第6話 ユウの一番長い日 2

○昼、ハルの喫茶店

カランカラン

ハル「ふー、治ってよかった。 ただいま」


シーン


ハル「あれ? 出かけたのかな? ユウ―?」

パタパタ

ハルはユウの部屋に入った。

ユウ「すやすや」

ハル「あ、ユウ。 こんなところで寝ちゃお腹冷やすよ。 ユウー」

ユウ「すやすや」

ハル「うーん……(起きないな、そういえば昨日は遅くまで宿題をしてたんだっけ? せめて何か毛布を)

そー

ハルは毛布をユウにかけた。

ハル「……(食事ができるまで寝かしておこうかな?)」



ハル「……(お昼も出来たしそろそろ起こさないと)」

パタパタ

ハルはユウの部屋に入った。

ハル「ユウー」

ユウ「うぅん」ゴロン……、バサッ

寝返えりで毛布が落ちる。

ハル「あ」ドキッ

ユウは眠っている。

ハル「……(こうやってみるとおっきいなぁ。 ……いつのまにこんなに)」

ドキドキ


農夫「ハル坊おるかーー!?」

ハル「うわぁ!!! いい、いるよ。 どうしたの!?」

農夫が1階から大声で叫ぶ。

農夫「水路にスライムが詰まって大変なんだ、手伝ってくれ」

ハル「わかったすぐ行くよ」

ユウ「うん?」

ハル「あ、起きた? ちょっと手伝ってくるから、先にお昼食べてて」

ユウ「あ、パパ。 あたしも」

ハル「いいよいいよ。 疲れてるでしょ、ゆっくりしてて」

どたどた

ユウ「なんで今日に限ってこんな……、パパ……」


○夕方、ハルの喫茶店

ハル「はー疲れた、今日は忙しかったな」

ユウ「パパおかえり、大丈夫?」

ハル「うん、今日は朝から忙しかったね。 あ、夕飯も作ってくれたの、ありがとう」

ユウ「当たり前よだって今日は」

トーゴ「ハルー、ゴブリンがでた!! 手を貸してくれ」

ハル「また!? わかったすぐ用意するから、ユウごめん先に……」

ユウ「もーーーーーーッ!! なによ朝から!! ホントに今日に限って!!」

ハル「ユウ!?」

トーゴ「どうした!?」

ユウ「どこ! ソッコーで片付けるわ!!」


◯スイカ畑

ユウ「"閃熱"! なによスイカ泥棒って "炸裂"! ふざけてんの "雷撃"!」

ヒュゴオオオ ドォオン バリバリバリバリ

ゴブリン達に魔法が降り注ぐ。

「「「ギャアアア」」」

トーゴ「……こりゃ、ヘタに手を出せんな、 ルソルの具合はどうだ? 何度もすまんな朝から」

ハル「気にしないで、こういう時もあるよ。 "治癒"」パァア

ルソル「うう、たいちょーあたしもうだめです最後に広場の店の限定パンケーキを……」

トーゴ「お前、横っ腹に穴あいてるんだぞ」

ハル「ふぅ、これでとりあえずだいじょう……」パタ

ハルは倒れてしまった。

トーゴ「おい、ハル!?」

ユウ「え!? パパ? パパー!?」


◯帰り道

ユウがハルをおぶって歩いている。

ハル「すーすー」

ユウ「よいしょ……(寝てる、朝からドタバタだったし仕方ないわ)」

ハル「すーすー」

ユウ「昔は私がこうやっておんぶされてたよね、パパ」

テクテク

ユウ「私がパパの身長越したとき……結構ショックだったでしょ?」

ハル「すーすー」

ユウ「あの時言ったよね『ユウのパパでいたいって』……ふふ」

テクテク

ユウ「結構ショックだったのよ、私もね……」

ハル「すーすー」

ユウ「うん……(わかってる……わかってるわ)」


○深夜、ハルの部屋

ハル「うぅん、あれ? ここ僕の部屋だ。 いつの間に……」

ユウ「すやすや」

ユウは眠っている。

ハル「……そっか運んでくれたんだ。 ありがとう」

ハルはユウが手にしている小包を見つけた。

ハル「んと、これは? 『パパへ――』 ……そっか、すっかり忘れてた」


◯兵舎

トーゴ「やれやれ、今日は大変だったな。 おーい、後処理は済んだか?」

兵士A「はい、あと言われたようにゴブリンとカエルの死体を保管しましたが。 あんなのどうするんです? 臭いんですけど」

トーゴ「あぁ、この報告書と一緒にして王都へ届けてくれ。 王都の奴ら以前の報告を信じなかったしな」

兵士A「了解です」

トーゴ「そっちは大丈夫か? 引継ぎは終わったか?」

兵士B「はい」

ルソル「はーい、おわりましたー」

トーゴ「やれやれ、やっと帰れるな。 ……しかしなにか忘れてるような」

ルソル「たいちょー、がんばったあたしへのご褒美じゃないですか? 大通の店のバアムクーヘンってすごく美味しいんですよ、今度おごってくださいよ」

トーゴ「あー、そうだ。 しまった忘れてた……」

ルソル「あの、聞いてます? 無視しないでください、たいちょ~」


○トルマンの家

トルマン「なんだって!? お前知ってたならどうして教えてくれなかった?」

ショーコ「なによー、もう。 知ってたんじゃなかったの? ま、いいんじゃない親子水入らずで」

トルマン「お前恩人の大切な日だぞ、明日でも皆にも知らせて盛大にせねば!!」

ショーコ「……(まぁ、こうなると思って言わなかったんだけどね)」


◯翌日、ハルの喫茶店

ショーコ「ハルさん、1日遅れだけど誕生日おめでとう」

ハル「ありがとううれしいよ」

ショーコ「あと、先にいっとくけどゴメンね」

ユウ「何が?」

カランカラン、ドタドタドタ


トルマン「おぉ~兄弟よ! 昨日が誕生日だったんだな知らなくて済まなんだ。 遅れた分盛大に祝ってやるぞ!!」

ハル「あ、トルマンさん。 そんなの気にしなくてもいいのに……」

トルマン「わしの気がスマンのじゃ、よーし運び込めわしからの祝いだ」

ガヤガヤガヤ

大量の料理とケーキ。そして使用人よって店内が飾り付けられていく。


ハル「ちょ、ちょっと」

ユウ「……止めようがないわね」

カランカラン


トーゴ「ハル、お前昨日が誕生日だったよな、遅れたが祝いだぞ」

ハル「トーゴも来てくれたの? ありがとう」

ルソル「昨日はお世話になりました~。 これどうぞここのマフィンは絶品なんですよ~」

トーゴ「お前は自分の食べたいモノ持ってきただけだろ」

ハル「ありがとう今日は休みだったでしょ、よかったら食べていって。 こんなに食べれないし」

ルソル「やったー」

トーゴ「すまんな」

カランカラン

農夫「おー、ハル坊。 昨日が誕生日だったってな。 なんもないけどウチで採れたもんだ食ってくれ」

ハル「うわぁ、こんなにありがとう。 さっそく料理するから」

ユウ「ダメよ、パパの祝いなのよ。 私がやるわ」

カランカラン

クスシ「なんだか賑やかねー、なに? 合コン?」

ユウ「してないわよ。 パパの誕生日祝いよ、一日遅れだけど」

クスシ「そっか。 ハルおめでとー、いくつになったんだっけ」

ハル「えっとね、61歳になったよ」


ショーコ「……(……みえない)」

クスシ「……(なんという年齢詐称)」

トーゴ「……(オヤジと変わらん)」


ショーコ「あ、ハルさんその首飾りってもしかして?」

ハル「うん、ユウのプレゼントだよ」

ユウ「王都で買ったアミュレットよ、守護魔法がかかってるからご利益抜群よ」

ハル「そうだね不思議な魔力を感じるしキレイだよ」

ユウ「気に入ってくれてよかったわ」

ハル「ありがとう、大事にするよ」


ショーコ「で、アレも仕掛けたの」ボソボソ

ユウ「えぇおかげさまで、パパには言わないでよ」ボソボソ

ショーコ「モチのロンよ」ボソボソ



ユウ「今年は賑やかな誕生日になったわね」

ハル「うん、みんなに感謝しなくちゃ」

ユウ「えぇ」

ガヤガヤ

ハル「ねぇ、ユウにも感謝してるよ。 君と出会った時から僕の世界は変わったよ」

ユウ「そうなの?」

ハル「うん。 ……僕の所に来てくれて、僕をパパにしてくれてありがとう」

ユウ「……私だってパパに感謝してるわ。 世界で一番パパが好きよ」ギュウ

ハル「むぐっ、ちょっとギュウってしないで。 もう」


第6話 ユウの一番長い日 おわり

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