第7話 マイマイ迷子の千年の森 2
○深い森
ハル「ここから先は僕も行ったことないんだ。 気をつけて」
トーゴ「わかった、大丈夫か? 疲れてないか?」
ハル「ありがとう。 ただなんだか妙な空気なんだ」
ルソル「なに? 幽霊ですか?」
ハル「ち、違うよ。 悪い感じはしないからそういうのとは違うと思うけど、なんだか違和感があるんだ」
フィメナ「とにかく油断せずに行こう」
怪しい霧が辺りにたちこめる
○
ピコーンピ―ップツン
ユウ「ああ!? 反応がなくなったわ急いで! 」
ダン「なんだ? 故障か?」
ユウ「わからないわ、とにかく最後の反応のところまでいって、この先よ早く」
ダン「あまり近づくと気づかれるんじゃ」
ユウ「いいから、早く行って!」
○深い森
フィメナ「霧が出てきたな」
ハル「だいぶ高い所だし雲なのかも」
ルソル「へー、雲って霧みたいなんですね…… わたがしみたいな物かと思ってたのに……」
トーゴ「お前いくつだ。……しかし陽射しは無いがのどが渇くな」
フィメナ「お前は昔から飲みすぎなんだ。 ほら、すこし軽くしてくれ」ちゃぷん
トーゴ「助かる」ゴクゴク
ルソル「ところで聞いちゃいますけど、フィメナさんってたいちょーと付き合っていたんですか?」
トーゴ「」ブハッ!
フィメナ「ななな、何をいいんだすだね君は!?」
「うわぁ、冷たい」「ゲフッ、スマン。 ゴホ」
ルソル「えー、だって先輩たちが『昔のオンナが来た』とか『年貢の納め時だな』って言ってて……」
フィメナ「違う、ただの騎士団訓練性時代の同期だ」
ルソル「あ、そうなんですかぁ。よかった」
トーゴ「あいつら、あとでぶっ飛ばそう」
パカパカ
フィメナ「コホン、えーところで君。 これは例えだがアイツのような奴はやめておいた方がいいぞ」
ルソル「むぅ、なんでですか?」
フィメナ「あれは無責任だし変なところ頑固だ、妙な約束はしっかり守るくせに規律は守らないしな」
ルソル「そうですねー、この間も副隊長に叱られてました」
フィメナ「へぇ、なにがあったんだ?」
ルソル「実はですねー、ごにょごにょ」
フィメナ「相変わらずだな、訓練生の時もこんなことが……ボソボソ」
トーゴ「オマエラ、せめて他所でやれよ」
ハル「そうだねー、トーゴは子供の頃からそういうところあってねー」←幼馴染
フィメナ「ほう、なんだ?」
ルソル「ききたいききたい」
トーゴ「誰か助けてください……」
○
ピコンピコン
ユウ「止まって、変だわ」
ダン「どうした?」
ユウ「また反応が出たけど、見てよコレ」
ダン「なんだこれ止まってる? それに『ここ』じゃないか?」
ユウ「そうよ、これなら追いついているはずなのに」
ダン「しかし、こんな短時間に追いつける距離じゃなかったぞ」
ユウ「そうよ、だから変だって。 ……おかしい、なにかがおかしいわ」
○
ハル「……?(なんだろう妙な気配を感じるけど、おばけ!?)」ブルッ
トーゴ「深い森だな、そろそろ野宿する場所も探さないとな」
ルソル「それにしても静かですねー」
フィメナ「たしかに、しばらく魔物も出てきていないしな」
ハル「なんだろう、気配はあるんだけど……。 あ、この先に誰か居るよ」
トーゴ「エルフ族か?」
ハル「まって、ええ? ……そんなどうやって」
ユウとダンがハルたちの前に現れた。
トーゴ「なんでお前たちがこんな所にいるんだ!?」
ダン「父上こそどうして背後から!? ずっと先に行っていたはずでは」
ハル「ユウ! やっぱりついてきてたんだね」
ユウ「ごめんなさい、でもここから帰れなんて言わないよね?」
ハル「ん~~も~~~。 仕方ないなぁ」
フィメナ「しかしどうやって先回りを?」
ユウ「それね。 多分だけど、……ダンあんたこの先まで馬で走ってみて」
ダン「ん? 何故だ」
ユウ「いいから、早く」
ダン「お、おう」
ダンは馬で駆け出した。
パカラパカラッ
フィメナ「こんな所で単独行動は……」
ユウ「いいから、後ろに注意して」
ルソル「うしろ?」
パカラパカラ
ダンが後ろからあらわれた。
ダン「うおぉお!? どうやって先回りしたんだ」
ユウ「やっぱり、ここループしてるわね」
ハル「それで違和感があったんだ」
トーゴ「なるほど、なにかの結界とか魔法とかか」
フィメナ「それこそエルフ族とか、か?」
トーゴ「かもしれんな」
ルソル「えー怖いですねー、帰りましょうよ」
トーゴ「ビビるな、大したことない」
ルソル「でも無限ループって怖くないですかぁ?」
○夜、迷いの森
ルソル「なんだかキャンプみたいですねー」
ハル「ホントだねー」
ハルたちが食事の準備をしている。
トーゴ「あいつらはお気楽でいいなぁ」
フィメナ「大丈夫か? こんな所で野営とは」
トーゴ「幸い魔物は出てこないみたいだし、朝になるまで動けんよ」
ユウ「それでも交代で見張りをたてないと」
トーゴ「そうだな、俺とフィメナとルソル、ユウ達はちゃんと休んでくれ」
ダン「俺もやります」
トーゴ「……お前も休んでおけ、疲れただろう」
ダン「いえ、大丈夫です。 やらせてください」
トーゴ「……わかった、お前は最後でいいか?」
ダン「……ハイ」
ハル「ご飯できたよー」
ルソル「わたしたちの自信作ですよー、はやく食べましょ」
トーゴ「お前はつまみ食いしてただけじゃないのか?」
ルソル「ち、違いますよ。 毒見と味見とテイスティングです!」
トーゴ「全部食ってるじゃねーか」
○ 深夜
たき火が辺りを照らしている。
パチパチ
トーゴ「……(静かだ、みんなよく寝てるな)」
ダン「ぐーぐー」
ユウ「すーすー」
ハル「すやすや」
フィメナ「……」
ルソル「すぴーすぴー……ぅふひ」
トーゴ「……(ニヤケやがって、どんな夢みてるんだか)」
トーゴ「……(子供っぽいルソルと大人っぽいハル。 ふむ、ハルは世話好きだしな)」
トーゴ「……(しかしそうなるとユウは、……ダンか。 まぁ尻に敷かれるな)」
トーゴ「ふっ……(そうしたら、フィメナ。 こいつだけ余ってやがる。 ざまぁ)」くっくっく
トーゴ「……(いや、俺もか。 ……暇だと余計なことばかり考えてしまうな)」
○
トーゴ「……フィメナ、起きろ。 交代してくれ」ぺチペチ
フィメナ「貴様!」ブオン
フィメナの寝起きアッパー。
トーゴ「あぶな!? 落ち着け、交代だ」
フィメナ「ぁ。 ああ、そうだったなすまない」
トーゴ「さて、寝るか。 後は任せた」
フィメナ「まて! その、少し話さないか」
トーゴ「……なんだ、説教か?」
フィメナ「いや……その……」
トーゴ「?」
ダン「ぐー」
フィメナ「うん、そうだ。 ダン君も立派になったな」
トーゴ「まぁ、腕はそこそこ立つようになったが。 ……まだまだ未熟だ」
フィメナ「そうか? もう立派な騎士になれるぞ」
トーゴ「……お前まさか、……そんな年下が趣味だったのか!?」
フィメナ「な!? 違うわバカ! そうじゃなくて、モナさんが亡くなって随分経ったな」
トーゴ「……あぁ、そうだな。 こいつもこんなにデカくなったしな」
フィメナ「だから、もうダン君も手がかからなくなったしだな。 その……もういいんじゃないか?」
トーゴ「なにをだ?」
フィメナ「いや、その……お前がまだモナさんの事を想ってるのならそれはそれで構わない。 いや私は構うのだが構わない。 そうではなくてだな、いつまでもそのままというわけにはいかないのではないか? つまりだな……」ごにょごにょ
トーゴ「……どうした、なんだ? らしくないぞハッキリいえよ」
フィメナ「そのだからだな……私はお前のこ……こ……」
トーゴ「うん?」
フィメナ「こ、近衛兵に戻らないか!」
トーゴ「なんだ、仕事か」
フィメナ「……ッ……ッ!(違うそうじゃない!)」アウアウ
トーゴ「俺は今の方が気楽で合ってるよ。 それともアレか、俺に王女のお守を返上したいのか?」
フィメナ「いや、いまのはちがくてな。 いいか、よく聞けコノヤロウ!」
トーゴ「なんだどうした? 顔真っ赤だぞ」
プワーン
フィメナ「大じょうぶだ、いいか。 わたしはな、……おまえのこと……ぉふ」バタン
フィメナは眠ってしまった。
トーゴ「おい、どうした大丈夫か。 お前が見張りの番だぞ、寝るな!」
プワワーン
トーゴ「ぬぅう……(なんだ? この甘ったるい匂いは)」パタン
トーゴは眠ってしまった。
「やっとネタ。 こいつらナニしにきた?」
「こいつエルフ族か?」
「こいつ…… 絵のオンナだ、なんで絵のオンナがここに居る?」
「こいつらナニモノ?」
「シラベル、ゆめみでシラベル」
◯
「このオンナは苦労してるな」
「このオトコ、、オンナの敵だな」
「あぁ、甘いもの食べたくなった」
「このオトコ、健気だ。うう」
「絵のオンナは…… このエルフのコドモ?」
「このエルフのコドモは、どうかな」
◯ハルの夢、山の家
ハル「おとうさん、おかえり? オバさんのところいってたの?」
父「あぁ、そろそろお前にも薬草取りを手伝ってもらわないとな」
ハル「たくさんおぼえたんだよ、おかあさんにも教えてもらったし」
母エルフ「このこったら」
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