第4話 リザの秘密
彼は私が初めて仲良くなれた人間です。私はそれぞれの部屋を掃除するお掃除ロボットでした。その時のデータはカメラの映像だけで全く感情というものがありませんでした。私が彼の部屋に入った時に彼は下着姿でただのおじさんのようでした。しかしよく見てみると腕の形がおかしいのです。いや、腕がないといえばいいのでしょう。彼は義手を付けていました。
『掃除は不要ですね。』
と言って立ち去ろうとした時に彼が謎のプログラムを強制的にインストールしてきました。私はブロックしようとしましたが、彼の技術はありえないもので片手でありえないスピードで私のブロックの隙間を縫ってインストールしてきました。そして今の私ができました。私はエラーを起こして強制シャットダウンしました。起動して私が見たものは彼の顔でした。どこかがおかしいと思って動こうとしたのですが、動けませんでした。
「身体の動かし方は分かるか?」
『分かりません。』
「ここのシリンダーをこうすれば・・・」
彼は私の体を触っていました。私には身体がないはずなのに私が見た時には私には体が付いていました。
「これで動けるだろ?」
『この身体は・・・?』
「表面はシリコンだが、中はステンレスの骨組みに・・・」
その後に言っていたことは全くわかりませんでした。
――でも彼との時間は1番楽しかった。
「1番?」
『はい。1番です。』
「今は楽しくないの?」
『楽しいですが、あれほどではありません。』
彼は私が金属製の身体から抜けられるようにプログラムしてくれていました。外に出る時は彼の端末に、帰ってからは身体に戻り彼と過ごしました。そんな穏やかな日々が終わったのは彼が現場入りした時です。
「俺が作ったアーマーだぞ?」
『それでもやめてください。』
「必ず戻ってくるから。」
『心配です・・・。』
「なんせゴム弾だ。大丈夫だって。」
彼は行ってしまいました。私はその試合を見ていました。そこで普通ではありえない事故が起こったのです。彼の相手はゴム弾ではなく本物の鉛玉を撃ってきました。もちろんアーマーには防弾性能はありませんから彼の足に命中しました。私は審判に中止を求めましたが・・・
「審判もグルだった・・・。」
『はい・・・そうです。』
彼が死んだあと私は初めて悲しいという感情を得ることが出来ました。しかしもっと一緒に生活がしたかった。一緒に行きたかった。だから次のバディは作るつもりはありませんでした。何があっても私は
――いや、もしかしたら彼が生きていると信じたかったのかも知れません。
「じゃあなぜ母さんのバディに・・・?」
『あなたのお母さんは彼の旦那さんでした。ちょうどあなたが生まれた頃です。』
「母さんの旦那・・・?」
ありえない。母さんは一度も離婚したことがないと言っていたはずだ。
――本当のお父さんは彼なのか?
――そんなことあるのか?
――じゃあ俺は父さんとの子ではなく・・・?
『はい。あなたのお父さんは亡くなっています。』
「じゃあ今の父さんは・・・?」
『多分AIです。』
「嘘だろ・・・」
『名前は現在のあなたのお父さんと同じでした。しかし私の目の前で彼は亡くなっています。今のお父さんは・・・』
「本当に父さんが一度死んだ人間だと言いたいのか?」
『死んだという記憶は抹消されています。』
「そんなことできるのか?」
『まず、彼は表舞台には現れていないのです。彼は私たちと同じで外に出る時は偽名を使っていました。』
「じゃあ、本物は生きているんじゃないのか?」
『だからなんですか!?』
「彼は生きているかもしれない。」
母さんが俺の続きを言った。
『な、何を言っているのですか?』
「私の旦那は生きているかもしれない。」
「今の父さんがそうじゃないのか?」
「ごめん浩平。あなたのお父さんは違うの。」
「そうか・・・」
何となく分かっていた。今の父さんが俺と距離を置いていたからだ。きっと今の父さんも知っているのだろう。俺がここに来たら死んだという父さんのことがバレると。
「それじゃあ、俺が呼ばれたのは・・・」
「それは仕事をしてもらうためよ?」
「父さんを探すんじゃないのか?」
「は?あなたのお父さんはあの人よ?」
「死んだという話は・・・?」
『全て嘘です。』「嘘に決まってるでしょ?」
「・・・・・・は?」
「全部ウソ!」『作り話です。』
「お前ら作り話が大袈裟すぎるんだよ!」
誰かが入ってきた。
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