透明な巨人

 当時、その国では大きな地震が頻発していた。

 地震が起きるたび多くの建物が倒壊した。

 年老いた王は、死後自分の墓が地震で崩れることを心配していた。その王の悩みをどこから聞きつけたのか、ある旅の僧が王に面会を求めてきた。

「地震というのは、実は透明な巨人が歩き回って、家々を踏み潰しておるので御座います」玉座の前に跪いて僧侶は言った。

「それはまことか。で、一体どうすればよいのじゃ」王は尋ねた。

「巨人は裸足ですから、先の尖った硬い建物を踏むことは恐れましょう」

「なるほど。早速そのように、わしの墓を作らせよう」

「途中で折れたりしないように、底へいくほど大きくすれば、なおよろしいかと存じます」僧侶は、にやりと笑って付け加えた。

 そうしてエジプト最初のピラミッドが作られた。

 旅の僧が一体何者だったのか、誰にもわからない。

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