第3話 クラス委員、山崎ゆう
その件故か。
結局、桜とは全く口が利けなかった。
一緒に出ようとしたが、朝食も全部済ませ、先にさっさと行ってしまい。
俺は息を吐く事しか出来なかった。
2月の寒い中、俺は1人、コートを羽織って。
そして白い息を吐きながら、歩いて行く。
サクサクと音が鳴る。
どうやら霜が降りている様で。
「.....ハァハァ.....」
1キロ程ある俺達の高校にとても涼しい風が吹く中。
河川敷を歩いて、川沿いを歩いて、何時もの若干寂れている商店街を抜けて。
そして辿り着いた。
「.....ハァ.....」
県内唯一の県立志田高校。
俺の高校だ。
広々とした構内に、コンクリートや鉄筋で出来た建物。
大学をイメージした様な高校だ。
どっかの有名な建築家が建設したとか聞くが。
まぁ、誰かは知らんが。
「.....アイツはもう来てんのかね.....」
さっさと出ていったアイツ。
俺は高校を見上げてその様に呟くなり。
広々の、生徒が吸い込まれる様に登校している構内に。
俺もブラックホール的な奴に吸い込まれる様に歩いて行った。
☆
「これが片割れ時〜」
次の時間で昼休みだな。
とにかく腹減ってしまった。
俺はノートを取る手だけ動かしながら。
ボーッとして考えていた。
何時もの弁当は出て来ないだろうし。
売店で飯食うか。
考えていた、その時だ。
ベシッ
「イテッ」
周りが俺をみてくる。
俺はその周りに配慮しながら足元を見る。
それは消しゴムだった。
俺は直ぐに辺りを見渡す。
それは、後ろの方だ。
女の子。
(ボーッとすんな)
その様に落書きされたノートを広げる、1人の女子。
ツインテールじゃないが、頭の一部の黒い髪の毛を結ってリボンを付け下に降ろしている。
そして、褐色の肌にあるピンク色の口をへの字にして。
小顔に、大きな目、細い眉毛、そこそこに整ったEラインを見せる、山崎ゆう。
多分、コンタクトレンズでもしているのだろうな。
褐色なのはスイミングで日焼けしているスポーツ女子だから。
そんな彼女と俺は、リア充×ボッチ、であまりにも対照的すぎる。
だが、山崎はクラス委員という事も有り、ボッチの俺を心配してよく関わってくる。
はっきり言って、ウザいぐらいに。
何で女子ってそういのが多いの?
困るんだけど。
「.....」
その事に俺は紙に文章を書いて。
それを消しゴムに入れて。
静かに投擲した。
効くぜこれは。
「.....ふぇ!?」
(ボーッとしてない。ってか、クラス委員にしては俺に関わりすぎだろ。山崎は俺の事が好きなんすか?)
その様に書いた紙を、投げ飛ばした。
ジョークで投げたんだけど。
そんな声を上げちまったら.....駄目でしょ。
「どうした山崎?」
「あ.....えっと.....何でもありません!」
石塚先生が教科書を持ったまま、反応する。
俺を赤面で睨みながら紙をグシャグシャにする、山崎。
何やねん一体。
そんな反応するとは思わなかったぞ。
☆
「飯島!何よあの紙!声を上げちゃったじゃない!」
「す.....すまん。そこまでとは思ってなかったもんで」
そんな、授業が終わってから。
俺は紙の件について問いただされていた。
柑橘系の女の子の香りを撒き散らしている様な山崎。
少しだけ俺は赤面する。
が、山崎の顔はまるで鬼の様だ。
そんな山崎と俺の様子にクラスメイトも何だ何だ、と見てきていた。
胃が痛いぞボッチには。
「とにかく!私は飯島には過保護と見られているみたいだけど!違うから!」
「はいはい。分かりました」
「えっと、本当に分かってるよね!?」
山崎はキッと俺を睨んでくる。
いやいや、分かったよ。
二度も言わせるな。
苦笑して思いつつ、教室の外を見ると人影があった。
此方を見てきている様な。
「.....?」
その人影は。
この教室を覗いたり、止めたり。
また覗いたり、止めたりしている。
桜であった。
何やってんだアイツは。
眉を顰めて思っていると。
背中に衝撃波が。
バシッ
「痛!?」
山崎に叩かれたのだ。
俺は涙目で驚愕して、山崎を見る。
その山崎は、俺に八重歯を見せてはにかんで居た。
「さっさと行きなさいよ。飯島。妹ちゃんが待ってるよ」
その言葉に俺はやれやれと言って、ため息を吐いた。
そして席を外れて、歩いて行く。
桜は俺の様子を確認するなり、顔を明るくして。
そしてムッとして、そっぽを向いた。
何やねん。
表情まで忙しい奴だな。
こいつ自身が自らやって来た癖に、と俺はその様に思いつつ、話した。
「どうしたんだ?桜」
まさか今の状態で弁当を持って来たとか?
それは無いだろうな。
じゃあ、何しに来たのだ。
「.....あと.....えっと.....その.....はいこれ!」
ツインテールからポニテに変化して、制服を若干着崩した感じの相変わらず可愛い状態の桜は頬を紅く染めてそっぽを向いたまま、何かを右手で差し出した。
握られていた物、それは青色の布包だ。
俺はその青色の布包をパチクリして見る。
四角いので、おそらくは弁当箱だが。
「.....作ってくれたのか?」
だが、これには桜は何も言わない。
俺は見開いて、青い布包を見る。
すると、桜はそっぽを向いたまま唾を飛ばす勢いで言葉を発した。
ガミガミ風である。
「.....兄貴に新作料理を味見してほしかっただけ!!!!!実験台だから!!!!!別に仲直りの証って事じゃ無いから!!!!!」
桜はその様に言い放ち、腕を組んで。
フンッと横を見てこちらをチラチラ見ながら、ソワソワする。
分かりやすいなぁ。
まぁ有り難く受け取るか。
俺は弁当を持ってから、桜に向いた。
「.....有難うな。結構、お前も忙しいのに、わざわざ朝から弁当作ってくれて。感謝しかないよ」
俺は桜の頭に手を乗せる。
そしてグシャグシャと笑みを浮かべて、撫でた。
これに対して、桜は大慌てで赤面で手を上げて反応した。
ジタバタする。
「ちょ!止めて!私は子供じゃないっ!」
「ははっ」
そして、俺は撫でるのを止める。
すると、桜は俺に頬を膨らませた感じを見せた。
フンッ!と声を出す。
そしてあっかんべーで有る。
コイツ。
「.....どうせ私は二の次だから!私は彼氏が居るから!兄貴なんて彼女が.....出来て破滅すれば良いんだもん!」
何やねん。
まだ怒ってんのかよ。
まぁ、でもそれはそうかな、からかい過ぎたもんな。
桜の様子にその様に思った。
俺は桜の言葉を取り入れて答える。
「ああ、そうですか。そうですね。俺は彼女作って破滅しますよ。ええ」
「.....え.....と.....あ.....」
そんな、と、あからさまにショックを受けて反応する桜。
言っている事と反応が違うじゃねーか。
本当にからかいやすいなコイツ。
おもしれぇ。
「.....冗談だよ。暫くは彼女なんか作れないよ。.....どうせ俺はボッチだから」
「.....ふ.....ふーん!別にどうでも良いけどね!!!!!私は彼氏が居るから!!!!!」
だが、嬉しそうである。
頬をまるでリスの様に膨らませて。
そっぽを向き続ける、桜。
本当に面倒臭いな。
って言うか。
教室から死ねという目線が感じられる。
「桜。行こうか」
「え、あ、うん」
そして俺達は歩いた。
取り敢えず、屋上にでも行こう。
あそこなら人は来ないだろうしな。
☆
屋上に着いた。
そこで俺は桜と共に飯を食う。
しかし、何だ。
本当に嬉しそうだなコイツの表情。
「.....兄貴」
「.....なんだ」
海苔弁当を食べながら。
その様に呟く。
すると、物凄い小さな声で何か聞こえた。
卵焼きを掴んだまま、震えるている。
赤面で、だ。
「.....アーン.....」
「.....あ?聞こえないぞ」
何を言ってんだよ。
そして突然何だ。
モニョモニョしてたら全く聞こえない。
俺はクエスチョンマークを浮かべながら、桜を見る。
すると、涙目と赤面でこっちを睨んできた。
いやいや、え?
「口開けってんのよ!!!!!」
「ぐお!!!!?」
無理矢理、箸で掴んでいた卵焼きを俺の口に突っ込まれた。
俺は箸が喉に打つかり、むせる。
そして涙目で桜に言った。
「何すんだ!!!!!」
「兄貴が口を開かないのが悪い!!!!!」
何を言ってんだコイツは!
理不尽すぎる。
俺はその様に思いながら。
ため息を吐いた。
「.....ってか、お前、彼氏居るんだろ?アーン、はマズイんじゃねーか?」
「.....うん?あ、えっと.....あ、うん!えっと.....ん!そうだ!私には彼氏が居るから!!!!!」
居ないのか居るのか。
まぁ、居ない事を証明しているが。
ってか、動揺し過ぎだ。
俺はその様に思いながら。
口角を上げた。
ってか、ん?
「.....ちょ。何?兄貴.....え?嘘.....」
俺は少し、眉根を寄せて。
顔を桜の顔に近づける。
そして俺は手を伸ばした。
桜は燃える様に赤面し始める。
そして慌てながら、震えるという、変な状態を見せながら。
覚悟を決めた様に、唇を差し出してきた。
ペシッ
俺は頭の上に有る、葉っぱを。
弾き飛ばした。
そして俺は、ふむ、と言う。
目をパチクリする、桜。
俺は葉っぱを拾って、桜に見せた。
「.....葉っぱが乗ってたぞ。ははっ。まるでナル●の変化の術みたい.....って」
そんな桜は。
ワナワナと何か震えていた。
そしてキッと俺を睨んで。
え、ちょ。
「.....バカァ!!!!!」
バシィッと。
一発、殴ってきた。
またかー!!!!?
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