第35話 2節 オリンポス惑星の住人(16)
「我々の星には、多数派の四本腕二本足人種、少数派の二本腕四本足人種がいて、二本腕二本足人種が奴隷だった時代があった。数千年前の放射能汚染によって、すべての人種に奇形や変化が生じたが、荒廃した環境に最も良く適応できたのは、奴隷だった二本腕二本足人種だった」
アポロンは、順にプロメトス、アルテミス、ヒロを見た。
「富や権力を失った人種は退化し、失うものがなかった人種は進化した、ということか・・・」
ヒロの後ろに立っているケンがつぶやいた。
「そうかもしれない。とにかく、進化した人種は、人種によらず能力の高い人材を集めて政府を造った。その政府は、この惑星唯一の政府であり、国ごとの政府ではない。いや、進化した人種は国というものを造らなかったんだ」
アポロンは、そう言ってアルテミスに視線を向けた。
「過去の失敗から多くのことを学んだから、大多数の人々は新政府の方針に賛同したの。反対派もいたけど、暴力や戦争という手段に訴えることはなかったらしいわ」
オリンポス国の歴史として、アルテミスが説明すると、アポロンが続ける。
「新しい政府のもとで、科学技術と医療技術は大惨事以前の水準を超えて発展した。交通機関には効率性と安全性が求められ、自動運転を基本にした交通システムが開発された。それが発展して現在の交通システムになったんだ。」
「やっぱりオリンポス国の文明は地球より進んでいるなあ」
ヒロとロンが同時に声をあげた。
その時、ヘパイストス研究所内に警報が響き渡った。
「あっ、小惑星が接近しているという警報だ。出動するよ、アルテミス!」
アポロンが部屋の外に向かって駆け出すと、アルテミスもその後に続きながらヒロを誘った。
「ヒロも一緒に行こう!小惑星がオリンポス惑星に衝突しないようにするのよ」
「わかった。どうすればいいか教えて!」
ヒロがアルテミスを追いかけると、ケンとミウも後に続く。
「ヒロ、俺たちも手伝うよ」
アポロンが研究所の廊下を走って行った先には、小型の宇宙船があった。
「これに乗って7つの衛星を操作するんだ。一番外側の衛星の重力で、接近する小惑星の進路を変えるのさ」
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