第11話 メンダン・ビフォア・トーナメント 4
○授与式
ナナ「えーたいへんよくやった望みの褒美があればぁあーもうすが良い」ブッス―
ロック王子「お前の褒美なんていらない、それにしてもあのダンとかいうの。見かけ倒しじゃないか、くくく……」
ナナ「なんじゃとぉ!! 貴様があんな卑怯な手をせねばダンはお主くらいッ!」
ユウ「ねぇ、ナナ王女」
ナナ「おぉ、すまぬ。ユウはよくやってくれたの望みの褒美をいうがよい」
ユウ「なんでもいい? だったらこの王子と試合させてもらおうかしら」
ビシ
ロック王子「はぁ? ……フフフ、なんだ仇討ちか? 田舎者が」
ナナ「ふ……ふふ。 そうか、あいわかった。許す、エキシビジョン・マッチじゃ、よいな!」
ロック王子「いいぞ、受けてたとう(この娘も俺の手で倒せるならば好都合)」
○エキシビジョン・マッチ
ロック王子「あのダンとかいう奴は彼氏かなにかだったか?」
ユウ「気持ち悪いこといわないでよ。ただ弟分がやられっぱなしじゃ、私の気が収まらないの」ゴゴゴ
ロック王子「まったく、どいつもこいつも身の程を知らない……」
ユウ「確認するけど、魔法アリでいいのよね」
ロック王子「無論だ……(たしかコイツは炸裂魔法を使えたな)」
審判「いいですか はじめ」
ザッ
ロック王子「……(たしかに炸裂魔法なら延長氷刃の間合いに入る前に攻撃できるだろうが、このマントは熱、冷気、斬風、爆発のあらゆる魔法を防げる対魔法コーティングだ、こちらの間合いまで詰めれたら勝ちだ)」
ダダッ
ユウ「……」スッ
ユウは右手を掲げる 。
ロック王子「”
ユウ「”雷撃”」
ピカッ
ロック王子「へ?」
ドンガラガッシャーン !
○解説席
「「わあああああああああああああああああああああああああ」」
アナウンサー「なんということでしょう、今のは雷です! 雷魔法です!」
解説「本当に使い手がいるとは、一説では伝説の『賢者』のみ使えたという幻の魔法です」
○競技場
ロック王子「ななな、雷魔法ぉ!?」
ブスブス……
ユウ「結界があってよかったわね、普通丸コゲだから」
ロック王子「きさまぁ!」
ユウ「結構元気ね……次は手加減いらないわね」
バリバリバリ
ロック王子「ま、まて」
ユウ「今のはダンの分よ。それでコレが私とナナ王女の分 ”重雷撃”」カッ
ドドドドド――――ン
○王族観覧席
ナナ「よくやったぞ、ユウ―! ダンよ仇はとったぞよ!!」
ワンス王「お前らもうちょっと仲良くできないのか…… しかしあんな手練れがいるとは……」
○競技場
「ワアアアアアアアアアアアアアアア」「ユウ! ユウ! ユウ!」
ユウ「あーあ、やっちゃったかなー(これだから使いたくなかったのに…… 全部ダンのせいね、まったく)」
「ユウー」
ユウ「……(そうだハルが来て…… そういえば一応、家出中なんだった……どうしよう)」
「怒ってないから戻ってきてー」
ユウ「……(そういえば望みの報酬もつい勢いでこの試合にしちゃったし、お店どうしよう、もーダンのせいで)」
「一緒にいてよー」
ユウ「……(ハル ……今の私が出来ることはなに? どんな顔して会えば)」
「まてナナーシャ」
ダダダダ
ナナが観覧席から飛び出しユウに抱き着いた。
ユウ「ナナ!?」
ナナ「さっすがユウじゃ、あっぱれじゃ! スカッとしたぞ」
ユウ「あらそう? よかったわ」
ナナ「ユウ、重ねて頼む。わらわと共に調査隊に加わっておくれ」
ユウ「またそれ? でもねぇ」ウーン
ナナ「わらわと共に世界中を旅をして魔王を見つけるんじゃ、お主でなければダメなんじゃ」
ユウ「世界中……見つける……私じゃなければ…… そうよ!!」
ナナ「おぉ! やっとわかってくれたのかユウ」
ユウ「魔王調査隊ね、世界中どこでもいくのよね?」
ナナ「もちろんじゃ! わらわは二代目勇者として魔王を見つけ出し退治せねばならないのじゃ。そのためなら世界中のあらゆる所へ……」
ユウ「ナナ、わかったわ。ただし一つ条件があるの」
ナナ「なんでもよい、言っておくれ」
○夜・王都 トルマンホテルの一室
ショーコ「じゃあこの部屋使ってね」
ハル「ありがとうショーコちゃん」
ユウ「ホント、ありがとね」
ショーコ「……ちょっ、こっち」
ユウ「なに?」
バタン
○廊下
ショーコ「この部屋は完全防音だから何しても大丈夫よ」ボソボソ
ユウ「何って何よ」
ショーコ「そりゃナニですよ、旦那」
ユウ「……ショーコ、アナタねぇ」
ショーコ「まぁまぁまぁ。多少のことは親子のスキンシップということにすれば大丈夫だって、多分」ポンポン
ユウ「……」スッ
ユウのアイアンクロー。ショーコの頭が締め付けられる。
「ギエエエナンデェエエ ギブギブ」
ユウ「なによ急に、どういうつもり」
ショーコ「っー…… だって参加するんでしょ調査隊。だったらハルさんとの最後の夜じゃない?」
ユウ「相変わらず耳が早いわね、でもそうはならないから」
ショーコ「え?」
ユウ「だって……」
○部屋
バタン
ハル「ショーコちゃんと何話してたの?」
ユウ「くだらないことよ、それよりもパパ。話があるの」
ハル「まって、その前に謝らせて。その……ゴメンね一方的に言い過ぎたよ」
ユウ「……パパ、私もヒドイ事いってごめんなさい」ギュウ
ユウはハルを抱きしめる
ハル「う、うん。それはもういいから、怒ってないから」
ユウ「それより聞いて、私決めたの」
ハル「何?」
ユウ「私、調査隊に参加するわ」
ハル「!?」ガーーン
――私、調査隊に参加するわ
「それでねパパの……」
――私、調査隊に参加するわ
「私がんばって見つけるから……」
――私、調査隊に参加するわ
「だからパパも……パパ?」
ユウ「パパ? どうしたの聞いてる?」
ハル「あ、ハイ。わかったよ。ユウが自分で決めたならそれでイイヨ」ガーンガーンガーン
ユウ「ありがとうパパ、でも大丈夫? 顔色が……」
ハル「ちょっと疲れたかな、先に寝るよ。お休みなさい」ガーンガーンガーン
ユウ「おやすみなさい……(急だったから驚かせちゃったかな?)」
○寝室
スタスタ ぼふっ
ハル「……(泣いちゃダメだ泣いちゃダメだ 僕は……ユウぅ)」ぐすぐす
――「ハル、アンタはもっと覚悟を持ちな。パパだろう」
ハル「がんばるよ、オババ…… 僕はパパだから」ボソ
○翌朝・魔王調査隊出発式
演壇の上でナナが演説をしている。
ガヤガヤガヤ
「近年増加しつつある魔物の具現化はわらわは独自の調査で……」
ハル「すごい、急だね」
ユウ「急いで調べたいところがあるんだって」
ハル「そうなんだ」
「そして魔王が復活しつつあることと結論にいたった……」
ユウ「不安? 大丈夫よすぐ戻ってくるから」
ハル「うん……」
「しかし魔王の存在そのものに疑問視するものが多いのも事実……」
ユウ「それにしてもナナと一緒になってしつこく勧誘してたけど、そういうことだったのショーコ」
ショーコ「えぇ、アタシも行くの。交渉事なら任せて、販路の拡大や商売の修行にもなるしね」
「なのでわらわはより詳細な実態調査に乗りだすことに……」
ユウ「で、なんでアンタも居るわけ。ダン」
ダン「俺は……ナナ王女から頼まれて。それにフィメナさんからも」
ユウ「こいつでいいの? 治癒魔法一つ使えないのよ」
フィメナ「それは分かっている、ただナナーシャ様は身辺警護は自分が認めた者しかダメなんだ、それに……旅行先でのナナーシャ様のお守なんて正直一人じゃ無理だ……君たちにも苦労をかけると思うが頼まれてくれ」
ユウ「……苦労してるのね、それにしてもこの顔ぶれじゃまるで学生の社会見学ね」
フィメナ「案ずるな先発隊や現地の協力者もいるんだ。我々は後発なんだよ」
ユウ「そう、やっと終わるみたいね」
「わらわはこの国の王女として、そして勇者の末裔として二代目勇者を襲名しこの任に全力をつくす所存である!」
「ワアア」
パチパチパチ……
ナナ「よし出発じゃ! 皆の衆 乗車」
フィメナ「ハイハイ、行きますよー」
フィメナたちが馬車に乗りこむ。
ハル「あ……(ユウがいっちゃう……)」
ユウ「パパ? どうしたの」
ハル「ううん……(ガマンしなくちゃ) なんでもないよ」
ユウ「そう、ほら早く乗って」
スッ
ユウはハルに手を伸ばす
ハル「え?」
ユウ「パパ? もしかして行きたくなくなった? 怖い?」
ユウはハルに顔を近づける 。
ユウ「大丈夫よ、昨日言ったでしょ 私が必ずパパの仲間を……他のエルフ族を見つけるって」
ハル「え、昨日……それに魔王を探すんじゃ」
ユウ「魔王なんてついでよ、ナナもパパの同伴は許可してくれてるわ」
ハル「……ッ そうか、そうだったんだぁ」
ユウ「安心した? ほら行きましょ、やっぱり外国は怖い?」
ハル「……ううん、ちっとも」
ぎゅっ
ハル「怖くないよ、ユウが一緒なら、怖くない」
ハルはユウの手を強く握り馬車に乗り込んだ。
ナナ「よーし 出発じゃーーー!」
○馬車の中 ・ユウの思い
パパは、ハルは世界でただ一人のエルフ族かもしれない。
それがハルを苦しめ続けている。 だから私はずっとハルと一緒にいたかった。
ハルを襲うすべての悲しみから守りたかった 。
たとえそれが私には無理だとしても 、私がハルを独りにはしない。いつかそれを他の誰かに託すことになっても 。
それが 、それがきっと私がパパに出来る唯一の守り方。
〇 ハルの思い
16年前、あの時。ユウの手をとったときから僕の世界はどんどん広がっていった。
そしてこれからも、
ユウと一緒なら世界でもどこでもきっと大丈夫、魔王だって怖くない。
ユウは僕にいつでも勇気をくれるから 。
ユウ、君は僕の勇者だよ 。
○
ユウ「パパ」
ハル「なに?」
ぎゅう
ユウ「世界で一番パパが好きよ」
むぎゅう
ハル「んむっ、ちょっと、苦しいよユウ」カアア
ユウ「ゴメン、ふふふ」
ハル「もう ……ありがと」
〇
第11話 メンダン・ビフォア・トーナメント 終わり
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