第3話 甦るキンパラ伝説1 砂漠の遊球編

○砂漠の遺跡

砂嵐が吹きすさぶ砂漠の遺跡で調査員達が発掘を行っている。

ザッザッ、ガチン!

調査員A「むっ……、これは?、まさかこれが」


ピロリ―ン、ピロピロピロ


調査員A「こいつ動くぞ!?」

謎の音と光の明滅が放たれる。

調査員B「なんの音ですかコレ!?、ヤバいんじゃ……」

ジャラララ……

「うわーオタスケー」

調査員Bは逃げ出した。

調査員A「まったくあいつは、それよりもこれが都を滅ぼした幻の」


ジャラララ、ジャラララ

「なんだ!?、うわああああ」


○王都新聞

『ナナスタシア様一行、温泉地で火山見物』

 魔王調査隊ことナナスタシア様とその愉快な仲間たちは温泉で有名な谷の国を遊行してきたもよう。、ちょうど数百年に一度の大噴火を見れたためか第七王女は実に満足した様子で先日凱旋された。


○王城・ナナスタシアの部屋

バサッ

フィメナ「また小さくなってますね」

ナナ「なんじゃとお!、わらわ達があの火山爆発の危機を救ったのいうのになんじゃこの扱いわ!?」

ナナは悔しさのあまり地団駄を踏む。

ショーコ「かなり詳細に書いたんだけどねー、信じてもらえなかったかな?、溶岩のバケモノなんて」

ユウ「そうね、そんなの聞いたことないしにわかには信じてもらえないでしょうね」

ナナ「ぬうう……ぬ?、なんじゃこの記事は?」

フィメナ「こっちですか?、えっと『幻の都の調査隊が行方不明。、一人戻ってきた調査員によると行方不明になる直前に謎の石版を発掘していたとのこと。、ヒドイ興奮状態のため真偽のほどは不明。、この調査隊には高名な学者が参加しており……』

ナナ「それじゃ!」

フィメナ「え?」

ナナ「幻の都の謎を解くのじゃ」

ユウ「でもそれ魔王と関係あるの?」

ナナ「ある!」

ハル「なんでわかるの?」

ナナ「カンじゃ!」

フィメナ「あぁ、もう、またそういう思いつきで」

ナナ「しかし現に行方不明者がおるではないか、おそらく魔物の仕業じゃ」

ショーコ「まー、ないとは言い切れなわね」

ナナ「じゃろう?、それに幻の都ならわらわも文献を読んだことはある、300年程まえに砂漠で滅びたという都じゃ……300年前なら魔王のいた時代じゃなんらかの関係があるのやもしれぬ」

フィメナ「さすがにそれはこじつけでは……、第一にどうやって砂漠までいくつもりですか?」

ナナ「それは……」


○王城・酒倉、ホワイトドラゴンの部屋

ナナ「と、いうわけで調査員が消息をたった砂漠の遺跡に行きたいのじゃが乗せてっておくれ」

ホワイティ「いーやーよ!、砂漠なんて紫外線だらけじゃない、絶対行かない」

ユウ「いうと思った」

ハル「普通に行けないの?」

ショーコ「普通にいくとなったら大森林に山脈越えでしょ?、迂回してたら1ヵ月はかかるわね」

フィメナ「そんな長期間の調査はワンス王でも流石に許して貰えないな」

ナナ「お願いじゃー山を越えるところまででもいいからー」

ナナがホワイトドラゴンの顔面にしがみついて頼み込む。

ホワイティ「だーめ、いくらナナの頼みでも砂漠は無理よ、最近は乾燥にも気を使ってるの、行くメリットが私にはないわ」

「たーのーむー」、「だーめーよー」

ユウ「無理そうね、プランの練り直しが必要なんじゃない?」

ショーコ「フッ、仕方ないわね、アタシにいい考えがあるわ」

ハル「どうするの?」

ショーコ「乾燥にお悩みのようね、それなら最近売り出したコレ知ってる?」

ショーコは小さなカップを取り出す。

ホワイティ「あら、それは?」

ショーコ「最新の美容泥パックよ、使ってみる?」

ホワイティ「本当?、ちょっとつけてよ」

ショーコ「肌ケアと美白が出来て保湿成分もたっぷり、お肌に必要な栄養も入ってるわ」ぬりぬり

ショーコは説明しながらホワイティの指先に泥パックを塗り広げる。

ホワイティ「すごいじゃない、これもケアメニューに入れなきゃ」

ショーコ「でもねーこれは原料がとっ……ても少なくて大量生産できないのよ」

ホワイティ「そんな!?」

ショーコ「そうよねー、でもその原料の泥っていうのは……、オアシスの泥なのよ」

ホワイティ「オアシス……、砂漠の?」

ショーコ「そうよ、そろそろいいかな」ぺリぺリっ

ショーコは泥パックをはがした。

ホワイティ「……」

ホワイトドラゴンは指先で肌の感触を確かめる。

つやつやしっとり

ホワイティ「……(いい)」

ショーコ「そこまでいったら泥パックし放題なんだけど、まぁホワイティは砂漠とか行かないからムリよね~」


○夜間・大森林上空

びゅごおおおお

ホワイティ「ま、夜明けまでに着けば問題はないわよね~」

一行を乗せた馬車を掴んだホワイトドラゴンが飛んでいる。、背中にも数名が乗っている。


○ホワイティの背中

ナナ「しかしこう暗くては景色が見えんのう」

トーゴ「残念だな」

フィメナ「見えん方がいいわい」ガタガタ

トーゴ「お前、高いところダメなクセになんでここに居るんだ?」

フィメナ「それは私はナナーシャ様の近衛兵だからって、どうして今回はお前が一緒なんだ!?」

トーゴ「まぁ、ダンは養生中だしなその代わりだ、こないだ呼ばれたのはそのこともあったんだぞ」

ナナ「そうじゃったか、しかしトーゴといっしょは久しぶりじゃのう」

トーゴ「そうだな、昔はよくこうして馬に乗せてたな……、それが今じゃドラゴンに乗ってるなんてな、はっはっは」

ナナ「はっはっは、そうじゃろうそうじゃろう」

フィメナ「ぬぬぬ」

びゅおおお


グラッ


ナナ「ひゃっほー」

フィメナ「きゃああああああああああ」

グギギギ

フィメナはトーゴの首に抱き付くが強すぎてトーゴの首が絞まる。

トーゴ「ちょっ、お前、首が」

ホワイティ「ごっめーん、ちょっとゆれたわ」

ナナ「かまわぬ、それよりただ飛ぶのはツマランのじゃ、一回転とかできんのか?」

ホワイティ「出来るわよ~、挑戦する?、5連続とかバレルロールも出来るわよ」

フィメナ「待て待て待て!、やめろムリだお願いだからー!!」

ギュウウウ

トーゴ「」ぱくぱく


○ホワイティが掴んでいる馬車の中

ショーコ「なによ今の……死ぬかと思った」

ユウ「上も騒がしいわねー」

ハル「ナナがまたワガママ言ったみたいだよ」

ショーコ「むしろフィメナさんの叫びが聞こえたんだけど」

ユウ「もうすぐ夜明けね……」

地平線から太陽が昇ってくる。

ハル「うわっ、すごいキレイ」

ショーコ「ホント、すごいわー」

ホワイティ「もう日の出!?、ちょっと飛ばすわよー」

ハル「え、ちょっと」

ユウ「つかまって!」

ショーコ「うほおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

ホワイティは急激に速度を上げて降下しはじめた。

「きゃあああああああああああああああああああああああああああ」


○オアシス

ざぶーん

ホワイトドラゴンはオアシスの泉に飛び込む。

ホワイティ「じゃ、この中にしばらくいるから、帰る時は言ってね」

ホワイティはオアシスの泉に潜っていった。

ナナ「最後はオモシロかったのう」

ユウ「そう言ってるのはナナくらいよ」

ショーコ「ユウもしっかりしてるじゃない……、まったく」

ハル「帰りは安全第一にしようよ」ガクガク

フィメナ「まったくだ、しぬかと思った」ガクガク

トーゴ「それはこっちのセリフだ、絞め殺されるところだったぞ、どこぞのゴリラに」

フィメナ「貴様ァッ!、誰がゴリラだ!!、くっ、腰が……ぬけた」ガクガクブルブル

トーゴ「……すまん、生まれたてのゴリラだったか、ぶふっ」

フィメナ「このっ!」

ブオン!

フィメナは手近にあった樽を投げつけた。

トーゴ「ぐげっ」

ドボーン

フィメナが投げつけた樽は油断したトーゴを泉にぶち込んだ。

トーゴ「ぶわあああああ、がばっ、お前俺が、ごぼごぼ、泳げな、ゲボゲボ、知って、ブクブク」

フィメナ「しばらくそうしていろ」

ナナ「まぁ、ぬけた腰が戻るまでじゃな」

フィメナ「ナナーシャ様!」カアア

ナナ「かっかっか」

ハル「もう、トーゴはいつまでたっても子供なんだから」

「……」

ハル「なに?」

ナナ「なんでもないのじゃ、気にするでない」

ハル「え? え?」

ユウ「それでここからどうするの?、馬車で来たけど馬はいないわよ?」

ショーコ「馬車はここに置いておくわ、ここからはキャラバンよ」

ハル「キャラバン?」

ショーコ「砂漠の隊商よ、紹介状があるから同行させてもらえるはずよ」

ナナ「こんな異国までに知り合いがいるのか?、ショーコは本当に顔が広いのう」

ショーコ「ま、親父のツテだけどね、『立ってる物は親でも使え』っていうのよ」


○砂漠の遺跡

ナナ「あっついし、何もないのう」

ショーコ「ほんとー、砂ばっかりだし、どこに何があるのよ」

トーゴ「うーむ、調査員って単純に遭難しただけなんじゃないか?」

フィメナ「……ありうるな」

ユウ「パパは何か感じる?」

ハル「うん……なんだろ?、このへんかな?」

ハルはそう言いつつ辺りの砂を掘る。

サッサッ

ナナ「何かあるのか?」

ハル「なんていうのか……、何かあったような感じはあるっていうのか、何だろコレ?」

ハルは砂の中から小さな銀玉を見つけた。

ショーコ「なにこれ?、宝石じゃなさそうね」

ハル「ただの金属の玉みたいなんだけど、微かに魔力を感じるよ」

ユウ「……本当ね、何かしら?」

フィメナ「これだけでは何があったのかはわからないな」

トーゴ「仕方ないな、暗くなって来たしそろそろ宿営の準備をするか」

ハル「どうして?、あっちに町があるでしょ?」

トーゴ「おいおいハル、こんな砂漠の真ん中に町なんてあるわけないだろ」

ハル「だって音がするし、ほら明かりも」

ハルが指さす方には夕闇の向こうにいくつもの明かりが見えた。

ナナ「なんじゃ?、どういうことじゃ」

ショーコ「うーん、もしかしたら……」


○砂漠の市場

ユウ「ここは」

ショーコ「砂漠の市場ねバザールでござーる」

ハル「すごーい店がいっぱいある」

ナナ「おおお、色々珍しいものもあるのう、なんじゃこれは」

フィメナ「ちょっと!、勝手にウロウロしないでくださいよ」

トーゴ「こんな所で市場があるとはラッキーだなしばらくはここに滞在できるぞ」

ショーコ「そうね、アタシが手続きしてくるわ」

フィメナ「私も行こう、ナナーシャ様を頼むぞ」

トーゴ「まかせろ」

ショーコとフィメナは市場の関係者を探しにいった。

ハル「人もいっぱいだね、ここなら何か情報があるかも」

ユウ「そうね、でもパパ気をつけてよ、ここは抜け目ない商売人ばかりなんだからエルフってばれないようにしてね」

ハル「もう、わかってるよ」

トーゴ「そうだな、バレたら耳をちょん切られるぞ、エルフの耳は高値で売れるらしいじゃないか」

ハル「ちょっとイヤな事言わないでよ」

トーゴ「エルフは貴重だからな耳どころが人さらいにさらわれてもの好きに売ら」

ユウ「”帯電”」

バリバリバリ

トーゴ「はばぁ!?」

ユウの電撃魔法でトーゴは感電した。

ユウ「トーゴいい加減にしなさいよ」

トーゴ「ったー、スマンスマン、でも実際そんなことがあってもおかしくないから気をつけろよ」

ハル「わかったよ」

ハルは帽子を深くかぶり直して耳を隠す。

ナナ「のう、あの大きなテントはなんじゃ?」

トーゴ「あれは?、サーカスか何かかな?」

ハル「サーカス!、すごい見たい」

ナナ「わらわもじゃ!」

ショーコ「残念だけどあれはサーカスとかじゃないわ」

ショーコたちが手続きを終えて戻ってきた。

ハル「え~」

ユウ「じゃあ何なの?」

フィメナ「あれは移動カジノだそうだ」

ナナ「カジノ!!」

トーゴ「本当か!!」

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