第1話 ようこそ魔王温泉へ6 ~ハルと一緒~
○洞窟内
ダン「ぐぅ……」
ナナ「ダンは?、治るか?」
ハル「ダメ、石が体にめり込んでる、下手に動かせないよ」
ショーコ「ダン君……」
ドドドン、ドドドン
溶岩巨人は巨大な腕を振って火口から出ようともがき、その腕から無数の噴石が飛び出している。
ナナ「まるで岩の雨じゃ、外には出れぬ」
ドドドド
フィメナ「あぁ、洞窟が」
洞窟の奥が崩れてしまった。
ナナ「八方ふさがりじゃな……」
ハル「……このまま、みんな死んじゃうの」
ナナ「ぬぬぬ」
フィメナ「……」
ツーリス「……困ったわ」
ワカーナ「……くそ」
ショーコ「……」
ダン「……」
ユウ「……パパ」
スッ
ユウは出口に歩いていく、外は岩と溶岩が飛び交い灼熱地獄になっている。
ハル「ユウ?」
ユウ「大丈夫よパパ、ちょっと片付けてくるから」ニッコリ
ユウは外へ飛び出した。
ハル「ユウ!」
○火口付近
溶岩巨人からの噴石が辺りに降り注ぐなかをユウは走り抜ける。
ドドドド
ガン
ユウ「つぅ・・・・・・あと少し」タタタ
溶岩巨人「グオオ」ドタンドタン
溶岩巨人はもがいている。
ユウ「大人しくしなさい”重雷撃”」ドンガラガッシャーン
ズドドォン
溶岩巨人「オオォ」
モモモ……
雷撃が溶岩巨人の腕を吹き飛ばしたが、見る見るうちに再生していく。
溶岩巨人「ガァ」ボボボボ
溶岩巨人は灼熱の炎を吐き出した
ユウ「きゃあああ」
ユウ「……(一体どうすれば)、あれは?」
ユウは溶岩巨人の額から異形の腕が生えているのに気づいた。
ユウ「あれね!、”重雷撃”」
しかし魔力が足りない。
ユウ「もう魔力が……、だったら直接!」シャキン
ズダダダタ
ユウは剣を構えて溶岩巨人に向かっていく。
○洞窟
ショーコ「ユウ、大丈夫かな?」
フィメナ「あんな巨大な魔物はユウ君の雷魔法でしか対抗できない……、信じよう」
「きゃああ」
ハル「ユウ!」
ハルは飛び出そうとしたがワカーナに止められてしまった。
ワカーナ「出るな危ない!」
ハル「だってユウの声がっ……」
ワカーナ「だとしても無茶だ、とてもたどり着けない」
ハル「それでも僕は」
バッ
ハルはワカーナの腕を振り払った。
ハル「ユウのパパだから」
ハルは外に飛び出した。
ナナ「ハル!」
○溶岩巨人の上
ジュウ、ボボォン、ジュジュ
ユウ「ぐぅ」ダダダ
ユウは溶岩巨人の上を走っている、全身に火傷をおいながら額を目指す。
溶岩巨人「降りろこの」
ドドンドドン
ユウ「ぐあっ!、ああぁ」
振り落とされないようにしがみつくが、ついた指先から火傷をおう。
ユウ「まだ……まだぁ!」
ユウは渾身の力をこめて異形の腕をめがけて剣を振るう。
バキィン
ユウの剣が折れてしまった。
ユウ「そんな!?」
溶岩巨人「グハハ、どけい」
ドドォン
ユウ「っぁ……」
ユウは巨大な腕に薙ぎ払われた。
○
吹き飛ばされたユウは怪我と疲労で動けない。
ユウ「……(ごめん……ハル)」
「ユウー」
ユウ「……(声が……幻聴?)」
ハル「ユウー!」
ユウ「ハル!?」
ハルがユウの元にかけよった。
ハル「よかった間に合った?、もう大丈夫だよ、”大治癒”」シュイイイン
ユウの傷が治っていく。
ユウ「パパ……もう、危ないのに」
ハル「だからって一人で無茶しないで、僕もいるんだから」
ユウ「……ごめんなさい」
ハル「ほら僕の魔力をあげるから、”渡魔”」キュイン
ユウの魔力が全回復した。
ハル「ユウならあいつを倒せるよね?」
ユウ「もちろんよ、パパと一緒なら、なんだって!」ガバッ
ユウは立ち上がった。
ハル「うん」ニコ
ユウ「フフッ……(ありがとうハル)」ポゥ
ユウの体が白光に包まれる。
ユウ「これは?(あの時と同じ光)」
ハル「うわぁ、キレイ」
ユウは魔力と異なる力が沸きあがるのを感じる。
ユウ「……これなら行けるわ、”重雷撃”」
ドンガラガッシャーン
溶岩巨人「なんだ!?、体か」
白光を纏った雷が溶岩巨人の体にやすやすと突き刺さる。
カッ シュワアアアア
ハル「いつもの雷と違う!?」
溶岩巨人「馬鹿なこの光は!?、グワアアア」
ドドドォン
溶岩巨人が内側から光になって蒸発していく。
ユウ「これでおしまいよ!!」
溶岩巨人「オノレ、我を倒しても第二第三の嫉妬の炎が……」
ユウ「そういうの興味ないからはやく消えて」
ユウの光が増して溶岩巨人を覆いつくす。
溶岩巨人「ちょっ最後くらい……、ちくしょうちくしょ」
バシュン
光は溶岩巨人と異形の腕を光の彼方に消し去った。
ハル「すごい……消しちゃった」
ユウ「やったわパパ……、もう大丈夫……」
フラッ
ハル「ユウ!」ぎゅっ
倒れたユウをハルは抱き締めた。
ユウ「すーすー」
ハル「頑張ったねユウ……」ぎゅう
溶岩巨人を倒した。
○三日後・国営旅館
ユウは旅館のベットで目を覚ました。
ユウ「ここは?、……パパ」
ハル「すやすや」
ハルはユウにもたれて寝てしまっている。
ユウ「……ふふっ」
ハル「すやすや」
ハルの寝息と共に長い耳が揺れている。
ユウ「……」ゴクリ
ガラッ
ショーコ「ハルさん、ユウの具合はどう?、……って」
ユウ「!」
ハル「うぅん……すやすや」
襖を開くとユウがハルの耳を咥えてた。
ショーコ「……」
ユウ「モグモグ」
ハル「あぁん、うぅん」
ショーコ「コラコラコラやめんか」
ユウ「なによこれくらい、親子のスキンシップよ」
ショーコ「ないないないそれはない。それになんで耳」
ユウ「クセよ、小さい頃からのね。……目の前にあると、つい……」
ショーコ「あたしじゃなかったら誤解を招くわよ、まったく」
ユウ「そうね、それで昨日はあれからどうなったの?」
ショーコ「昨日って、アナタ三日も寝てたのよ」
ユウ「そんなに……それから何がどうなったの?」
ショーコ「そうね、あの後レイスと山男さんたちが来たからそれでダン君やユウを運んで降りてきたの」
ユウ「ダンは?」
ショーコ「隣の部屋よ、ハルさんが治癒魔法で傷を塞いだけど石が入ったままだから王国で手術しないといけなくなったわ」
ユウ「じゃあ一度王国に戻るのね」
ショーコ「そうね、どっちみちこの時期はこれ以上北へ行くのは無理だし」
ユウ「他には何かあった?」
ショーコ「ワカーナさんが武者修行に出たわ」
ユウ「ワカーナさんが? どうして?」
ショーコ「今回の事には自分にも責任があるって……丸秘宝館の事を気にしてるのね」
ユウ「そんな……」
ショーコ「まぁ、それだけでもないでしょうけど、ねぇユウ」
ユウ「……そうね」
バァン
ナナ「ユウ! やっと目が覚めたのかよかったのじゃ~」
ナナが入ってくるなり抱き付いた。
フィメナ「ちょっとナナーシャ様、起きたばかりですよ」
フィメナも入ってきた。
ユウ「大丈夫よ、ナナ」
ツーリス「よかったわね、本当に」
オキーナ「思ったより元気そうでなによりじゃ」
オキーナとツーリスも入ってきた。
ツーリス「今回のことでみんな貴方たちには感謝してるわ、この国の恩人よ」
ユウ「そんな……」
ナナ「そうじゃ、わらわ達は二代目勇者として当たり前のことをしたまでじゃ」
オキーナ「ほほう勇者とな、なんとも勇ましいことじゃ」
フィメナ「あぁもう、言っちゃうそれ」
ショーコ「ま、ナナだしね」
ユウ「仕方ないわ」
ナナ「かっかっかっかっ」
○翌日・馬車停留所
フィメナ「では王都へ向かいますよ」
ナナ「よーし出発じゃ」
ツーリス「気を付けてねー」
オキーナ「またいつでも来い」
「ナナーシャ様バンザーイ」、「勇者様バンザーイ」
大勢の人が盛大に見送る。
ハル「うわースゴイことになってるね、ダン君見える?」
ダン「いえ、見えません」
ダンは寝たまま体を固定されている。
ユウ「絶対安静よ、ガマンしなさい」
ダン「ああ……そういえばレイスさんは?」
ハル「レイスさんも昨日旅立ったよ」
フィメナ「そうだったのか、せいせいするな」
ショーコ「ま、もう会わないでしょうね」
ハル「……そうなるのかな」
○ハルの回想
ハル「行っちゃうの?」
レイス「ええ、今朝電報が届きまして、ボスからお呼びです、直ぐに発たねば」
ハル「そうなんだ……あのこんなこと聞くのは失礼かもしれないけど」
レイス「なんです?」
ハル「あの……耳を見せてくれませんか?」
レイス「耳?、ははぁ……どうぞ」
レイスは髪をかき上げて耳を見せた。
ハル「あ……(普通だ)、あのありがとうございます、ヘンな事きいて」
レイス「ふふふ、ワタシがエルフとでも思いました?」
ハル「え!? はい……もしかしたらって」
レイス「どうしてそう思ったのですか?」
ハル「その……レイスさんの魔力って他の人と違う感じがしたから……ごめんなさい」
レイス「いいんですよ、確かにワタシはちょっと特殊ですので」
ハル「そうなんだ、特殊って?」
レイス「それは……」
ハル「それは?」
レイス「ナイショです」
ハル「え、ナイショ?」
レイス「ふふっ、そんな残念そうにしないでください、次にお会いしたら教えますから」
ハル「次っていっても」
レイス「大丈夫、また会えますからその時までのお楽しみです、約束しますよ」
ハル「……うんわかった、約束だよ」
レイス「では、馬車の時間ですのでお先に」
ハル「うん、ありがとう」
○
ハル「不思議な人だったなぁ」
フィメナ「そうか?、どうしようもない奴だったぞ」
ショーコ「そうね、今頃別のところで遊んでるんじゃない?」
ユウ「二度と会いたくないわね」
ハル「……(ヒドイ言われよう)」
ナナ「とにかく王都に凱旋じゃ、兄上も驚くじゃろう」ふっふっふ
ハル「また山道かぁ、仕方ないよね」
ユウ「大丈夫よ私が居るわ」
ハル「うん……そうだね」
【ようこそ魔王温泉へ、~ドキッ!リア充爆発危機一髪編~ 終了】
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