第37話 2節 オリンポス惑星の住人(18)

「ヒロ、その画面の矢印を小惑星の位置に重ねてくれ」

アポロンが、ヒロに向かって言った。


「了解、小惑星の位置に重ねたよ」

ヒロが矢印を素早く動かして、アポロンに答えた。


しかし、画面の中の小惑星の横に光る点が突如現れた。


「なんだあ、この光る点は?ああーっ、画面が乱れたー」

画面を凝視していたケンが大声をあげた。


「どうしたの?ケン」

「ヒロ、何が見えるんだい?」

アルテミスとアポロンが同時に立ち上がって、ヒロに近づいた。


ヒロとケンは宇宙船の窓の外に視線を移した。


「外を見ろよ、アポロン。光る点が真っ赤に燃えて大きくなっていくよ」

ヒロがそう言うと、アポロンは何かに気づいた。


「あっ、あの光る点は、この宇宙の外側にある別の宇宙の先端じゃないか?この宇宙も別の宇宙も11次元時空の中にあるけど、別の宇宙がこの宇宙に侵入して来るなんて・・・」


アポロンをさえぎって、ミウが叫ぶ。

「あーっ、小惑星が光る点にぶつかるーっ」


強烈なエネルギーを持つ光る点は、巨大化する前に小惑星と衝突した。


その瞬間、小惑星は急膨張して、粉々に分裂した。

分裂した小惑星は超高温の真っ赤な破片となって、飛び散って行った。


「あっ、真っ赤な破片が目の前を飛んで行く」

ヒロは、いくつもの破片が七つの衛星に衝突するのを見た。


小惑星と衝突した光る点は、エネルギーを失って消えそうになっている。


「おーっ、小惑星と激突したから、光る点のエネルギーはなくなったのか?」

ケンがそう言うと同時に、アルテミスが叫ぶ。


「みんな伏せてー!何かにしっかりつかまって!」


光る点から放出された強烈なエネルギーによって、みんなが乗った宇宙船が吹き飛ばされた。


「あっ手が滑った。あーっ危ない!」

アポロンが、宇宙船の中を回転しながら、端まで飛ばされた。


「アポロン、大丈夫か?」

ヒロがアポロンを助けようとした瞬間、宇宙船が激しくバウンドした。


宇宙船は、ヘパイストス研究所から少し離れた林の中に落ちた。

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