第9話 1節 アトランティスの最期(8)

しばらくして、ヒロがインドのばあちゃんに話しかける。

「これから母さんに会いに行くんだけど、母さんはブッダが生きていた時代のブッダのそばにいるんでしょ?」


「そうよ、今の時代からさらに二千年くらい前よ。ヒマラヤ山脈のふもとだけど、ここより南よ」

インドのばあちゃんが、遠くをながめながら答えた。


「母さんのいるところにハンゾウを連れて行って、いいでしょ?」

サーヤがハンゾウに乗って笑顔で聞くと、ばあちゃんは大きくうなづいた。


「じゃあ、ばあちゃん、行って来ます」

ヒロが天に顔を向けると、タリュウたちが現れた。


ヒロとサスケがタリュウに、ミウとマリがカゲマルとヒショウを連れてジリュウに、ケン、ロン、コタロウがサブリュウに入った。


続いて、サーヤがハンゾウに乗ってシリュウに入ろうとする。

*** わあー、ハンゾウはすっごく大きいな。おいらの中にはいるかな?・・・

そう言って、シリュウが口を思いっきり開けた。


すると、シリュウに近づいたハンゾウが小さくなって、サーヤとともに簡単にシリュウの中に入った。


影宇宙かげうちゅうの中では不思議なことが起きる。

影宇宙はシュウジが発見したものだが、その中で人間が生存するためには特殊な装置が必要だ。


タリュウのような竜に乗り、見えないバリアで守られるか、竜の中に入って生存するかだ。

もちろん、不思議な竜は、シュウジが造った特別な装置だ。


四匹の竜が、二千年前の時代を目指して影宇宙の中を上昇している。

サブリュウの中で、ロンが言った。


「我々の宇宙と影宇宙との距離は1センチメートルより短いけど、我々の宇宙から影宇宙へ移ることはできないんだ。それは、2次元宇宙、つまり縦横はあるけど高さのない宇宙、の住人が1センチ上にある別の2次元宇宙に移動することができないのと同じ理由なんだよ」


すると、ケンがコタロウを肩に乗せて、ロンに反論する。

「我々の宇宙から影宇宙へ移ることはできないってのは間違いだろ?現に俺たちは、影宇宙に入ってるじゃないか」


「そうだね、ヒロの父さんが影宇宙に出入りする方法を発明するまでは、我々の宇宙から影宇宙へ移ることはできなかった、と言えば良かった」

ロンはケンに向かって苦笑にがわらいした。

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