第11話 メンダン・ビフォア・トーナメント 2

○2日前・王都 王の間

第六王子ロック「概算ですがこれが被害総額です……」

ワンス王「……ふむ、ゾンビじゃ保険はおりないよな。よし被災者への支援策の策定を急いで……」


ドタドタドタドタ


ワンス王「またか……」 ロック王子「……」

バタン

ナナ「兄上これはどういうことじゃ!!」

第七王女ナナが飛び込んできた

ワンス王「ハァ……、今度はなんだ?」

ナナ「『魔王調査隊』の名簿になぜユウとダンが居ないんじゃ! わらわが推薦したじゃろうが!」

ワンス王「それか。あたりまえだろうその2人は学生じゃないか認められるか、ゾンビの件もあったし正式に調査してもらいたいんだ子供の真似事では困る。だいたいお前は一応王族だから護衛もちゃんとして……」

ナナ「だーかーらー! あれほどの猛者はそうそうおらんといっておろうが」

ロック王子「騎士でもない田舎者に任せられるか、現実をみろ。アホ」

ナナ「田舎者じゃと! 見てもおらんのによくもそんな口を!」

ワンス王「そりゃそうだ見てもおらんからな。ほら今は南町の復興の件もあって忙しいんだ、わがままいうな」

ロック王子「近衛兵なにしてる。部屋に連れて行け」

女騎士フィメナ「はっ……、ほらナナーシャ様行きますよ」

ナナ「はなすのじゃー」

バタン


○ナナの部屋

ナナ「まったく、あんのバカロックがぁ!」ジタバタ

フィメナ「口が悪いですよナナーシャ様。しかしワンス王の言うことももっともです」

ナナ「フィメナまでいうか! あの者たちの強さは知っておろう」

フィメナ「知ってますよ、でもやはりまだ学生です。王女の護衛と認めるわけには」

ナナ「お主までそんなことを」

フィメナ「だいたい今はゾンビ騒動の後始末で手一杯なんですよ、あまりわがままをいうと『調査隊』自体が取り消されますよ。わかりましたか」

バタン

ナナ「まったく腹がたつのう」

うろうろ

ナナ「……こんな時は」

ガチャ

ナナは電話の受話器を取り上げる。

ナナ「……わらわじゃ、南町のトルマン家につないでおくれ」


○現在・王城中庭 特設会場

人混みをかき分けるハルとショーコ。

ハル「それで相談されたの?」

ショーコ「そ、アタシが提案したんだけど……ナナ王女の実行力は流石ね」

ハル「これ何なの? ユウも居るの?」

ショーコ「ほらあそこ見て」

ハル「U-19剣技大会ナナスタシア杯!? ユウはこれに参加してるの?」

ショーコ「そうよ、ほら」


○競技場

ユウ「ふっ!」

ビシッ

「ま、まいりました」

審判「そこまで ユウの勝ち」

「ワアアアア」「ユウサーン」「ステキ―」


○ 観客席

ショーコ「あーらら、学校のファンも来てるわね。休校だし仕方ないか」

ハル「ユウ―!」

ショーコ「無理よここからじゃ聞こえないわ」

ハル「だったら行ってくるよ」

タタタ

ショーコ「ちょっとハルさん!?」


○ 競技場

ユウ「ハァ……(どうなってるのよコレ)」

「ユウさーんサインください」「握手してくださーい」「彼氏とかいますかー」

ガヤガヤガヤ

ユウはファンに取り囲まれている 。

ユウ「ハイハイハイ……通してくださいね」ニッコリ

記者「ユウ選手、なにか一言いいですか」

「ユウー」

ユウ「お答えしたら通してもらえますか?」

記者「えぇ、初戦で優勝候補を破ってここまで完勝。いままでどんな練習を?」

ユウ「いえ特になにも、しいて言えば幼馴染の練習に昔から付き合っていたので」

「ユウ」

記者「幼馴染とは同じ南町出身のダン選手ですか? 彼とはどんな関係で」

ユウ「あれは弟みたいなものです」

記者「ホントですか~?」

ユウ「もういいですよね、通してください」

「ユウ……」

ガヤガヤガヤガヤ


ハル「あぁ、行っちゃった」

ショーコ「いやはや。新たなファンやらなにやらで近づけないわね」

ハル「うん、でも声が聞けたから安心したよ。思ったより元気そうでよかった」

ショーコ「ダン君も今からだから観にいきましょ」

ハル「ダン君も参加してるの?」


○放送席

アナウンス「若干16歳のユウ選手、年上相手でもまったく怯むことなく。ここまで圧倒的です」

解説「情報によりますと彼女は幼少の頃に近所のお爺さんから師事を受けたそうですが、このお爺さんというのが王国最強といわれたその人だったそうです」

アナウンス「あの剣聖の!? ならばあの強さに納得がいきますね。さて次はその剣聖のお孫さんのダン選手と王立学校の貴族剣士選手の試合です。これも目が離せませんね」


○競技場

「がんばるのじゃぞダン―」「キャーキャー」「先輩がんばれー」

ダン「……(やはりユウが勝ったか 俺も負けてはいられない)」

貴族剣士「お前がダンか、残念だが剣技だけでは私には勝てないぞ。そうそうに降参するのをお薦めする」

ダン「(俺も俺自身のために……)ん? なにかいったか?」

貴族剣士「聞いてないのかよ、お前ふざけてるのか」

ダン「スマナイ、別の事を考えていた」

貴族剣士「お~の~れ~田舎者が」

審判「はじめ!」

貴族剣士「これで終わりだ”風刃”」

貴族剣士は魔法を唱えた 。

ビュウン

ダン「む!」ザシュ

貴族剣士「まぁ、ここでは結界があるから威力半減だろうがな」

「卑怯じゃぞー」「ブーブー」

貴族剣士「うるさいな、最近では剣士も魔法ぐらい使えて当然だ」

ダン「……はぁっ!」ダっ

ダンは突進して間合いを詰める。

貴族剣士「だろうな”風刃”」ダダッ

ビュウン

貴族剣士は飛びのきながら魔法を放つ

ダン「ぐあっ」ザシュ

貴族剣士「力はあるが速さは無い、だから近づかなければどうってことはない ”風刃”」

ビュウン

ダン「ぐぅ」ザシュ

貴族剣士「さて、勝てないのが理解できたかな。降参は?」

ダン「……」

ダンは低く構える 。

貴族剣士「まったく、飲み込みの悪い奴だ ”風刃”」

ビュウン

ダン「ハァッ!!」

バシュン

ダンは魔法を弾いた。

貴族剣士「なに!?」

ダン「ハァハァ……よし いざっ」ダッ

ダンは突進する 。

貴族剣士「ぬかせ ”風刃” ”風刃” ”風刃”」ダダッ

ダン「フンッ! ハァッ!」ダダダ

バシュンバシュン

ダンは魔法を弾きながら間合いを詰める。

貴族剣士「ウソだろ ”風…… うわっ」ドタっ

貴族剣士は転んでしまった 。

ダン「ハァ!!」ブン

貴族剣士「うわぁ!? ちょタンマタンマ、降参だ! 参った」

審判「そこまで、ダンの勝ち」

「ワアアアア」「よくやったそダンー」


○選手控え室

ダンが競技場から戻ってきた 。

ユウ「……」

ダン「ユウ……見てたか、どうだった?」

ユウ「ハァ……60点」

ダン「なっ」

ユウ「魔法弾きは私と練習してたじゃない、なんで一発で見切れないの」

ダン「いや……ユウのは火球だったしタイミングも。その……」

ユウ「それに何最後の? 全部はじく必要なかったでしょ、二つは避けれたよね。そうすれば10秒は早く終わってたわよね?」

ダン「う、うむ……」

ユウ「男女別でよかったわね~。私と当たらないんだから、ほら怪我みせて。ホント治癒魔法すらできないんだから、まったく ”治癒”」

パアア

ダン「スマン…… なぁ、ユウ」

ユウ「なに?」

ダン「やっぱりお前も騎士になりたいのか? あんなに否定してたのに……」

ユウ「うるさいわね、騎士になりたいわけじゃないわ」

ダン「じゃあなんで? 優勝賞品か?」


○王都・トルマンの宿屋 食堂

ハル「望みの褒美?」

ショーコ「そう、上位入賞者には騎士相応の位と望みの褒美をナナ王女がだすそうよ」

ハル「そうなんだ、それでユウも……騎士になりたいのかな?」

ショーコ「そりゃあ、喫茶店の再建でしょ。ハルさんの」

ハル「そうなの? もうユウったら、そんな心配しなくていいのに」

ショーコ「ま、明日で最後だから終わったらお祝いしましょ。ハルさんが来てるのしったら驚くわよ」


○王城 通路

フィメナ「ごきげんですねナナーシャ様」

ナナ「あったりまえじゃ、これで兄上もダンとユウを認めるじゃろう」

フィメナ「まだ優勝したわけじゃないですよ」

ナナ「あの2人が優勝にきまっておろう」


フィメナとナナが歩いていくのを確認すると柱の陰でロック王子が毒づく。

ロック王子「ったく、アホが調子にのりやがって……おい、明日の準備は?」

家来「女性部門はなんとか、ですが男性部門は……あまりにも急なお申し付けですので」

ロック王子「言い訳は怠慢だと知れ、まったく……俺がなんとかする」

家来「しかしあの剣聖の孫は、その実力は確かなもので……」

ロック王子「あの程度俺の敵ではない」


○翌日 決勝戦

ハル「わぁ、最前列だ、凄い」

ショーコ「一応親父が協賛って形だしね」

ハル「ありがとうショーコちゃん」

ショーコ「どういたしまして」

ハル「ここからなら聞こえるかな?」

ユウが競技場に出てきた

ショーコ「出てきたわよ」

ハル「ユウーー!」

「うおおおお」「ユウさーん」「キャ――――」

「ユウ! ユウ! ユウ!」「ゴー!ゴー!」

ユウは観客に手を振ってこたえた。

「「ワアアアアアアアア キャアアアアア」」

ショーコ「こりゃ、昨日より増えてるわね……(ファンクラブが作れるわね)」

ハル「……ふわー(ユウの事をこんなに沢山の人が……) 」


ハル「……(ユウの才能……父親として……僕は……)」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る