第17話 1節 アトランティスの最期(16)

しかし、岸を離れたのが遅かった数隻すうせきの船は、大津波を乗り越えられず転覆てんぷくしてしまった。


「おーい、助けてくれー」

転覆した船から海に落ちた数百人の人たちが、もがきながら必死に叫んでいる。


「みんな、つむじ風の術を使って、助けに行こう」

ヒロとケンがミウたちの船に向かって叫ぶと、ミウ、サーヤ、マリ、ロンも、海に落ちた人たちを救いに行った。


「もう百人以上、船に運んだよね」

ロンがマリに話しかけると、マリが疲れた表情を見せる。


「わたしはつむじ風の術が得意じゃないから、もうふらふらよ。でも、まだ助けに行かなくちゃ」

マリは、海面から助けを求めている人の手をつかんだが、自分も海に落ちてしまった。


「あっ、だいじょうぶか、マリ」

とっさにロンが海に飛び込んで、マリを助けようとする。


ロンがマリを抱き上げて、海面に頭を出した時に、後ろから漂流物がロンの頭に激突した。


「ううっ、」

低い声でうめいたロンの手から力が抜けていく。


マリとロンの間に漂流物が割り込み、ロンの体は津波に押し流されて、マリから離れて行った。


「ローン、しっかりしてえー」

マリが懸命けんめいに叫んだが、ロンは気を失ったまま、津波に飲まれて見えなくなった。


「マリ、だいじょうぶ?」

海に落ちた人たちを救助していたミウとサーヤが、マリの上に飛んで来た。


「ああ、ロンが大ケガしちゃったあ。あっちに流されて見えなくなっちゃったあ」

マリは泣きながら、ロンが押し流されて行った方角を指さした。


「しっかりしろ、マリ。おーい、ヒロ、千里眼でロンをさがしてくれよーっ」

マリの近くに飛んできたケンが叫ぶと、ヒロが高く飛び上がった。


「ケン、ずっと向こうの転覆船の裏側にロンが見えるぞ」

そう言うと、ヒロは転覆船に向かって飛び出した。


「ロン、しっかりしろっ」

ロンを見つけたヒロとケンが、ロンの体を抱き上げて大型船に運んだ。

ロンは後頭部から血を流したまま気を失っている。


「ねえサーヤ、ロンを助けて」

マリは涙で顔をぐちゃぐちゃにらしている。


「きっと、サーヤが助けてくれるよ。落ち着いて、マリ」

ミウがマリの顔や体をいている。

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