第11話 タロウとハナコ
「にゃ!お前!!!」
祝福を受けたおれの力量に悪魔が気づく。
まぁ訳あっておれの力は34止まりだが。
十分射程圏内。
!
パコーン
悪魔の脳天をアリアのフライパンがぶち抜いた。
衝撃に悪魔の表情が歪む。
ドンッ
間髪入れずにデネブがタックルをかます。
体勢が崩れ、ふらつく悪魔の隙を見逃さない。
ザンッ
おれの斬撃が悪魔を捉える。
たまらず悪魔が距離をとった。
「シャァァァッ」
空からこちらを威嚇する。
手応えあり。
それよりどういうことだ?
アリアとデネブが相当強くなっている。
アリアが25、デネブが21だ。
「あれ?わたし達、強くなってるよね?」
「そうだか?いつもどおりだが。なぁカイト?」
「お前は本当に鈍感だな。まぁ無理もない。敵が敵だ。強さは実感しにくいだろう。」
「でもどうして?」
「おそらくおれのそばにいたから祝福の恩恵を受けたんだろう。神父の野郎に感謝しないとな。」
「!?神父さん!!!」
「待て!アリア!戦闘中だぞ!!!」
倒れる神父に近寄るアリアを止める。
一瞬の油断を見逃さず悪魔がアリアをめがけて猛スピードで襲いかかっていた。
大鎌がアリアをめがけて弧を描く。
アリアと悪魔の間に割って入ろうとするが…
ちくしょう。
間に合わないっ。
キュルッ
アリアが間一髪で鎌をかわす
にとどまらず、なんとフライパンを構えた。
パコーン
再び悪魔の顔面にいいのが入る。
思わぬ光景に戸惑いながらも隙だらけの悪魔に追撃を与える。
さらにデネブも勢い良く悪魔を押しつぶした。
「んにゃあ!」
もがく悪魔の手に容赦なくアリアがフライパンでぶっ叩き、大鎌を取り上げる。
「ま、まいったにゃ!!!」
デネブに押しつぶされ、アリアに大鎌を奪われた悪魔が両腕を上げ降参した。
「デネブ!アリア!油断するなよ。こいつが悪魔ってことを忘れるな。」
「わ、分かっただ。」
明らかに油断したデネブが気を引き締める。
「むー。」
アリアがフライパンを構える。
悪魔が少しでも動いたら高らかな音を鳴らす気だ。
「なんでもするから許してくれにゃ!仲間にもなるにゃ!」
「断る。それになるなら仲間ではなくしもべだ。お前はこのおれを殺しかけたからな。それにお前の主人は魔王だろう。いや元々は神だったはずだ。劣勢になれば簡単に寝返る奴は信用できん。お前は神の元へ送る。」
「そ、それだけは!それだけはやめてくれにゃ!」
「ふん。おいタロウ!こっちに来い!」
「…?」
「お前のことだ。」
少し離れたところで傍観する天使を呼ぶ。
「え?ぼく?」
「お前しかいないだろう。」
「ぼくはタロウじゃない!」
「お前はタロウだ。主人であるおれがつけた。」
「ぬぅ。」
天使、いやタロウがつかつかと不機嫌そうに歩み寄る。
「何!」
「お前が天界に帰るのはいつだ?」
「今日の23時59分59秒に帰るよ。」
「よし。その時にこの悪…ハナコを連れて行くんだ。」
「にゃ!?にゃあの名前はハナコかにゃ!?ダサいにゃ!」
「だ、ダサいだと?」
「ダサすぎるにゃ!!!」
アリアに視線を向ける。
察したアリアがフライパンを振りかぶる。
「にゃあぁぁぁ!待つにゃ!ダサくないにゃ!!」
悪魔の態度にアリアが手を止める。
「ふん。」
手を止める必要はないと思ったが、まぁいいだろう。
「…あのさぁ。こいつを連れて行くのはいいけど、ちゃんと弱らせてくれない?拘束するとかさ。こいつぼくより強いから…。」
天使の要望を聞き入れハナコを拘束した。
やがて時間になりタロウのそばに天界へと続くであろう光のゲートが出現した。
そしてタロウはハナコを連れ光の中に吸い込まれ初める。
「本当は君の言うことは聞きたくないんだけど。でも悪魔を神様の元に連れて行ったら、たぶん褒められるからするよ。あと嫌なことは断るからね。」
「残念だが、このおれの頼みなどもうない。だから今の頼みをありがたくこなすことだ。」
「そうだといいけど!」
「あとおれのことはご主人様と呼べ。」
「嫌だ。嫌なことは断る。」
タロウは生意気にも舌を出して光の中に消えた。
見るとハナコも消え際に同じように舌を出していた。
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