃を受ける。

まるで、何かに気が付いた様に。

俺はその様子にクエスチョンマークを浮かべつつ。

栞を見た。

頭を撫で続ける。

栞は小っ恥ずかしいのか、モジモジしていた。


「.....も.....もう良いです.....」


そして、その様に話して。

栞はプイッと。

そっぽを見て、また眼鏡を上げて真顔で腰掛けた。

って言うか、コイツの感情の表し方って。

その様に俺は赤面で思いながら。

いかんいかんと、クジをかき集める。

そして桜に渡す。

カチンコチンになっている、桜に。

どうしたよ。


「.....桜?」


「.....」


「.....山崎?」


「.....」


何なんだよコイツら。

俺はその様に思いながら。

クエスチョンマークを浮かべたまま、話す。


「まだ続けるか?」


固まったままの奴らは。

俺の言葉に、正気に戻った。


「.....う.....うん.....」


「.....そうだね」


「.....?」


うん、駄目だ。

マジで意味が分からん。

俺はその様に思いながら。

続行した。



「「「.....王様だーれだ」」」


「.....私だ.....」


桜か。

俺はその様に思い、桜を見た。

静かに小箱から紙を取り出す、桜。

そして、見た。

滅茶苦茶に赤面して、俺を見つめてくる。

へ?


「.....桜?」


「自分の好きなモノを告白.....って。兄貴.....」


ああ、それか。

それ俺が書いた.....って。

お前、まさかと思うが、勘違いしてないか?

好きな趣味ぞ?


「.....お前.....勘違いすんなよ?それは好きな趣味を告白するんだぞ?」


「.....そ、そうだよね.....うん。分かってる」


桜は頷いて、そして息を吸い込んで赤面のまま告白した。

和かに、一言で、だ。


「好きな趣味。それは.....兄貴の幸せを祈る事です」


俺はその言葉に。

見開いた。

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