第8話 天使の仕事
宿に泊まれず、野宿するのにちょうどいいところを探す。
こんな街さっさと出て行きたいが、今日は疲れた。
それに夜は魔物が凶暴化するからな。
「疲れただなぁ。」
デネブは街の広場のベンチに座り込んでしまった。
仕方のないやつだ。
「この辺にするか。」
ここは広場の隅にあたり、人通りも多くない。
場所的にも悪くないからここに決める。
「ねぇ。カイト。」
アリアが小声で言う。
そしてこっそりと「後ろ」と合図する。
見ると、すぐ後ろに美しい男の子がいた。
その美しさには覚えがある。
「天界の者がおれに何の用だ。」
「え?なんでぼくが天使って分かるの?」
「お前らの美しさは人間のそれではない。」
「へー。」
感心したような表情で、こちらに舐めるような視線を当てる。
「天使!?」
「お、おらにはただの人間にしか見えないだが。」
アリアとデネブが驚く。
そんな二人を気にせず天使が続ける。
「神様がね、君に祝福を与えたがっているんだ。」
「勝手にくれればいい。」
「神様は地上に来れない。だから教会の神父さんを通してそれをしたいんだ。」
「ふん。ならばここに神父を連れてくるんだな。」
「えー。ぼくに言ってるの?嫌だよ。」
「ならとっとと帰れ。」
神の祝福を受けると潜在能力が大幅に引き出されるが、そんなの自分でもできる。時間はかかるがな。
「困ったな。ぼくは今日中に君が祝福を受けるように言われたのに。かといって君に従うのも
「カイト教会に行ってあげれば?」
困った様子の天使を気遣いアリアが提案する。
「行っても無駄だ。神に使える者は決まって無礼者だからな。」
おれの態度に天使は少し考え込んだ。
と思ったらニヤリと笑った。
「じゃあさ、ぼくは君にも使えることにするよ。」
「ほう。」
「でも条件がある。君が寿命以外で死ぬ際に、君の身体はぼくが貰う。もちろん君に使えるのはその時までだよ。」
「勝手にしろ。」
このおれが死ぬとでも思っているのか。
「約束だからね!」
そう言うと天使は走り去った。
しばらくするとさっきの天使が神父を連れてやってきた。
「本当に悪魔に憑かれた子がいるのか?」
「いいから来てよ!」
騒がしい。
せっかく寝れそうだったのに…。
こんな中でも寝ているデネブが羨ましい。
「ほら!あいつだよ!」
「ふむ。ただの子供じゃないか。忙しい中わざわざ来たというのに!」
神父が天使を叱る。
神父からしたら天使はただの男の子だ。
ここに呼ぶために嘘でもついたのだろう。
「あれ?神父さん。あいつ選別の剣を持っているよ!もしかしたら勇者なのかな!?」
天使の白々しい演技にため息が出る。
「あぁ。あれが噂の少年か。」
「勇者なら祝福を与えないと!!」
「ふむ。そう簡単に与えるものではないが、与えるべき者か確認してみるか。」
「ごほんっ」
神父がこちらの気をひくように咳払いをする。
「あなたが神に選ばれし者であるかを試したい。そうであるならぜひ祝福を与えたい。」
「ふん。お前が持っているのはおれを試す権限ではなく、祝福を与えるという権限だけだ。」
そう言うとみるみる神父の顔が赤くなり、感情に任せた暴言が口から出る。
内容はおれへのいやしめと自分の素晴らしさだ。自分には神の後ろ盾があるとでも思っているのだろう。それを使って、嫌なことは全力で否定する。
神の意志より自分の都合を優先させる予想通りの勘違い野郎だ。
だから言ったんだ。神に使える者は決まって無礼者だと。
神に使える者はいないからだ。神を使う者はいるがな。
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