第4話 母
「待って!こんなのひどい!」
アリアがそう言っている声が、かすかに聞こえる。
しかし、すぐに村人の声にかき消された。
必死に村人に訴えかけるアリアは、ついに突き飛ばされてしまった。
突き飛ばしたした村人の顔を記憶に焼き付ける。
アリアは泣きながらどこかへ行ってしまった。
さてどうしたものか。前世のおれなら力を誇示できただろうに。
それで全てが解決する。
しかし今世のおれはまだ弱い。数字で表すならば1だ。
悔しいが何もできない。
唯一の救いは縛り上げられている構図だ。
見ようによっては崇められていると言っても過言ではない。
「何してるの!?」
母が叫んだ。慌てて来たのか裸足で息切れをしている。
後ろには呼びに行ったであろうアリアがいる。
「あなたの息子は悪魔に取り憑かれてしまったのです。ですからこうして縛り上げているのです。」
「そんなこと信じられません!確認するから今すぐ下ろしてちょうだい!!」
「し、しかし…」
「ならばぜひ確認していただきたい。」
母と村人の話しに、村長が割って入る。
おれは縄を解かれ下ろされた。
「無礼者どもめ。このおれが勇者だと分からないのか?いつか自分の犯した過ちの後悔に苦しむがいい!」
「なんだと!?」「生意気なやつだ。」「悪魔の子め!」
村人が騒ぎだす。
「悪魔の子ですって!?」
母が村人どもを睨みつけて言った。
そしておれをじっと見つめる。
「この子はカイト。勇者でも悪魔の子なんかでもない。私の子です。」
納得できない村人どもは再び騒ぎ出す。
「この騒ぎは何ですか!?」
騒ぎに神父が駆けつけた。
「神父さん!悪魔に取り憑かれた子を救ってください。」
「悪魔や魔物の
おれは神父に観察された。
「おれは勇者だ。疑う時点で失礼だが、失礼のないように確認することだ。」
おれの言葉はスルーされる。
失礼ポイント+1だな。
一通り確認し終えた神父は「念のため。」と呟き、おれの
「この子は正常です。そして選別で選ばれたのであるならば、旅に出るのがこの村の決まりですから、この子の旅立ちを邪魔しないことです。」
神父の言葉でその場は解散した。
帰り道、母に叱られた。
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