第6話 ユウの一番長い日 1

○早朝、ハルの部屋


バタン

ユウ「パパ、朝よ起きて」

ユウが部屋に入ってきた。

ハル「スースー」

ユウ「パパー、起きて。時間よ準備しないと……、起きないと食べちゃうよー」ボソ

ハル「スースー」

ユウ「はむ」

ユウはハルの耳を甘噛みする。

ハル「う、うぅん……」

ユウ「はむはむ、ん~(不思議と美味しいパパの耳……)ペロペロ 」

ハル「うん、ぁん……んひゃあ!? なに? ユウ!!??」

ユウ「あ、起きた? パパ朝よ」

ハル「もう耳食べないでって言ってるでしょ! 子供じゃないんだし」

ユウ「だって、つい。三つ子の魂なんとかっていうでしょ。ほら着替えなきゃ」

ハル「……うん。 あ! ちょっと!? 一人で着替えるからでてって」ぐいぐい

ユウ「え、そう? わかったから押さないで」

ハル「いいからはやく」ぐいぐい

バタン


ユウは廊下に出されてしまった。

ユウ「変ね……。 ってこんな時間、行かなきゃ」


○朝、川原


ユウとダンが剣術の訓練をしている。

カキンカキン

ユウ「はあ!」

カキーン

ダン「む、まいった」


ユウ「……あんた、本気出してないでしょ」

ダン「いや、そう言われてもな。 充分本気だぞ」

ユウ「う・そ、まったく、これじゃ訓練にならないじゃない」

ダン「しかし、どうしたんだ急に朝練に付き合えなんて」

ユウ「べつに……最近運動不足だっただけよ」

ダン「うむ? そうか」

ユウ「私もまだまだなのよ……(この前の奴、剣だけじゃ勝てなかった)」

ダン「そうか……? しかしそろそろ戻ろう腹が減った」

ユウ「ちょっと顔洗ってくるわ」

ユウは河原へ歩く。

ガサッ

大カエル「ゲコゲコ」

ユウ「ん?」

草陰から大カエルがあらわれた。

ピュッ

ユウ「きゃ」

大カエルの舌がユウの足を絡め取った。

ダン「デェイ!!」

ズバン!

大カエル「グペペペぺ」バタバタ

大カエルは逃げ出した。

ダン「大丈夫か?」

ユウ「ほらぁ、その踏み込み、さっきと全然違うじゃない! まったく」

ダン「あぁ、その……。 すまん」

ユウ「もういいわ、朝食にしましょ」


○ハルの喫茶店

ハル「あ、おかえり。 朝ごはん出来てるよ」

ユウ「先に着替えてくるわ」

ユウは2階に上がって行った。

ハル「そう、はいダン君お茶」

ダン「どうも……(うまい)」

ハル「はい、出来立てだよ。 ベーコン2枚でいい?」

ダン「はい」

カチャカチャ

ダン「むぐむぐ……(これもうまい、こんな朝飯久しぶりだな)」

ハル「もう、汗かいてるじゃない。 はい、これで拭いて」

ダン「あ、どうも」

ふきふき

ダン「ふむ……(タオルが柔らかいしいい匂いがする)」

ハル「おかわり欲しかったら遠慮せずにいってね」

ダン「はい(母親が居たらこんな感じだろうか? まぁ、ハルさんは男なのだが)」

ハル「ユウが急に付き合わせてごめんね。迷惑じゃない?」

ダン「そんなことないです、日課のついでですから」

ハル「そっかありがとね」

ユウが2階から降りてきた。

ユウ「ダン、あんた先に食べてるの? ずうずうしいわね」

ダン「ゴフ。 うむ、すまん」

ハル「なにいってるの遅いのはユウでしょ、ほら座って。 ベーコン半分?」

ユウ「半分よ」

ハル「年頃なんだからもっと食べないと。 ダン君食べる?」

ダン「いただきます」



カランカラン

クスシ「ふぁああ、ハルおはよー」

クスシがネグリジェであらわれた。

ハル「ちょっと!?」

ダン「」ブハ

ユウ「……また二日酔い?」

ハル「ちょっとクスシなんてかっこうなの、ちゃんと服着なさい」

クスシ「いいじゃない、いつものことなんだし。 あらーいい男じゃない? なに? 彼氏?」

ユウ「なにいってるのダンよ」

クスシ「あら~、ダン君か大きくなったわねー」

トーゴ「は、はい」カァア

ユウ「ちょっとそんなカッコでウロウロしないで早く着替えて」

クスシ「はいはい、わかったわ」

カランカラン

ユウがクスシを連れて出ていく。

ハル「えーと、ごめんね。 だらしなくて」カアァ

ダン「いえ……はい」カアァ


◯薬屋・クスシの部屋

クスシ「あー、メンド」

ユウ「ほらちゃっちゃっと着替えて、これでいい?」

クスシ「なーんか最近ハル厳しくない?」

ユウ「……今のはダンもいたからでしょ」

クスシ「いや、さっきのだけじゃなくて。 ここのところ厳しいというか、ちょっと変じゃない?」

ユウ「……やっぱり、クスシもそう思う?」

クスシ「やっぱり?」


○トルマンの家、ショーコの部屋

ユウ「とかなんとかあってね最近パパの様子が少し変なのよ」

ショーコ「ふーん」

ユウ「聞いてるの? ショーコ」

ショーコ「ああ、宿題!?」

ユウ「あなた、『ちょっと参考までに』とかいいながら丸写ししてるでしょ」

ショーコ「してないしてない」

ユウ「ウソね、やめてよすぐにバレるじゃない、もう」

ショーコ「それでなんの話だっけ」

ユウ「パパの様子がおかしいの」

ショーコ「ふーむ、ハルさんがね。それは……、ハルさんもオトシゴロなのよ」

ユウ「……はぁ?」

ショーコ「あたしも弟がいるからわかるわよそれくらい。 あちこち生えたり伸びたりイロイロ気になりだす頃よ」

ユウ「そんな……だってパパよ」

ショーコ「ハルさんもオトコノコでしょ、いくらエルフ族でもまったく成長しないわけじゃないでしょ?」

ユウ「そりゃ……、そうだけど」

ショーコ「ユウも娘として親の成長は喜ばなくちゃ、って。言ってて違和感すごい」

ユウ「……あ~、いやだ。 パパもダンみたいにむさ苦しくなるのかしら」

ショーコ「そうねー、もうしばらく見てたらわかるんじゃない? それよりコレ、やっと届いたわよ」

ショーコは小包を渡した。

ユウ「よかった間に合ったわ、ありがとう。 帰ったらすぐに組みこまないと」

ショーコ「あたしも明日行っていい?」

ユウ「ダメよ。 二人っきりで過ごすんだから」

ショーコ「……忠告だけど、無理強いするとトラウマになるわよ」ウヒヒ

ユウ「」ス

ユウのアイアンクロー! ショーコの頭が締め付けられる!!

ユウ「あなたねぇ、パパの事でからかわないでくれる!! 手加減出来ないから」

ギリギリギリギリ

ショーコ「ぎゃああああ、だってエエエエエエエエエ! ギブギブ!」

ユウ「まったく」

ショーコ「あたー、暴力はいけないとおもいます」

ユウ「口は災いの元よ。 まったく、私とパパは家族なの、そんなことしないわ」

ショーコ「でも、血は繋がってないでしょ」

ユウ「…………それでもよ。 私はパパの嫌がることは絶対にしないの」

ショーコ「へー、ほー。 でもさ、もしハルさんの方から来たらどうするの?」

ユウ「パパからってそんな、そんな事あるわけないじゃない」

ショーコ「でもねー、オトシゴロだしねー、ソロソロねー、アルカモネー」

ユウ「うーん……(年頃だからってあのパパが)……ん?」

ショーコ「」ニヨニヨ

ユウ「なーにーよーその顔は!! あなたやっぱりからかってるでしょ」

ショーコ「バレタ―」


○ハルの喫茶店

カランカラン

ユウ「ただいま」

ハル「おかえり、宿題はかどった?」

ユウ「んーん、そうでもないかな。 そうそう今日は遅くまで宿題するけど気にしないでね」

ハル「そうなの? 夜食つくろうか?」

ユウ「いらないらない!! 自分でやるから。 パパは先に休んでていいから」

ハル「そう? とりあえず夕飯たべようか。 今日はシチューだよ」

ユウ「ありがとう、パパ」


○翌日早朝、ハルの部屋

ギィィ、パタン

ユウ「……(結局徹夜になってしまった。間に合ったからよかったかな) 」

ハル「すーすー」

ユウ「ふふ……(よく寝てるわ)」

ユウは忍び足でハルに近づく。

バターン!

クスシ「ハルーー!! 起きてる? 手伝ってーー!!」

ハル「ひゃっ!?」

ユウ「クスシ!?」

ドタドタバタン

唐突にクスシが駈け込んで来た。

クスシ「大カエルの毒にやられた患者がいるのけど解毒がわからないの、早く来て」

ハル「……わかったすぐ行く!」

ユウ「あ、パパ」

ハル「あ、ユウ。 すぐ戻るから」


◯薬屋

女兵士ルソル「たいちょー、あたしもうだめです。うぷ、一生のお願いがぁ」

トーゴ「バカすぐ治るからしっかりしろ」

トーゴが部下のルソルに付き添っている。

ルソル「角の店のカップケーキが食べたいです。ホイップマシマシの奴で」

トーゴ「……結構余裕あるなお前」

クスシがハルを連れて戻ってきた。

ハル「このひとが患者?」

トーゴ「ハル、来てくれたか助かる」

ハル「診せて、……どこでこんなのを?」

トーゴ「最近増えた大カエルだ、朝から退治してたんだが」

ハル「毒なんて持ってたの?」

クスシ「わたしも初めてで、強い毒じゃないみたいだけど解毒成分がわからなくて」

ハル「どれを試したの?」

クスシ「これとこれを」

ハル「これはまだ?」

クスシ「ま、まだ」

ハル「だったら少量ずつ試して、僕は治癒と解毒魔法を試すから」

クスシ「はい」

ルソル「あぅ、たいちょー。クレープでもいいですから、うぐ……」

トーゴ「お前、なんで食欲あるんだよ」

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