第11話 メンダン・ビフォア・トーナメント 3

○競技場

ユウ「……はぁ、なんでこんなことしてるんだろ(……ガマンガマン、お店を再建するんだから)」

ユウ「……(はやく、お店を直して。また二人で一緒に……)」

――「ずっとは無理でしょ、わかるでしょ? ユウ」

ユウ「……(わかってるけど……でも……)」

――「僕に構わず、ユウが幸せになってくれるのが。僕の望みだよ」

ユウ「……(ハルの望み、私の幸せはハルと一緒にいることなのに)」

――「望み」

ユウ「……(望み、幸せではない? ハルの本当の気持ちは……)」

「女闘士選手の入場でーす」「ウワアアアアア」

ユウ「……(もう試合だわ さっさと終わらせなきゃ)」


○女性部門 決勝戦

審判「はじめ!」

女闘士「その綺麗な顔をボコボコにしてやんよ」

ガキン

ユウ「速っ!?」

女闘士「やるね でもまだまださ」シュッ

ズダダダダダ

女闘士が人並みならぬ速度で突きを繰り出す 。

ガガガガガ

ユウ「くっ、アナタ。ぐぅ!!」バシン

ユウは捌き切れずに一発顔面に食らってしまった。

女闘士「残念だけど アンタは運がなかったのさ」ニヤリ

女闘士は高速連続攻撃を繰り出す 。


○観客席

「キャー ユウさーん」

ショーコ「そんなユウが一方的にやられるなんて!? なにあの速さ」

ハル「ねぇ…… こういう試合でエンチャント装備ってしていいの?」

ショーコ「エンチャント!?」


○王族観覧席

ナナ「なんじゃああれは!? 人間の速さではないぞ!」

ロック王子「ヤレヤレ、なにか仕込みでもしてるのですかね。困ったことだ」

ワンス王「不正か? どうする? 決勝戦だが止めるか?」

ナナ「うぬぬ、あれくらいユウなら倒せるわ」


○競技場

ユウ「だったら”炸裂”」

ドォン

ユウの魔法が女闘士を吹き飛ばす。

女闘士「っつぅ、このぉ!」シュッ

女闘士は針手裏剣を投げつけた。

チク

ユウ「いたっ これは……(毒!?)」

女闘士「あぁびっくりした、魔法まで出来るなんてね。でもそれは魔封じさ、もう終わりだよ」

女闘士がユウを蹴りあげる

ユウ「……きゃああ!!」

ドサッ

女闘士「まったく気に食わなかったんだよ田舎娘がチヤホヤされて」

ユウは何とか立ち上がる 。

ユウ「……毒とか、あと”倍速”ねソレ。一体どこでそんな高位エンチャントを」

女闘士「へぇよくわかったね。しかし困ったね病院送りで許してやろうとおもったのに ……全治三カ月コースに変更さ」バッ

女闘士の高速攻撃、複数のフェイントも加わりユウは攻撃を防げない。

バシバシバシン

ユウ「っつあああ!!」

女闘士「そうそう、それと降参する暇はあげないよ」ニヤ

ユウ「する気はないわ、お気遣いなく……(腕輪? 指輪? エンチャント装備さえ壊せれば)」

「ユウ―~~~」

ユウ「……この声」

ハル「ユウーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

ユウ「ハル……ショーコが連れてきたのね、まったくもう」

ハルはしきりに自分の耳を引っ張っる

ユウ「あれは……(そう、ありがとパパ)」

女闘士「弟さん? 残念なお姉ちゃんね、無様に負けるなんて」

ユウ「残念だけど。そうはいかないわ、ハルの前じゃ負けられないから」

シュバ

ユウは女闘士の耳飾りを突いた。

パキン

女闘士「なに!?」

倍速の耳飾りは壊れてしまった 。

ユウ「ハァ!!」

女闘士「く、くそ!!」

ガガガガガガ

ユウの連続攻撃、女闘士は捌きれない。

女闘士「ギャアアア」

ドサッ

ユウ「悪いけど、さっさと終わらせてもらうわ。ハルが待ってるから」

女闘士「ギギギ…… だったらこれで」

女闘士は怪しい薬を取り出し飲み干すと体が変形していく。


○王族観覧席

ワンス王「なんだあれは!? バケモノじゃないか!! 衛兵」

ロック王子「……兄上、まだ試合の途中ですよ。そうだよなナナ」

ナナ「ぬぅうー、ユウ―! 負けるなあああああああ!!」


○競技場

女闘士「ぐぅ、ぐっはぁ。ぐるるる」

女闘士は獣人化している

ユウ「やれやれ、違法行為のフルコースね、そこまでする?」

女闘士「ぉ……うじ のため オマエは絶対潰す!」

ドドォン

ユウ「なんて力……(今のケガじゃ、防ぎきれない。魔法は……まだ封じられてる)」


――「闘いは機で決まる」


ユウ「ガラじゃないんだけどな……、はぁ やるしかないか」スッ

ユウは低く構えた 。


〇選手控え席

ダン「……あれは俺の、いやお爺様の構え」


○競技場

女闘士「ぐるあああああああ」

女闘士の攻撃 。

ユウ「ふっ!」

ズドン

ユウは攻撃を紙一重で躱して喉を突く。

女闘士「ッ……!! ッ……ァ!」

ユウ「ごめんね、人間相手にするなって言われてたけど、セーフよね?」

ガク

気道をふさがれた女闘士は失神した 。

審判「そこまで ユウの勝利!」

「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」」


○王族観覧席

ナナ「さすがユウじゃ、あっぱれじゃ!」

ワンス王「ふむ、なるほど。ナナーシャがいうだけのことはあるな……なぁロック ……あれロックウェルはどこだ?」

ロック王子の姿が見当たらない

ナナ「ふふん、ないやらコソコソしておったが。万策尽きたのじゃろう、さて最後はダンじゃな。ダンも強いのじゃぞ」


○決勝戦 男性部門

選手が入場する

ダン「……(やはりユウが優勝か、お爺様の技で。俺も負けていられないな)」

ザッザッザ

覆面選手「……」

ダン「……?(この選手、こんなに背が低かったか?)」


○解説席

アナウンサ―「さぁ、いよいよ最後の試合になります。男子決勝、ダン選手と覆面選手です」

解説「覆面選手って、あんな体形でした? 昨日と違うような」

アナウンサー「男の子は成長が早いですからね。さぁまもなく開始です」

解説「いやいや、明らかに縮んでますよね?」


○競技場

ダン「……(ユウの相手といい、何があったもおかしくないな。気を引き締めねば)」

覆面選手「……デケぇ、ツラしやがって」ボソ

審判「はじめ!」

ババッ

覆面選手「……ブツブツ」シュッシュッシュッ

カンカンカン

覆面選手は細身の剣で突きを繰り出してきた。

ダン「……(スピードタイプ、しかしこれぐらいなユウの方が速い)……ぐわッ」

ダンの肩につららが刺さっている 。

ダン「これは氷?……(いつの間に!?)」

覆面選手「それはただの氷ではない、スタミナを吸い取るぞ」

バサァ

覆面を投げ捨てたその下には。

ロック王子「ダンとかいったな、お前は私の華麗なる魔剣技の前に敗れるのだ」

覆面選手はロック王子だった 。


○王族観覧席

ワンス王「なっ!? あのバカ、いつの間に!? 衛兵だれもしらなかったのか」

衛兵「我々は口止めされておりました、自分にも出場権利はあると……」

ナナ「だしかにバカロックも17じゃからな、参加はできるが…… 墓穴をほったようなものじゃな」


○競技場

「ダンー ぶっとばせーー わらわが許すーー」

ロック王子「チッ…… アホがうるさいな」

ダン「……ロックウェル王子」

ロック王子「なんだ遠慮するな、これは試合だぞ。来い!」

ダン「……では参ります」ザッ

ブンブン

ロック王子は回避してから距離をとった

ロック王子「こちらも手加減せんぞ ”延長氷刃エクステンドアイスエッジ”」

ヒュオオオオ

ロック王子の剣に冷気が宿る。

ダン「……(氷の刃 長い)」

ロック王子「”ポォキ” ”ポォキ” ”ポォキ”」ヒュヒュヒュン

王子が突くたびにつららが飛び出してきた。

カンカン……ズブッ

ダン「ぐあぁ!」

ダンの大腿につららが刺さる 。

ロック王子「どうだ! これが魔剣技というものだ。お前はカウンターが得意なようだが、この延長氷刃エクステンドアイスエッジではカウンターはとれまい」

「バカロックー 中二な魔法なんぞつかいおってー 恥をしれーーーー」

ロック王子「うっさいな、この華麗なセンスがわからないのか。まったく」

ダン「……(たしかに魔法でリーチと手数を増やされているはつらいな…… どうすれば)」

ロック王子「さて降参は…… する気はなさそうだな」

ダン「……」ググ

ダンは低く構えている 。

ロック王子「無駄だ ”ポォキ” ”ポォキ”」

ヒュヒュヒュン

ズブッ ズブッ

ダン「……(なんとか反撃の糸口を!)ぐぅ」


○選手控え室

ユウ「なにしてるのよダン……」イライラ

「このまま針山になる気か?」「ぐああ」

ユウ「……あれぐらい普段ならダンのバスターソードのリーチでダンの勝ちよ。あの王子調子にのって」ギリッ


○競技場

ロック王子「まったく呆れたタフさだなキミは」

ダン「ふーふー」

つららが全身にささりながらも、立ち上がるダン。

ロック王子「仕方ない、これで終わりだ ”ポォキ”」

ヒュン

ダン「……(くそ、避けれない)」

ガッツン

ダンは眉間をつららで打たれた。

ドシン

ロック王子「結界の半減があってよかったな、脳天を貫かれていた所だぞ、フフフ……」

審判「そこまで、勝者。ロック王子!!」

「ワアアアア」「ダン君―」「ぅおのれバカロックーー」

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