第7話 背負っているもの

隣街に来た。

村から近く、何回か来たことがあるが悪くない街だ。

大通りが印象的で出店が立ち並ぶ。

ただ民度なのか早朝からにぎやかで、そこはいただけない。

そのうるささには鶏も呆れて黙るだろう。

かと思えば夜は静まり返るから不思議だ。

今は夕方で静かめなのがありがたい。

少し疲れているからな。


ここに来るまでに魔物や魔獣に襲われたが、なんなく来れたのはアリアとデネブの力が大きい。


アリアは予想以上に強い。

数字で表すと9だ。

デネブは5。おれは3になった。

一番遅れを取っているがすぐに追いつくだろう。


街を歩いていると冷ややかな視線を感じる。

時折、街の人逹にひそひそと陰口を言われた。

村から近いためか、噂が広がっているようだ。

もう慣れているから気にしないがな。


疲れた体を休めるためにまずは宿屋に向かう。



「泊められないとはどういうことだ!?」

おれは納得できず、怒りをあらわにする。

「はぁ。」

宿屋の店主にため息をつかれる。

「ここだけの話、あんたらを泊めたら、うちの評判が落ちるんだよ。本当のことは知らんが、あんた、ここらじゃ悪魔に憑かれた子ってもっぱらの噂だぜ。頼むからどこかへ行ってくれ。」

「勇者であるこのおれを泊めることは、世界に平和をもたらすことに加担かたんするということだ。その価値が分からないのか?」

「そんな話は信じられん。それにおれは今、平和に暮らしている。この辺は魔物も弱く安全だ。そりゃあ魔界と繋がる次元の裂け目付近の街は、酷い有様だが、おれには関係ない。だろ?」


「そうだ!お前の言う通り!そこがおれとお前の違いだ!お前が背負っているものはこの宿!だがおれは違う!おれが背負っているものはこの世界!お前には一生分からないだろうがな!」


「はんっ!背負えないものに押しつぶされるのはごめんだね。」


「…っ!ふんっ!!!ここは、『宿屋』ではなく『分からず屋』に改名したらいい!」


「ははは。お前が世界を救ったらな!!!」


「今のうちに笑っていろ!すぐにここも危険になる。空は漆黒に染まり、雷鳴がろくちゅうとどろくだろう。一歩街の外に出たら魔獣に食い殺され、教会は祈りに来る人で溢れる。だがその時は安心しろ。お前はおれの背にいるからだ!」




乱暴に宿を出た。


背負っているものの重さを実感した。


「カイト!」

「カイトォォォ」

アリアとデネブが走り寄る。

「なんだ。」

「絶対!絶対!世界を平和にしようね!」

「当たり前だろ。」

「おらはカイトが勇者って分るんだけどなぁ。」

「そうか…。それはそうと、デネブ。おれは神様でもあるんだ。」

「えぇぇ!カイトは神様でもあっただかぁぁ。たまげただ!」

……。

「お前はバカなだけだな。」

アリアがクスリと笑う。




不意に2人に感謝の思いが湧いたが言わないでおいた。

よく考えたら、当たり前のことだ。

おれは勇者なのだから。

それに言うまでもないことだ。

言わなくても分かれ。

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