第7話 マイマイ迷子の千年の森 3
◯ハルの夢・ある夜
ドア越しに母エルフが誰かと話している。
母エルフ「……わかりました。 すぐ行きますから少しだけ時間を」
男エルフ「わかりました、しかしお早目に」
ハル「おかあさん?」
父「どうした?」
母エルフ「あなた、ハル、ごめんなさい起こしてしまって。 一族の大事な用事で行かないといけなくなったの」
父「戻れるのか?」
母エルフ「……ええ、きっと。 ……ハル」ぎゅう
母エルフはハルを抱きしめる。
ハル「おかあさん?」
男エルフ「姫様、そろそろ……」
母エルフ「……はい」
◯ ハルの夢・燃える山の家
父「なぜこんなことを!? あいつはどうなったんだ教えてくれ!!」
男エルフ「貴様らのような人間がいるから姫様はあのような目に "風刃"!」ズバッ
風の刃が父を襲う。
父「うわああ」
ハル「お父さん!?」
男エルフ「こんな汚らわしい子供まで生ませおって」
父「やめろ。 その子まで巻き込むな」
男エルフ「ふん貴様ら等、狩る価値もない。 狼にでも食われるがいい」
○ ハルの夢・山の川辺
ウオオーン
ハル「あぁ、おとうさんケガが……」
父「ハル……、オバさんのところへ行くんだ」
ハル「お父さんもいっしょにだよね、いっしょに……」
父「いいか、俺は血の匂いがしている。いずれ狼に追いつかれる。 一緒だと危ないんだ」
ハル「そんなお母さんも戻ってないのに、お父さんも一緒にきてよ」
父「……(この出血では助からない)わかってくれ。 さぁこれをしっかり掴め!」
父は ハルを縄で木箱から落ちないように結んだ。
ウオオーン ウオオーン
狼が集まってきた。
ハル「いやだお父さんお父さん」
父「いいか橋がみえたら町だ、大声で助けを呼ぶんだぞ」
父はハルを川に突き飛ばした」
ザザザザ……
ハル「お父さんお父さん!」
「うわあああああああああ」
ウオオーン
◯迷いの森、早朝
ハル「お父さんお父さん!」
ユウ「パパ!?」
トーゴ「ハル!? なんだ、どうした!?」
ハル「父さん……母さん……。 ううう」ポロポロ
ユウ「またあの夢ね。 パパ、落ち着いて。 私が居るわ」ぎゅう
ハル「うう、ううう」ポロポロ
ルソル「大丈夫ですか?」
ユウ「えぇ、起こしてしまってごめんなさい」
フィメナ「な!? なんだ貴様らは!!」
トーゴ「今度はなんだ?」
ダン「父上! 小人が小人がいます!」
小人A「お前、姫様の子供だな」
ハル「姫……お母さんのこと?」
小人B「そうだ、おいらたちは姫さまに仕えている」
ユウ「つかえるって、ここに居るの!?」
小人C「そうだ、絵のオンナよ」
トーゴ「絵のオンナ?」
小人A「ついてこい、会わせよう」
小人B「教えよう」
小人C「時間あまりない」
◯枯れ木の森
フィメナ「この森はなんなのだ? エルフ族の森か?」
小人A「昔はエルフ族の森だった」
トーゴ「今は違うのか?」
小人B「そうだもうエルフ族はいない、姫さまだけになった」
ハル「どうしてそんなことに」
小人A「昔のことだ、人間の兵隊がエルフ族の森に攻めてきた」
フィメナ「兵隊が? こんな山奥に出兵した話なんて聞いたことはないが」
トーゴ「隣国の兵隊じゃないのか? 戦争中ならありえる話だ」
小人B「人間は姫さまの森の術でようやく追い払うことができたが半分くらいはやられてしまった」
ハル「生き残った人たちは、お母さんはどうなったの?」
小人C「森の術を使った姫様はそのまま眠った、眠ったまま。 そして残されたエルフ族は少しずつオカシクなっていった」
ユウ「おかしくって?」
小人A「残ったエルフ族は森に入る人間を襲うようになった」
ハル「……」 ユウ「……パパ」きゅ
小人B「何年も何年姫様は眠った。 そのせいでエルフ族は何年も何年も人間を憎んだ」
小人C「憎しみで、どんどんオカシクなった。とうとう人間の村を襲った」
ハル「エルフ族が人間の村を!?」
トーゴ「しかし、この数十年エルフ族と争った記録はないが」
小人B「襲ったのは近くのこの村だからだ」
ハル「この村?」
◯滅びた村
トーゴ「こんな所に村があったとは」
小人A「ここがエルフ族が滅ぼした村だ」
フィメナ「……あの山、この地形。 ここが王女が言った目的地だ」
ルソル「こんな寂しいところになにかあるんでしょうか?」
小人C「おい、絵のオンナ。 こっちだ、お前の絵がある」
ユウ「……こっち?」
○崩れ落ちた教会跡
壁にユウによく似た壁画が描かれている
ハル「……この絵」
トーゴ「……よく似てるな」
ルソル「なぜユウさんの絵がここに?」
小人A「そうだそうだ。 なんで、お前の絵がある?」
ユウ「ふぅん、……ここに私の一族が暮らしていたのね」
ダン「ユウはこの村の生き残り……」
ルソル「じゃあ、この絵は? 誰なんです」
フィメナ「おそらく一族の祖先なんだろう。 いくらなんでもこの絵は古すぎる、ユウ君のはずはない」
トーゴ「そんなとこだろうな。 しかしユウが生き残りだとするとここが襲われたのは」
ハル「僕がユウを拾った。16年前……」
ユウ「……」
○
トーゴ「エルフ族はこの村を襲った後どうしたんだ? 姫様はどうしているんだ?」
小人A「エルフ族がこの村を滅ぼすと恐ろしいモノが出てきた」
ユウ「村から、恐ろしいモノ?」
小人B「思い出すだけで恐ろしい」ブルブル
小人C「あれにエルフ族も滅ぼされてしまった」ブルブル
ハル「ねぇ、母さんは? ここに居るの?」
小人A「姫様いる。 もっと奥に居る」
小人B「そうだ、時間ない。 早く」
小人C「いそげいそげ」
○滅びた村、最奥の祭壇
フィメナ「これはなんだ? 墓か?」
トーゴ「墓というより……なにかの祭壇か?」
小人A「ここから恐ろしいモノ出てきた」
ルソル「ここから……、深い穴ですねーなにが出てきたんです?」
小人B「よくわからない、とにかく恐ろしかった」
ユウ「あんな小さな村にこんな大きな祭壇、……邪教でもしてたのかしら」
ハル「……それは無いと思うよ。 ここすごく清らかだ、何かの聖地なんだと思う」
トーゴ「だったらなぜ恐ろしいモノが?」
ハル「推察だけど。 閉じこめていたのかもしれない、何か悪いものを」
小人C「お前達、いそげ。 姫様この先」
○朽ちかけた大樹
小人A「ここだ、姫様今も眠っている。でも少しだけ起きれる」
小人B「姫様姫さまー」
小人C「姫様の子どもをおつれしましたー」
小人達は大樹に向かって呼びかけている。
トーゴ「どうした? エルフ族の姫様はどこだ?」
小人A「ここに居る。 目の前」
ユウ「それって……」
ハル「目の前って、この木が? お母さん!?」
小人B「そうだ姫様は森の術使いすぎたので森になって休んでいる」
ハル「そんな!? お母さんおかあさーん」
朽ちかけた大樹「」
ユウ「パパ……」
トーゴ「ハル……」
ハル「やっと見つけたのに! 会えたのに! 話せないの!? 僕にはユウっていう子供もできたんだよ、なのになんでこんなことに!? どうしてこんなにボロボロなの!? ねぇ!!」
小人C「それは……」
「グゥオオオオオオオオォォン」
トーゴ「なんだ!? 今の音は」
フィメナ「獣か?」
小人A「奴だ! とうとうきた!!」
ユウ「ヤツって?」
小人B「よくわからない、逃げろ! 人間ではアレに勝てない」
ハル「でも、母さんが」
朽ちかけた大樹「」ゴゴゴゴ
ルソル「……木が、動いてる」
ダン「うわぁ!? まわりの木も!?」
辺りの木々はトレントとなり一斉に歩き始めた。
小人C「姫様、森になってアレと闘う。 アレと闘うため森のまま」
○
「グオオオオォォン」
小人A「奴がきた」
ルソル「なにあれ!?」
トーゴ「なんだありゃ!?」
木々をなぎ倒して目玉のある大きな芋虫があらわれた
一つ目ワーム「グオオオオォン」
フィメナ「芋虫ぃ!?」
ハル「なにあれ!? なんて禍々しい、怖い」ブルブル
小人B「アレがいるとまわりの動物もおかしくなる、恐ろしい」ブルブル
ユウ「ここ最近の事件はアレが原因のようね」
ドドドドド
トレント達が一つ目ワームに襲い掛かる
トーゴ「すげぇ、まさしく"生きる森"だな」
一つ目ワーム「グオオ!」
大樹トレント「」
バキバキバキ
小人C「だめだ、姫さまは何度何度も止めたけど、最近ではアレの方が傷が癒えるのが早い、最近はずっと早い」
小人A「このままでは姫さまが持たない」
ブオオオオオオオォ
一つ目ワームは激しいほのおを吹いた!
トレント達「」ボォオオ
一つ目ワームのなぎ払い!
大樹トレント「」ドォオオン
大樹トレントは吹き飛ばされ動かなくなってしまった。
ハル「あぁ! おかあさーん」
トーゴ「なんて奴だ、虫のくせに」
フィメナ「我々も加勢するぞ!」
トーゴ「仕方ないな、お前ら怪我するなよ」
ルソル「はい、たいちょー」
ユウ「私たちも」
ダン「おう」
ハル「みんな気を付けて!」
小人A「やめろ、人間ではかなわない」
○
一つ目ワーム「グオオオォン」
トーゴ「よく見ろ、デカいだけあって簡単に見きれる」ズバッ
フィメナ「フン、デカいだけだな」ザシュッ
ルソル「まってくださーい」コケ
一つ目ワームははげしい炎を吐き出した!
ゴオオオオオォオ
ユウ「危ない!」
ハル「"風防波"」 シュルル
風の盾が炎を遮る
ルソル「ひゃわわ」
一つ目ワームのなぎ払い
ダン「危ない!」
ダンはルソルとハルをかばった
ドォオオン
ダン「ぐぅ」
ダンはかろうじて攻撃をそらした。
ハル「大丈夫! "治癒"」
ダン「危なかったです」
ルソル「あ、ありがとう」
フィメナ「あれでよく死ななかったな!?」
トーゴ「よくやった」
ユウ「あんたダンに……よくもやってくれたわね "落雷"」
ピカッガラガガラガラッ!! ドドーン
一つ目ワーム「グオオオオオオオオオオオオ」
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