第3話 甦るキンパラ伝説4 ~そして無一文へ~

○夜・カジノ

ジャラジャラジャラ

ハル「こんな時間なのに人が結構いるね……」

「ううー、あうー」

店内の客は生気なく銀玉を弾いている。

ユウ「フィメナも最近はこんな感じよね」

ハル「そうなの?」

ユウ「少し前に迎えに行った時にこんな感じでやってたわ」

ハル「そうなんだ……なんていうか楽しいのかな、あれで?」

ユウ「そうは見えないわね」

ピロピロピロピロ―ン

ジャラジャラジャラ

客「ぐふっぐふふふ」

ハル達は当たり台の客の前まできた

ユウ「ここは当たってるわね」

ハル「……なんだか怖いんだけど」

ユウ「ねぇハル……ボソボソ」

ハル「え?、まぁやって見るけど……」

ハルは当たり台に近づく。


ショーコ「何かあった?、ユウ」

ショーコがやってきた。


ユウ「ショーコ、もう売って来たの?、早かったわね」

ショーコ「まぁ若干買いたたかれたけどね……、それで情報を仕入れてきたけどやっぱりここ変だわ」ボソボソ

ユウ「というと?」

ショーコ「ここ数日ほとんどの客が負けっぱなしなのよ、それなのに客足は増えてるの」

ユウ「それはギャンブル依存なんじゃないの?」

ショーコ「それともう一つはアレよ」

ショーコが指さすホールの中央には透明な箱が設置され、警備兵が四方を固めている。箱の中には金貨が大量に積みあがっているのが見えた。


ユウ「なにあれ、金庫?」

ショーコ「このパチスロの売り上げは全部あそこに転送される仕組みだって、数日前からあんな風に設置されてるとか」

ユウ「趣味わるいわね」

ショーコ「まぁ派手だし客の射幸心を煽ってるらしいわ」

ユウ「それにしてもスゴイ量ね」

ショーコ「それよ、なんでも他のカジノがどんどん店を畳んでるんだって」

ユウ「他のカジノが?」

ショーコ「ここに客を全部取られてるから……とも考えられるけど、他のカジノの従業員までこのパチスロをプレイしにくるんだって」

ユウ「……異常なまでの人気なのね」

ショーコ「人気だけならいいけど、破産する人も出てきたし市場のほとんどの人が働かずにここに通ってるって」

ユウ「まってまって、それじゃあこのカジノに市場の人やお金が集まっての?」

ショーコ「そ、あの金庫にね」

ユウ「それであんなに……」

ハル「ショーコちゃんも来たの?」

ハルが戻ってきた。


ショーコ「ええ、ところでユウもハルさんもやらないの?」

ハル「うーん、どうしよ」

ユウ「ショーコやるの?」

ショーコ「まぁちょっとだけね」

ユウ「ちょっとねぇ……(ショーコも若干依存なのかしら)」

ショーコ「じゃあこの台で……」

ユウ「まってショーコ」

ショーコ「ん?、何?」

ユウ「ハル、どう?」ボソボソ

ハル「んー、あれかな」ボソボソ

ショーコ「なになに?」

ユウ「ねえショーコ」


ピロピロピロ―ン

ショーコ「よっしゃー確変きたああああ」

ユウ「まったく……元気ねぇ」

ハル「そろそろ戻らないと」

支配人「おやおや、アナタ達はやらないのですか?」

ハル「ヒャ!?」ビクッ

支配人があらわれた。


ユウ「あら支配人さん、私達はオババ……保護者から賭け事はするなって厳しく言われていたので」

支配人「そうですか、ですがたまにはいいものですよ」

ユウ「でもそろそろ閉店なんじゃないですか?」

支配人「そうなんです……、なのでお客さま、確変のところ申し訳ありませんが……」

ショーコ「ええ!?、まだこれからなのよ!、最後までいいじゃない」

支配人「しかし規則ですのでこれ以上は……ねぇ」

支配人は手をショーコにかざした。

ホワワワ

ユウ「!?……ッ、(今なにか妙な気配が)」

ハル「!!」ブルブル

ショーコ「うぁ~、そうね仕方ないわね」

ショーコは手を止めて玉箱をもってカウンターへ歩いていく、どことなくうつろである。


ユウ「……(ショーコがあんなにすんなりと……妙ね)」

支配人「それでは本日はこれまでですので」

ユウ「そうね、帰りましょハル……?、ハル?」

ハルは真っ青になっている。

ハル「え!?、あぁうん帰ろっか」

ハルはユウをひっぱって走りだす。

ユウ「ちょっと?」

タタタ


○ハル達のテント

トーゴ「支配人が魔物!?」

ハル「最初あった時には感じなかったんだけど……、さっき魔物みたいな魔力を感じたんだ」

トーゴ「魔物がなりすましているのか魔物に憑りつかれているのかどっちかか」

ハル「たぶん憑りついてるかな?、体は人間みたいだったし」

ユウ「ショーコはさっきなにかされてたけど大丈夫なの?」

ショーコ「さっき?、ん~よくわからないわ」

ユウ「大丈夫みたいだけど、もうショーコはアレをやらない方がいいかもしれないわね」

ショーコ「えーそんな」

トーゴ「そうだな、それにしても支配人が憑りつかれているとなるとサン達は大丈夫かな?」

ハル「ナナたちまだ戻ってないの?、何処に行ってるの?」

トーゴ「お前達と同じくカジノさ」

ハル「でもいなかったよ?」

トーゴ「まぁいうなれば裏だな」

ハル「それって……」


○閉店後のカジノ

支配人「では保管庫に戻しておきなさい、私は少し出ます」

警護兵「了解です」

ガラガラガラ

支配人と警備兵が金庫を動かして出て行った。

ゴトッ

ナナ「よーしいったの」

サン「暗いから気をつけるんだよ」

シュタ

天井裏からサンとナナが降り立った。

ナナ「潜入成功じゃな」

サン「ふふっ、昔もこんな風だったねぇ」

ナナ「そうじゃのうサン兄ぃ、よく一緒に城を抜け出したのう」

サン「ナナちゃんがここまで出来るようになるなんて思ってなかったけど」

ナナ「それはサン兄ぃの教え方がよかったのじゃよ」

サン「教えていたわけじゃないけど……、まあいいか」

ナナ「にしてもあの金庫は移動式じゃったんじゃな」

サン「そうだね、どこに行ったのか見に行こうか」


○カジノ裏、保管庫テント

カジノから出た別のテントに金庫の保管庫が設置されており見張りが立っている。

ナナ「ひいふうみい……四人も見張りがおるのう」

サン「見張りが多いのは単純だけど効果的な措置だね、あれじゃあ近寄れないや」

ナナ「ふーむ、ならば次は支配人を調べるのじゃ」


○支配人の部屋

サン「誰も居ないね、どこ行ったんだろ」

ナナ「むしろチャンスじゃ、悪事の証拠を探すのじゃ」

サン「別に悪事をしてるって決まったわけじゃ」

ナナ「あんなに金をため込んでおるのは悪事をしておるに決まっておる、時代劇ではだいたいそうじゃ」

サン「時代劇って……、今は現代だよナナちゃん」

ナナ「時代は続いておるのじゃ……、とこれは帳簿ではないな、日記かの?」

サン「んー日記というより調査記録だね」

ナナ達は古代遺跡の調査記録を手に入れた。


○古代遺跡の調査記録

XX月X日

、ついに現地に到着した。、すぐに調査をして発掘箇所を選定せねば、幻の都の痕跡がこの砂の下にあると思うと興奮して疲れなど気にしていられない。


XX月△日

、発掘をすすめる、遺物がぞくぞくと出てくるが目当ての物が出てこない……都を堕落させて滅亡に追い込んだという遊戯板だ。、遊戯で町が滅ぶなど突飛な話に聞こえるだろうが数々の文献が残っている。、実物を発見して証明したい。


XX月□日

、とうとう発見した古代の遊戯板だ、なんと30枚も見つけたがまだまだ埋まっている。

、なぜか助手がいなくなってしまったので作業には時間がかかる。、そういえば今朝の記憶があいまいだが何をしていたのだろう?、そんなことより早くこの遊戯板を全部掘り出さねば。


○○月XX日

、おかしい最近の記憶が途切れている。、私はいつカジノに来たんだ?、ここで何を?、あの音は一体なんだ?、動いているのか?


■■■■

う■さい■■んだこの音は、これはわた■■(これ以上は判別できない)


○ハル達のテント

ナナ「ということらしいのじゃ」

ユウ「これは支配人さんの最後の記録ね」

トーゴ「この日付だと俺たちが初めて会った時にはもう憑りつかれていたようだな」

サン「へー、そゆこと。なんだか急にカジノに来たと思ったらアレヨアレヨと支配人になったから変だとは思ったけど」

トーゴ「サン、支配人がカジノに来た時を知ってるのか?」

サン「知ってるよその頃にはすでに借金あったから」

トーゴ「まったく……、それでどんな様子だった?」

サン「スゴクお金が必要だってことであの古代スロットを売り込みにきて自分も雇ってくれって来たんだ。、オーナー達はためしに遊んだらすぐにのめりこんでたよ」

ショーコ「それであの地位に上り詰めたのね、この短期間に」

ナナ「そんなにも人を虜にするとは、魔性のゲームじゃのう」

ユウ「魔物に魔性のゲーム、それにしても目的は何かしら?、人をギャンブル中毒にすること?」

トーゴ「ギャンブル中毒に?、それで何の得があるんだ?」

ショーコ「お金を巻き上げてはいるみたいだけど」

ユウ「お金稼ぎする魔物……、魔物がねぇ?」

トーゴ「うーむ」

ハル「……ねぇショーコちゃんはさっきさ途中で止められちゃったけど、それはどうして?」

ショーコ「さっき?、それは……閉店だったし」

ユウ「でも普段ならあんな簡単に諦めないわよね?、大当りの最中だったのに」

ショーコ「そうね、あんなチャンスだったのに……、なんだか急にやる気がなくなったというか」

ユウ「”欲しくなくなった”んじゃない?」

ショーコ「そうね……そうかも、でもなんで」

ユウ「『欲』が無くなったのね」



トーゴ「支配人に憑いてる魔物は『欲』を吸い取るのか」

ハル「たぶん、スロットゲームはその媒体なんだよ」

ユウ「欲を引き出した上で吸い取ってるわけね」

ショーコ「それで客に生気がなかったのかな、みんな目がウツロだったしね」

サン「たしかにのめりこんでる人ほど楽しくなさそうだったね」

ナナ「そうじゃなフィメナも最後はなにかに追われるかのようだったしの」

トーゴ「しかし正体が見えてきたとしても、どうするんだ?、借金があるのは事実だしな」

ナナ「なにをいっとる、フィメナや他のものがこんな状態になっておるではないか、あのカジノは危険じゃ、なんとかするのじゃ!」

トーゴ「なんとかするといってもな、追い詰められてるのはこっちだぞ、金がないしな」

ナナ「むうぅ」

ショーコ「お金がない……、そうよ!、それよ」

ナナ「何か思いついたのかの?」

ショーコ「無一文になったら困るのよね」

トーゴ「そりゃ誰だってそうだろ」

ショーコ「だったら……、みんな無一文になればいい」ニヤリ

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