急速熟成法

 過去にだけ行けるタイムマシンが開発された。

 もちろん帰ってくるときはスイッチを切って、自然な時の流れに身を任せなければならないから、遠い過去へ行けば行くほど、乗組員が過去から現代に戻ってきたときには、そのぶんだけ年をとってしまっているのだ。

「これでは遠い過去には行けませんね」研究助手が残念そうに言った。

「しかし、別の利用法があるじゃないか」教授がさほど気落ちするでもなく笑いながら言った。

「このタイムマシンに新しいワインを入れて、自動運転で過去に送れば、あら不思議、一瞬にして年代物のワインのでき上がりじゃ。こいつは儲かるぞ。わはははははは」

 この人にずっとついていこう、と助手は心の中で密かに決意した。


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