第36話 2節 オリンポス惑星の住人(17)

アポロンに続いて、アルテミス、ヒロ、ミウ、ケンが小型宇宙船に乗り込んだ。


「アルテミスとミウは、その装置の前に座って。そしてヒロとケンはあの装置の前に座って」


アポロンの指示に従って、みんなが配置に着くと、宇宙船が上昇し始めた。


「あれっ、どうしてこんなに静かに上昇できるの?」

ヒロがアポロンに問いかける。


「エンジンを回して空気を噴射してるから、そんなに静かじゃないよ。ただ、ちょっと、重力の方向を操作してるからエンジンの音が小さいのかな」

アポロンが自慢気に答えた。


「アポロン、小惑星はいつオリンポス惑星に衝突するの?」

アルテミスが目の前の装置を操作しながら言った。


「一時間以内ってところだよ。早くしないと手遅れになるぞ」

アポロンは落ち着いているが、ミウはパニックになりそうだ。


「小惑星がこの星に衝突したら、生き物が絶滅しちゃうじゃない。どうして、そんなに落ち着いているの?」


「ミウ、慌てなくても大丈夫よ。こんなことは毎年のように起こっているから」

そう言って、アルテミスは操作している装置をミウに見せる。


「これは何を計算しているの?」

七つの衛星に関して、アルテミスが何を計算しているのか、ミウにはわからなかった。


「一番外側の衛星は、接近して来る小惑星より重いから、その重力で小惑星の進路を変えることができるのよ」


アルテミスが説明すると、アポロンが続ける。


「でも、小惑星は超高速で接近して来るから、外側の衛星が小惑星に長い間近づいているように、七つの衛星を操作する必要があるんだ。そのために、小型宇宙船の中から衛星を観測して、リアルタイムで計算するんだよ」


「あっ、こっちの装置に何か映っているよ、アポロン」

ヒロが画面に映る微小な点に気づいた。


「すっげえ小さい点が動いてるぞ。小惑星じゃないか?」

ヒロと同じ画面を覗き込んで、ケンが言った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る