第16話 1節 アトランティスの最期(15)

「みなさーん、急いで船に乗ってくださーい」

ヒロとケンが大声で人々を急がせていると、先に沖に出た船からさけび声が聞こえてきた。


「大津波が見えるぞー。早く沖合に出て、東の方に向かえー」

サーヤたちは、ディプレ王が乗った大型船に乗り込んだ。


「あの大きな動物は何だろう」

「あれは象っていう動物だよ」

アトランティスの人々が、ハンゾウを見ながらひそひそと話している。


すぐに大型船は岸を離れたが、大津波がおそいかかる前に沖合に出ることができるのか。


不安になったヒロとケンは、つむじ風の術を使い高く飛び上がって津波の様子を見る。


「うわー、でっかい津波がすぐそこまで来てるぞ」

ケンが叫ぶと同時に、ヒロが津波に向かって飛んで行く。


「神殿が大きな津波に飲み込まれてしまうぞ、ケン」


「津波に強烈な地龍をぶつけて、神殿の中にいる人たちを守ろうぜ」

ケンが、さらに高く飛び上がった。


「ケン、強烈な地龍をぶつけたら、二つに割れた津波がもっと大きくなって、たくさんの船に襲いかかるぞ」


まだ沖合に出ていない船が多いことをヒロが注意すると、ケンは神殿を見つめて言った。

「じゃあ、神殿の中にいる人たちを見捨てろ、って言うのか」


「そうじゃない。神殿の人たちも、沖合に出ていない船も、どちらも助ける方法を考えるんだよ」

そう言うヒロも、どうしたら良いのかわからない。


「そうか、神殿のとびら頑丈がんじょうだから、津波が押し寄せても中に水が入ることはないんだ」


ケンの言葉にヒロが反応する。

「そうだね、弱い地龍を津波にぶつけて、大津波が神殿を破壊しないようにすれば良いんだ」


「よーし、わかった」

高く飛び上がったままのケンが、大津波に向かって弱い地龍を放った。


すると、神殿に向かっている大津波の真ん中が低くなった。

それでも津波は神殿の丘をゆっくりと登って行き、海面の上に見えるのは神殿の屋根だけになった。


一方、地龍によって二つに割れた大津波は、沖合に出ているたくさんの船に襲いかかった。

しかし、ディプレ王やミウたちは、大型船の上から大津波の変化を見ていたので、船の向きを変えるよう全ての船に伝えた。


「船の向きを変えたら、全員船にしがみついて津波を乗り越えるぞー」

ほとんどの船は、間一髪かんいっぱつ、大津波に飲み込まれずに助かった。

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