第10話 1節 アトランティスの最期(9)

ジリュウの中で二人の話を聞いていたミウが、ヒロに問いかける。


影宇宙かげうちゅうは、縦横高さの3次元空間と1次元時間の合計4次元時空だけど、影宇宙の中で上方向に上昇すると我々の宇宙の過去に行くことができる。つまり、影宇宙の高さ方向と我々の宇宙の時間方向が一致しているということだよね?」


「うん、我々の宇宙から影宇宙に移って、その中で上昇した後で我々の宇宙に戻ったら、こちらの過去にさかのぼることができたね。一万一千年前の過去に行って、ブラフマーさんの時代の人達に会ったり、超古代都市も見たりしたね」

ヒロがなつかしそうに答えた。


「でも、影宇宙の高さ方向とこちらの宇宙の時間方向が一致してるのは、なぜなの?」


ミウと同じジリュウの中にいるマリが素朴そぼくな疑問を口にすると、得意げにロンが話し始める。


「この宇宙は、十一次元時空の中で四次元時空の宇宙になった。一次元の時間の流れと三次元の広大な空間のほかの七次元はこの宇宙の中では広がりを持たないんだ」


「十一次元って想像できないけど、タカハシ先生から聞いたことだろう?」

ケンがひやかすと、ロンはケンを無視してマリに話しかける。


「マリ、少し難しいけど我慢がまんして聞いてね・・・。この宇宙は、時間と空間の区別もないところで、最小単位の小さな宇宙として生まれたらしい。その直後に宇宙は急激に膨張ぼうちょうして、真空しんくう相転移そうてんいを起こした。三次元空間として急激に膨張した宇宙は、真空の相転移そうてんいを三回起こした。三回目の相転移で、広がりを持たない七次元のうちの一つが割れて宇宙が二つになった。その二つが我々の宇宙と影宇宙だ」


「うーん、難しすぎてロンの声が子守唄に聞こえるよ」

マリが眠そうに言うと、ロンがあわてて説明を続ける。


「もう少し我慢してね、マリ・・・。二つに割れた後、この宇宙と影宇宙は別々の三次元宇宙として進化したんだ。その進化の方向が、影宇宙の高さ方向とこの宇宙の時間方向が一致するような方向だったんだ」


「ロン、もうマリは眠っちゃったよ。目に見えないものを無理やり想像すると、私も眠くなるよ」

ミウが笑いながら、ロンの話にブレーキをかけた。


「父さんなら、もっとわかりやすく教えてくれると思うけど、サーヤ、父さんと話ができる?」

タリュウの中にいるヒロが、シリュウの中のサーヤに声をかけた。

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