第9話 王都下水道で伝説の怪獣と財宝を追え! 4

〇地下倉庫・白竜の部屋

フィメナ「つまり勘違いで襲ったにもかかわらずホワイティ殿は私を許してくれたのだ」

白竜「いやねぇ、寝ぼけてたから加減ができなくてのう。 聞けば王女様が来るというから待たせて欲しいというたのだ。 わらわも長い事寝てたので最近の事を聞きたかったのじゃ」

ユウ「ホワイティってこのドラゴン?」

白竜ホワイティ「そうじゃ、そう呼んでたもれ」

ショーコ「そんな軽い名前でいいの」

ナナ「ホワイティか。うむフィメナが世話になったの、礼を言うぞ」

ホワイティ「よいのじゃ、これも何かの兆しじゃろう」

トーゴ「はー。俺たちはお前が怪物に捕まったと思って来たのに、無駄足だったか」

フィメナ「いや、そんなことはないぞ……そのウレシカッタゾ、うんアリガト……」ボソボソ

トーゴ「なんだ? 聞こえないぞ」

フィメナ「なんでもないわッ! おりゃああ」ドコォ

トーゴ「ぐぼふぁっ!」

ショーコ「なんて見事な正拳突き」

ユウ「いやまったく」

ホワイティ「おや、トーゴはフィメナのだったか? それは先ほどは申し訳ないことをしたの」

フィメナ「なっ!? まて誤解するな、ちがうぞちがうぞ」

ショーコ「フィメナさんもタイヘンネー」ニヨニヨ

ハル「大丈夫? トーゴ」

トーゴ「さっきから死にそうだぜ……あたた」

ユウ「そういえば貴方ハーフエルフをどうこう言ってたわね。 説明してくれるかしら?」

ホワイティ「ふむ……うろ覚えじゃが……昔ハーフエルフに嫌なことをされたような……気がする」

ユウ「はぁ! そんなんでパパを襲うなんて」

ハル「ユウ、落ち着いて。 もう謝ってくれたし、僕はいいから」

ユウ「でもぉ……」

ホワイティ「まことにすまなかったの……(あの者とハーフエルフがこんなにも親密に…… 時代はかわったのだの)」

ナナ「さて、そう思うならお主が守っていた伝説の武器を渡すのじゃ! わらわは14代目王家の末の王女で二代目勇者じゃ。 今世界には危機が迫っており、わらわにはどうしても伝説の武器が必要なのじゃ」

フィメナ「まだ言ってるんですかそんなこと。 いい加減にしてください」

ホワイティ「ふぅん、王女さまが勇者か……(これも時代の流れかの)」

フィメナ「ほらホワイティ殿も困ってるじゃないですか、そんなモノ無いのですから帰りますよ」ぐいぐい

ナナ「い・や・じゃーーー! 伝説の武器を見つけるのじゃ、隠しておるじゃろう」ぐぐぐ

トーゴ「そういえばナナ王女の目的はそれだったな」

フィメナ「そんなのあるわけないでしょう。 ホワイティ殿も言ってやってください」

ホワイティ「まぁここは武器庫だったから古い武具はいくらかは奥に……」

ナナ「そこじゃ!」 シュタタタタタタ

フィメナ「あ、逃げた! 待てナナーシャ様!!」



トーゴ「あーあ、先にいっちまいやがって。 なぁドラゴン、危険はないのか?」

ホワイティ「そうじゃの……どうだったかのう」

トーゴ「覚えてないのか」

ホワイティ「ずいぶんと眠ってたから思い出すのに時間がかかっての」

ショーコ「本当に奥に伝説の武器があるの?」ワクワク

ホワイティ「まぁ古い武具はいくらでもあるはのじゃ……(しかし何か忘れておるような)」



ナナは床に刺さった古びた両手剣を見つけた。

ナナ「あった立派な剣じゃ、これをもっていくぞよ」

フィメナ「ちょっとそんな見るからに普通じゃないものに触らないでください、呪われてるんじゃないですかそれ!?」

古びた両手剣には何かの護符があちこちに張られており怪しい気配が漂っている。

ナナ「それこそ僥倖じゃ、これほどの剣ならば兄上にも納得させれるじゃろう」

ナナが古びた両手剣に手をのばす。

ホワイティ「ちょっと王女さん、それさわっちゃだめ」

首を伸ばしたホワイトドラゴンが注意を促す。

ナナ「なんじゃ? 問題があるのか?」

ホワイティ「たしかそれ…… んーなんだったかしら」

ナナは古びた両手剣を掴んだ。

ナナ「確かめるのじゃ うむむむ……重い、ぬけぬ」ぐぐぐ

古びた両手剣はびくともしない。

ホワイティ「あら?」

ユウ「……よかった何もなかったのね」

ナナ「くぬぅ……、ならばトーゴよこの剣を抜くのじゃ!」

トーゴ「やれやれ、やはりそうなるか」

ダン「……父上。 俺にやらせてください」

トーゴ「……そうか任せた(また怒っている……のか?)」

ハル「……」プルプル

ユウ「どうしたのパパ?」

ハル「気のせいかな……あの剣はなんだか良くない気がして……」

ショーコ「でも王女には特になにもなかったけど……」

トーゴは古びた両手剣を掴んだ。

ダン「……」がしっ

ナナ「頼んだぞよ、ダンよ」


シャキーン


ダンは古びた両手剣を床から抜きだした。

トーゴ「うーむ、サビまみれでボロボロだな」

ナナ「よくやったのじゃ、ダンあっぱれじゃ」

ダン「うぬぅ……」

ドン

ナナ「きゃっ」

ダンがナナを突き飛ばした。

フィメナ「ナナーシャ様!?」

トーゴ「ダン!? なにしてるんだお前!」

ダン「……」ブン

ダンは古びた両手剣を振りかざす。

トーゴ「な!」

ダンは古びた両手剣をトーゴめがけて振り落した。

ゴーン

切れ味が全く無く鈍い音がした。

トーゴ「お……ぉお、いってぇえええ、何するんだお前!」

ダン「父上の……バカ、アホ! 女ったらしーーッ!!」ブンブンブン

トーゴ「おわっ」

ダン「なんでいつも居ないんだっ父親なら父親らしくしやがれ!」

ナナ「ダン、お主……!?」

ダン「それにいつもいつも女の人に迷惑ばかりかけて、ルソルさんやクスシさんとかフィメナさんとか……ハッキリしろっ! 女の敵かこのスケコマシ親父エロ親父!」

トーゴ「ちょ、おま、何言って…… かなり悲しいぞ俺は」

フィメナ「いいぞもっと言ってやれ!」グっ

ハル「……フィメナさん?」

フィメナ「いや……今のはそうじゃなくてな」アセアセ

ショーコ「どうしたの? 急に反抗期?」

ユウ「……あれは反抗期というか」

ホワイティ「あーーー思い出したぞ。 アレは『勇者の剣』じゃ!」



ホワイティ「古の王国で造られた、手にした者を恐れ知らぬ勇者にする『勇者の剣』……のハズだったんじゃがの」

ユウ「失敗したのね」

ホワイティ「いかにも。 『恐怖』を『勇気』に変換するのに『理性』が犠牲になったのじゃな」

フィメナ「一種の暴走状態か」

白竜「さらに半自律式で剣にも意識があるでの、使用者の精神力やら魔力やらを食い尽くしては別の使用者へ乗り移り次から次へ人を廃人にしてしまうという魔剣なのじゃ」

ショーコ「それで封印されてたのね」

ナナ「しかし、それでは早くダンから取り上げなければダンが……」

トーゴ「だったら、剣を壊してやる」ブンッ

トーゴの剣折りを狙った一撃

ダン「う……ッ、 っらぁ!」ガキン

トーゴ「うおっおおおおおお!? マジか!?」

トーゴの剣が折れてしまった。

フィメナ「な!? 今ので負けるなんて」

ユウ「あの剣……『直って』きている……?」

ホワイティ「まずいな、アレは精神力を糧に硬さと鋭さを増すからの。 はやくなんとかせねば」

トーゴ「ふーふー」

ナナ「ならばわらわがっ」タッ

フィメナ「ナナーシャ様!?」

ダン「ナナ王女…… お前のせいで俺は!」ブン

ナナ「遅いのじゃ」ヒュンヒュン

ショーコ「早ッ!? なんて身のこなし」

トーゴ「まぁ俺が教えたからな。 ナナは素早さだけはピカイチだ」

フィメナ「そのオカゲで誰が苦労してるとおもってるんだ」

トーゴ「げふんげふん」

ナナはダンの腕に斬りつける!

ザシュ

ナナ「スマンの」

ダン「ぐ……腕が……しびれ……」

ハル「痺れ薬? そんなのどうしてもってるの?」

ナナ「護衛用にとトーゴから貰ったのじゃ」

フィメナ「アンタ何持たせてるんだぁーー!!」ドギャン

トーゴ「グワー―っ! ……バレタ」バタン

ユウ「まさかの肘ッ!」

ショーコ「過剰なツッコミがトーゴを襲う」


ナナ「これで剣を持てないじゃろう」

ダン「うぅ……」ブルブル

ダンは腕が痺れて魔剣を取り落しそうになる。

魔剣「ギ……ギア……ムド……ギギ」シュルシュル

魔剣からカニ足が伸びてダンの腕に絡みつく。

ダン「うおおお!」ブオンブオン

ナナ「な!? まだ動けるのか」ヒュン

ホワイティ「いかん、魔剣が体を乗っ取りはじめたのじゃ」

ダン「フーフー!」

ダンは魔剣を王女に向けて振り上げた。

フィメナ「ナナーシャ様!」

ナナ「ぬぅ……!」


ユウ「やめなさい! ダン!!」

ユウがダンの前に立ちふさがった。

ダン「ぐッ……」ピタ

ナナ「む?」

ハル「あ……」

ダン「黙れっ! 命令するな!」

ユウ「……ふぅん、そんな事いうの? ダンが、私に?」スタスタ

ナナ「ユウ、ダメじゃ。 危ないのじゃ」

ショーコ「ユウ!」

ダン「お前だって昔からいつもいつも姉貴ぶりやがって、ガキ扱いするな!」

ダンはユウに向かって魔剣を構える。

ユウ「……で、その剣をどうするつもり。 私に向けるの? ホントに? できるの?」ツカツカ

ダン「だから偉そうにするな!」ブン

ユウ「わ・た・しに剣を向けるのね」

ダン「りゃあ!」ブン

ナナ「危ない!」


ダン「ぐ……くそ」ブルブル

ユウ「よく止めたわね。 でもダンのくせに私に歯向かうなんていい度胸じゃない」

ダン「お、弟扱いするな…よ………俺だって男だぞ!」ガクガク

ナナ「……ダン、おぬし……」

ダン「俺を認めてくれよ、俺を頼ってくれよ、俺についてきてくれよぉ!」

ユウ「前にもいったでしょ、アンタは『弟』としか見れないし、私はそういうガラじゃないって」

ダン「ちくしょう、ちくしょう俺だって俺だって」

ユウ「俺、俺と。 だからいつまでたってもガキなんだって……。 さてと、じゃあこれは没収よ」スッ

ユウは魔剣の切っ先を指で挟む。

ユウ「”帯電”」

バリバリバリ

ダン「ギャアアアアア」

魔剣「ギイィイイイイイイイイイイイ」

カランカラン

魔剣はダンの手を離れた。

ダン「うぅぅ、チクショウ。 姉ちゃんのバ……」ドサっ

ダンは気絶した。



ハル「ちょっとやりすぎだって! ”大治癒”」パアア

フィメナ「ナナーシャ様無事ですか」

ナナ「あぁ、大事ない」

トーゴ「やれやれやっとひと段落か?」

ホワイティ「ふむ、どうなるかと思ったが無事でなによりじゃ。 して魔剣はどこじゃ?」

ショーコ「え? 剣はあそこに黒焦げになって……ないわね」

魔剣「ギギ」カシャカシャ

トーゴ「うげっ歩いてるぞ! 気持ち悪っ」

フィメナ「言ってる場合か逃げるぞ!」

ホワイティ「逃がさん!」

ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオ

ホワイトドラゴンのファイアブレス!

ハル「うわぁ、あっつい!」

魔剣「ギ……」メラメラメラ

魔剣は燃え尽きた。

トーゴ「すげぇ、鉄が溶けたぞ」

ナナ「さすがドラゴンじゃな」

ホワイティ「アツッ……やいぶ弱体化ひておったひゃらの、なんとか燃へたわ……アツツ」

ハル「どうしたの?」

ホワイティ「ひさびさに吹いたはら、ひたしたを焼いたようじゃ」

ショーコ「マジで」



ハルがホワイティの口に体を突っ込んで治癒魔法をしている。

ハル「はい、これで大丈夫」

ホワイティ「うむ、良くなった。 助かったから……この娘をどうにかしてくれぬか? 先ほどから殺気だっておる」

ユウ「貴方がハルを食べない保証はないわ」ゴゴゴ

ハル「終わったから、ほら」

ユウ「ほんとに? 噛まれてない? なめられてない? どこか溶けたりしてない?」ペタペタ

ハル「大丈夫、どこもなんともないから」

ホワイティ「わらわはベジタリアンだと言っておるじゃろう。 しかし本当にお主らは仲がよいのじゃな」

ユウ「そりゃあ、ハルは私のパパたから」ぎゅうう

ハル「う、うん。 だからちょっと離れてよ暑いよ」カア

ショーコ「これぐらい親子のスキンシップよ」ぎゅうぎゅう

ホワイティ「……親子のう」

ショーコ「いつもこんな感じだから。 それにしても、ドラゴンってハルさんがハーフエルフだとわかったらすごい剣幕になったわね。 なにかあったの?」

ホワイティ「うむ、それは……」

ユウ「それは?」

ハル「……」ゴク

ホワイティ「……忘れたの」

ハル「えぇぇ」

ショーコ「何よソレ」

ホワイティ「何しろ長いこと寝てたからの、なんとなーくイヤなことがあった気がするのう。 思い出すには時間がかかりそうじゃ」

ハル「そうなんだ……(でも、やっぱり悪いハーフエルフが居たのかな?)」

ユウ「ふーん、本当? そういえばなぜ貴方はここに居たの?」

ホワイティ「たしか……、誰だったかに先ほどの魔剣の見張りを頼まれたのでの」

ショーコ「昔の王様かな?」 ホワイティ「そんなところじゃな」

ハル「寂しくはなかったの?」

ホワイティ「いや、寝てただけじゃからな」

ハル「そうなんだ」

ナナ「もしや、昔の魔王とか勇者も知っておるのか?」

ホワイティ「……ふむ、魔王か。 きいたことはあるような無いような、人の世には関心が薄かったからのう」

フィメナ「じゃあ勇者は?」

ホワイティ「勇者、ゆうしゃ、ユーシャねぇ。 よくわらわを倒そうとするものはそう名乗っておったが、何人おったかのう」

ユウ「本当の勇者はわからないと言うわけね」

ホワイティ「……そうじゃの」

ナナ「残念じゃ~」

ユウ「フーン…… そういうことにしておくわね」

ホワイティ「……うむ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る