第13話

「いやー。本当に奇遇だね!飯島!栞っち!桜!」


「.....汗ダクダクじゃねーか。大丈夫なんか?」


荷物をどっかり置く、山崎。

その様子に俺はコーラを飲みながら話した。

山崎はニコッと俺に笑んで。

汗を拭いながら水をガブ飲みして、胸元をパタパタした。

俺は赤面して目を逸らす。


「山崎さん.....買い物中だったんじゃ.....」


「ん?買い物終わったから来たんだよ?サイゼに来たかったから」


その様に会話していると。

女性の店員が俺達の元にやって来た。

そんな女性の店員に指を立てて注文をする、山崎。

その間に桜を見た。

桜はパフェを食べながら、満足そうな顔を浮かべている。

うーむ、美味しいのか?

俺はその様に思いながら、桜に聞いた。


「なぁ。桜。美味そうだからそれ、一口くれないか?」


「.....え、え!?.....い.....良いよ.....?」


突然の事に、見開いて赤くなる桜。

俺は急激に赤くなる、その様子に何だか恥ずかしくなった。

要求しといて何だが。

すると、桜が。


「うん。じゃあ、あーんして。口に入れてあげる」


「.....おお。マジか.....」


(ピクッ)


何だか空気が止まった様な感じがしたが気のせいか?

俺は山崎を見る。

山崎は俺に向いて、羨ましそうな顔をしていた。

何だコイツ。

パフェが欲しいのか?


「.....お前も欲しいの?」


「.....ち.....違うし!.....バカッ!」


「???」


何だよコイツ。

俺の言葉にそっぽを向きやがった。

何だか俺はよく分からず。

真正面を向く。


「.....栞?」


「.....何でしょうか」


「.....何で頬をにやけさせている?」


その様に、俺が聞くと。

栞は少しだけ苦笑しながら答えた。

首を振りながら、違う違う、絶対にと言い聞かせても居る。


「.....別に.....面白い.....と言うか.....違うと思いますけど.....」


「.....???」


何なんだよコイツら。

マジで意味が分からん。

と、思っていると、桜が衝撃を受けた様に。

山崎をライバル視する様な目付きになっていた。

何コレ?


「.....おい。桜。何が起こっている.....」


「.....ハァ.....ちょっと考えさせて。兄貴」


「は、はい」


何だこの状況は。

俺はまるで、汚泥の中を彷徨っている様な。

重さを感じた。


「.....」


「.....」


「.....あー」


成る程な、分かったぞ。

もしかしてお腹が空いているんだな?

特に、山崎。

俺は納得して、メニュー表を取る。


「.....奢るから、何か食べろよ。お前ら。腹の虫が出て来てるぞ.....」


「「違うから」」


「は、はい」


ヤベェ。

怖いよー。

山崎さんも桜さんも。

すると、桜が話を切り出す。


「.....山崎先輩、今日からはライバル同士だと思います」


「.....え?な.....何のこと?」


山崎は熟したトマトの様に。

頬を赤くして動揺する。

桜は良いライバル(?)が出来たと言わんばかりに。

ニコッと笑む。


「.....いえ、こちらの話です」


「.....あ!.....成る程。.....桜.....貴方も.....ふーん.....」


ゴゴゴと炎が上がる。

2人は何かを賭けている様だが。

意味不明。


「?????」


何が起こっているのか。

さっぱり分からない。

俺は盛大にため息を吐いた。



暫くして、山崎が注文したものが来た。

パンケーキだ。

俺は頬杖を付いてパンケーキを見ながら。

桜に聞く。


「.....なぁ?なんの勝負を視点だ?教えてくれないか?」


「だーめ。女の子の秘密を追求する男は嫌われるよ。兄貴」


「.....ハァ.....」


さっぱり。

俺はその様に困惑して思いながら、前を見る。

栞はスマホを観ていた。

やがて、それを差し出してくる。


「.....どうした。栞」


「.....忘れてましたけど、ラ●ン交換しましょう」


「ああ。成る程な。するか」


そしてフルフル機能で。

アドレスを交換した。

すると、桜が。


「.....ムッ.....栞さん。兄貴にメッセージを送るのは良いですけど、お勉強の邪魔とかしないで下さいね!」


その言葉に、栞は頷く。

俺は桜に向いた。


「.....何だよ。桜、お前.....。なんか今日、おかしくね?」


「.....おかしくないもん」


パフェのシリアルを食べながら。

プイッとそっぽを向く、桜。

俺は、まぁ良いかと。

天井を見る。

すると。


「飯島」


「.....あん?どうした。山崎」


「.....あーんして!」


褐色の細い腕を動かしながら。

左手を皿の様にして。

右手でパンケーキを一口、フォークに刺して持ってきている。

なん、ブッ。

この野郎は!?

何を考えてやがる!?

俺にあーんとか!


「.....ちょ!山崎先輩!」


「.....こういうのは譲り合いだよ。桜」


「.....そ、そうですけど.....」


涙目で震えながら俺を見てくる、桜。

俺はその様子を見て。

ため息を吐いた。


「.....すまん。山崎。俺はその.....」


「.....ダメ?」


ああ、ちっくしょう。

可愛いな、オイ。

義妹以外にあーんされるのは初めてだし。

受け取りてぇけど!

義妹が涙目だし!


「.....山崎。また今度な」


「.....うーん。そっか。まぁ、無理はしないよ。でもね.....」


桜を見ながら。

山崎は何かを決心した様な顔で。

俺に向いてくる。


「.....覚悟してね。今日から私、変わるから!」


「.....は?あ、はぁ.....?」


「.....」


桜は口角を上げて。

そして、山崎と握手した。

俺は目をパチクリして。

首を傾げる。


「.....うーむ。分からん.....」


その様な、一言を呟く。

真正面の栞は何かを既に感じ取っている。

その様に、気が付いた。

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